Double Cross the Reverse...  「逆巻き琴線――喪失ひ旋律」
Middle.
   
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           着実な進行の感触など皆無だし、      明確な道標の定義すら論外だが、      愚昧な逸脱の後悔のみ鮮烈だな。           GM  ――妹。     音鍵遺櫃に良く似た、彼の妹。     ――音鍵避澄。     彼女は、否――あの二人、彼女達は――なんの遠慮もなく、禁忌を踏み破った。     近親相姦。 ――それがなんだって言うの?     しかし。 蜜月のような、あるいは蜜そのもののような、罪深い日々は、やがて、当然のように崩壊したと言う。     モノの愛しかたが違ったのだ。     そしてやがて、遺櫃は――瑕耽を作る。 創る。 瑕耽  (判定中……)→侵食率10%低下。     禁忌        それは 人が勝手に創ったモノに過ぎないと 私は思います GM  避澄「ピグマリオン――ぴたり、正にそれだわ。それ以外の表現なんて無いに等しいくらいね」     彼女が、瑕耽の部屋を尋ねてきました。     ノックを3回、それから、恙無く、慎ましやかに。     遺櫃に良く似た顔で、喋る。     避澄「今日は、お兄様のお人形さん。        お兄様の可愛い可愛いお人形さん。お兄様に愛されていて、お兄様をこよなく愛している、お人形さん。今日は。        音鍵避澄――まさか忘れてないわよね?        忘れるはずが無いわ。それでもお人形の脳味噌と言うのはいまだかつて覗き見たことは無いから、        もしかしたら数時間の記憶すら保てないかもしれない」 瑕耽  「話がくどいです、避澄様」 GM  避澄「あら、ごめんなさい」 瑕耽  「くどくてくどくて、私に入る隙間は存在しません」     「ちなみに元より御主人様以外は存在しえませんので、お気になさらないで下さい」 GM  避澄「何かしら? それはお兄様と私の間柄について言っているのかしら? 入る隙間――        確かに、そんなものは無いくらい、愛し合ったわ。過去の話よ。良かったわね、過去の話」     にっこりと、そう言って微笑みます。     屈託の無い、頬笑み。 瑕耽  「ええ、祝うべき事態です。幸いです、とても幸いです」     「手間が一つ省けたという事実は喜ぶべきことです」 GM  そして避澄はしげしげと、瑕耽を見つめます。     避澄「綺麗ね。綺麗よ。美しいわ。とても美しいわよ」     自身も、人間にしては最上級と言えるほどの美貌をもちつつ――そんな評価をする。     避澄「私なんか、足元にも及ばないほどよ。        ええ、蟻も同然だわ。蟻の内臓も同然だわ。踏み潰された気分。        じゅくじゅくと滲み出ている気分だわ。けれど貴方はそんな事に気付かない。きっとそうだわ。 瑕耽  「貴女に言われても全く感動はありませんが。評価として頂きます」 GM  相変わらず、笑みは絶えない――。     しかし、頭の片隅で       ――嘘よ。        ――嘘よ嘘。おべっかだわ。口車!         ――気付いてるわよねまさか素通りはしないわよね、貴方の醜さは私が一番知ってる。     そんな声が、聞こえます。     いつか誰かに言われた一言が、ずっと響いている――そんな感触。 瑕耽  私も 創られたモノです     御主人様に創られたモノです     だから 否定します     私の全てで否定します     けれど だけど     拭い去れないこの思いは どこから来たのでしょうか     誰が――― GM  避澄「さてと!」     唐突に、その思考は打ちどめられます。 瑕耽  「いきなりなんでしょうか」 GM  避澄「私は別に貴方とお喋りをしに来たのでは無いのよ。        楽しいお喋りをしにきたわけじゃないわ。        もっとずっと素敵なことをしに来たの」 瑕耽  「ええ、私も貴女も。お互いにそのような興味を抱く仲とは思えませんので」 GM  歌うように、澄み渡る声で言います。     避澄「貴方におめでとうを言いに来たわ。 おめでとう」 瑕耽  「何のことでしょうか」 GM  避澄「私は、並びにこの館に今いる人間――        えっと、そうね。根津とメイド等は人間とはいえないでしょう、もう――だから、人間でいいわよね。        お兄様以外の人間は、館を出ようと思っているわ。        おめでたいことでしょう? ずっと望んでいた、違うかしら」     確かに。 瑕耽  「理由はあの気だるげな男性ですか?」 GM  避澄「そうよ」     頷きます。 瑕耽  「そうですか。それは何よりです。おめでとうございます、と適当に言っておきます」 GM  避澄「ほら――ね。名前を忘れたわ。あの子よ。        眼鏡の、眼鏡っ子よ。三つ編みの、三つ編みっ子よ。        鏡原――。そう、鏡原。きっとそうだわ。鏡原さんが、館からいなくなっちゃったでしょう」     鏡原――詩織。  柊  ・・・え? GM  神無月柊と共に、館へ来ていた、少女。     館へ招待された少女。     避澄「その話をしたら、館を出る方法があるのか柊君は訊いたわ。私に訊いたわ」 瑕耽  「よかったですね、と相槌を打っておきます」 GM  避澄「なら私は、あると応えるしかないでしょう?        それしかないわ。続けて私は問うたのよ。出たい? って。返答はYes.        だったら私に断る理由の持ち合わせなんか無いから、丁度売り切れてたから、いいえ元々無かったのかしら。        だから出るわ。だから協力しない?」     にこっと笑って、手を差延べます。     避澄「利害一致の関係よ。交渉の余地があるわ」 瑕耽  「ええ、そしてそれを拒絶する必要はどこにもないですから」     「私は私の為に、貴女は貴女の為に。それだけのことです」 GM  避澄「良かったわ。貴方と手と手を取り合える日が来るなんて夢のようだわ。        夢にも見なかったわ。見たとしても忘れてるわ。その程度の事よ。けれど良かったわ」 瑕耽  「どうでもいいことです、明日どころか終わったらすぐ忘れるようなことです」 GM  「ですが、得られる結果は喜ばしいものでしょうから」 GM  避澄「――それじゃ、準備をしに行きましょう」     差延べた手を、一方的に引っ込めて、入る時に閉めた扉を開けます。     柊君と、それと――そうですね。姫巳さんも登場どうぞ。     扉の外に居て下さって、結構です。  柊  (判定中……)→侵食率3%低下。 姫巳  (判定中……)→侵食率8%低下。     ぐ、高い。  柊  「・・・」普段と違って、背筋を伸ばして柊が立っている。 GM  避澄「話がついたわ。私の功績だなんて誇りもしない。当然の帰結よ」     スカートの裾を抓んで、柊君にお辞儀をしてから。 姫巳  「・・・」逆に僕は、目を瞑って床に正座している。     正座だけど、座禅でも組んでるような表情で。 GM  避澄「そう……清智姫巳さん、清智先輩も、ご一緒しませんか?」     一言だけそう言って、さっさと踵を返します。     行くべき所があるというように。     避澄「それでは――参りましょう」     かつかつと、先陣を切って――広い館の中を歩き始めます。 瑕耽  「それで、準備とは何をするつもりですか。もし旅支度と言うならさっさと済ませて置いてください、と言います」 姫巳  「ご一緒、ね。僕と、君がか・・・。『どこまで』ご一緒できるものか分からないが・・・」     柊とカタンに見開いた視線を走らせて     楚々とした所作で立ち上がって、同行します。 GM  自重で今にも落ちそうなシャンデリア。よく磨かれた床――     やがて――かつん――大きな扉の前へ辿り着きます。     メイドの似慣と穂波が、その扉の鍵穴から中を覗き込むようにしていましたが――     避澄「邪魔よ。とても邪魔よ。邪魔だけど、存在はしててもいいわよ。けれど視界に入らないところでね」     の、一言で、すすすと下がって、どこかへ行ってしまいます。 姫巳  (・・・常々思うが、趣味が悪い。僕がいえたことじゃないが、僕の美学にそぐわないんだから、そう思うのも仕方ないか?) GM  そして避澄は、ちゃりり、と、鍵を取り出します。     くぃ、きゃりん。 鍵を開けて。     金色の、よく輝ノブに手をかけて。     避澄「交錯大広間――と言うべきかしら。この館のホールよ」     そう言って――扉を開きます。     ――がこん。   GM  群れ。     人の群れ。     ざわめく喧騒、視界を埋める頭、そして混ざり合った臭い。     合流に失敗するだけで接触しかねない人間達。     何処かの――空の下。     柊君や、姫巳さんならご存知かもしれませんね。学校の傍の、街中です。     背後で、小さな小さな音を立てて、扉が閉まります。 姫巳  「・・・これ、は。」 GM  瑕耽さんは、知っています。交錯大広間……     この館の 『中』 で、唯一 『外』 である空間。     部屋の中でありながら、外。     外の世界でありながら、中。     勿論、部屋の広さは元のまま――  柊  「幻、かな・・・?」 瑕耽  「いえ、その名の通りの場所です」 GM  内側から入ったものは、部屋の広さより外に行くことは出来ない。     しかし、一見……無限に広がる、外と変わらない光景のように見える。     つまりは。     この部屋は。     部屋の広さと言う区切られた区間でのみ、     外と、交錯している部分なのです。     瑕耽さんは、所謂――『お人形仲間』――の一部が、ここで『創られた』事を、知っています。     貴方も、自分のために――ここで、『武器』を、創ります。     そのための部屋。     そのための、空間。 瑕耽  「さて、私も準備をしなければならないということです」 姫巳  「狂っているのは人間とその能力くらいにしてほしかったが・・・空間までおかしいのか、ここは。」     微苦笑を唇に乗せます。  柊  「・・・まぁ、本の種類も支離滅裂でしたけどね・・・」ため息を付く 瑕耽  「すぐ終わります。無駄な時間は無駄です」 GM  避澄はいつの間にか日傘を取り出し、部屋の片隅――道路の端――に、佇んで、様子を見守っています。 瑕耽  まるで今までずっとそこに居たように     瑕耽の横に佇む 仮面の男     陶器のような 生き物のような 奇妙に生々しい梟の仮面     その男は無感情に道路へと近づき 姫巳  「・・・」視線を向けて、無言待機だけど、足置きを少し戦闘的に。 瑕耽  ぐちゃり     ぐちゃり     ぐちゃりと握り潰し     ぐちゃりと引き寄せ整えて     ぺたぺたぐちゃり ぺたぺたぐちゃり     粘土で子供が人形を創るように     ぺたぺたぐちゃり ぺたぺたぐちゃり     「そんなものです。造形にこる必要はありませんから」     ぴたりと手を止め はい完成     出来たのは小さな小さな女の子     材料が随分あまったけれど  柊  「・・・器用さに驚くべきか、状況に驚くべきか・・・ソレとも、コレを見て何も思わない自分に呆れるべきなのか。」     肩をすくめる GM  完成したのをみて――避澄は、日傘を畳みます。 姫巳  「・・・殺したのかい?現実のにんげんを。」 GM  女性「――ひっ……」     始めは息を呑む音。     男性「お、おい……!」     途端に、ぶれ始める人の群れ。     広がった血の後。     余ったパーツ……生々しい匂い。     人の中身。 人だったもの。     それを中心に――喧騒が、悲鳴や怒号に変わっていきます。 瑕耽  「少しゴミを出しすぎたでしょうか、と気にするそぶりがお望みですか?」 GM  避澄「いいえ、良い出来だとおもうわ。傑作と言っても差し支えない。用もすみましたし、帰りましょう」     普通のドアを、カチャりと、悠々とあける――避澄。 姫巳  「君が自分がピノキオだと思うならそうしたまえ。タロスであると思うなら、取り繕う必要は無いよ。」     ・・・あえてこっちからも答えておこう。     ピノキオは人間になった人形。人間になりたかった人形。タロスは殺戮のための青銅巨人だ。人間になるとかは、考えない兵器だ。 瑕耽  「私がなりたいのはガラテアですので。といっても私はこのように既に動いておりますが」     仮面の男が小さな女の子の手をとってつれてくる     血と臓腑の匂いもついでにつれてくる GM  避澄「それとも、遣り残したことなどありますか?」     気遣うように、そんな事を口にしても――     パニックになりかけている周囲は、気付きません。     男性「お、おい、あんたら!」     ぐぃっ……     柊君の腕が掴まれます。  柊  「・・・なんですか?」怠惰げな『居眠り柊』の顔ではなく、しっかりした表情で聞き返す 姫巳  「・・・柊君。」ここでからまれてもたまらん。振り払って避澄を追おうと促す。 GM  その表情に――     男性は、一瞬、詰まる。     う―― と。  柊  「・・・まぁ、今見た事は幻と思って忘れるか、ソレとも真実として追い続けるか・・・」     「ドッチの道を選ぶかは、貴方にお任せしますよ。」     「・・・・・個人的には、前者をお勧めしますが。そうすれば、命の危機もありませんしね。」そう呟き、ワーディング発動 GM  男性「な、何を言ってるんだあんた、こ、これ、人が死――」  柊  地面に電流の糸を走らせ、気絶していてもらいます。 GM  そのまま、ぱたりと倒れこみます。  柊  「・・・さて、行きましょうか。生徒会長。」振り向けば、いつもの怠惰な『居眠り柊』の表情で姫巳に言う GM  避澄「なぁんだ、柊君。そう言う事がしたかったの? それならもっと色々な場所にいけるわ」  柊  「いえ、単に長く関わるのも面倒なので。」 姫巳  「・・・」慈悲と憐れみと悲しみを三分の一づつ織り交ぜた表情で柊に応じて GM  避澄「気にしないで、戸を閉めればいいだけ」 姫巳  「そういうことだ、避澄君。」 GM  全員が入ったのを見て、パタンと扉を閉じ、鍵をかけます。 姫巳  と、言っておこう。・・・流石に、君の催しはどうでもいいといよ、と、彼女を一々あげつらうほどはしたなくもない。 GM  避澄「それじゃ、順風満帆ね。少し違うかしら、準備万端ね。良く似ている言葉だと思うけれど、焦点となる時間が違うわ」     楽しそうに、あるいは気だるそうにそう言って、歩き始めます。     ――血の匂い。     こびり付いた死の感覚。     しかしそれは、非常につまらない事。     なのだろう、か。 姫巳の頭を、あるいは柊の頭を、そんな事が掠めます。 姫巳  (つまらないじゃあ、すまないね。楽しくは無いが・・・むしろ不愉快だね、自分で殺していない相手の血は)と思っておく。 GM  が。     避澄「あら、手間が省けたわ」     遺櫃「――話があるんだろう?」     玄関へ続く階段の途中。     館の主――音鍵遺櫃に、声をかけられました。 瑕耽  「ええ、御主人様」            「とても喜ばしいお話が」


               

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