第五棺

未だ終らぬ我々の埋没the Color of monochrome

Middle Phase 3
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM 登場侵食をとりあえずどうぞ。
まだ普通に振れます。
ひゃっはー
ダイス 1D10+36 = [5]+36 = 41
クックック、順調順調。…どうせジャーム化するんじゃ意味ねーけどな。(笑)
GM ちまちま。



GM さて……艶髪先生との、後味の悪いやり取りを経て。
その後、何人かとの簡潔な会話を終え……。
気付くと、見覚えのある……というより、見て覚えるようなものが壁くらいしかないような、非情に人間味の欠けた部屋にいました。
UGNの……施設の部屋ですね。
おお、何もかもがなつかしい。
さすがに色々な人に会って疲れたと思うので、壁にもたれかかって休もう。
「さて。お次はなんだ」
GM と、壁にもたれると、
向かいの壁にちょこんと座っている影があります。
雪吹灯です。
「…………」
では、その姿を見て
GM はい。
「ずいぶん長いこと会ってなかったような気がするが…」
「相変わらず胸が無えな」食いキャラだったくせに。
GM 「……」
睨んできます。
座ったまま。
く、くそう。喋りにくいな(笑)
しょうがないからそのまま灯のところまで歩いていこう。
すたすた。
GM 灯は座ったままです。
近づかれると、自然、見上げる形になります。
しばらく沈黙が続き。
「なんか喋れよ。やりにくいなぁ」と言う。
GM 「…………た」
何か呟きます。
「…………」
「だーかーらー。何度も言っただろ? 聞こえるように言わねえと、何も喋ってないのと同じだってよ」
そういえば、初めて会った頃の灯は、本気で一言も喋らない奴だった。
しばらく俺と充さんであれこれと努力して、ようやく二人にだけは多少口を開いてくれるようになったんだっけ。
GM 「…………」
「……した」
ぶつぶつ。
相変わらずぶつぶつ言ってますけれど、どうなさいます?
らちがあかん(笑)
とはいえ力技に訴えたくはない。
何もしないでそのまま突っ立ってるよ。ずっとな。
俺も灯も、お互い、自分の殻に引きこもりがちな体質だったし。
下手に踏み込むより、同じ距離を保ったまま、時間を共有することの方が互いのためになることもある。そう思う。
GM 「……ろ……た」
「……」
口を閉じて。
ばっと立ちあがります。
尚君の眼球を突きそうな勢いで指を指して。

「……殺した……!」

眼前ぴたりと5mmくらいの距離で人差し指を止めてます。
「……殺した。私を」
「なんだ。そんなに充さんと一緒に死にたかったのか?」と、あっさりと言う。
GM 「違う……。なんで?」
「なんで、と来たか」頭を掻いて
「俺が変に大人だった、っつーか…大人のフリをしてたガキだったんだろうな」
GM 「…………あそこで……」
指を、ゆっくり、おろします。
「あそこで……死ぬべきじゃなかった…………ように、思う……」
「………」
そうは言っても、UGNとしては、ジャームを殺すのは通常の対応だった。
街がこんなになる前からそうだったが、ジャームはそこらじゅうから沸いてくる。
それを放置できない以上、たとえ、かつての仲間であっても、ジャームになったら殺すしかない…
俺も灯も、ずっと以前から、それを仕事としてやってきた。
とはいえ、確かに、
あの場面で、あえてその基本原則に従う必要がなかったのもまた事実だった。
GM 「…………」
「兄さんは……私に生きてて欲しかった……んだと、思う……から」
「……だから、尚が許せな……い?」
首をかしげる。

「……許せない」
傾げていた首を、元に戻して、一人、頷き直します。
「その間はなんだ」
とツッコミつつも、やれやれ、という感じで言葉を返す。
「まあ、充さんならそう言っただろうな。たとえジャーム相手にでも」
振り返ってみれば、俺と灯が、昔の仲間を殺さなくてはならなくなったとき、
俺は灯に対して、好物を差し入れしたり、しばらく危険のない後方支援に回したりと、気を使いはしたが、
殺した元の仲間については、何も考えないようにしていた気がする。
だが、充さんは違った。
あの人なら、たとえ自分の妹じゃなくても、何かしてやりたいと望んで、行動しただろう。
GM 「…………」
「確かに、俺がエゴイストだってのは認める」
「他人の意見をあまり聞かないのも含めてな」
「だから断言する」
「お前が何を言おうと、一切、後悔しない」
GM 灯は黙ってます。
「……ぅ」
「そもそも」
「お前だけジャームになって街をうろつく、だなんて、絶対に許せねえ」
GM 「ぅ……ぅ、ぅ」
灯の口元が歪みます。わなわなと。
「あん時はガキだった。俺は人間で、お前はジャーム。殺すしかない、って思い詰めてた」
GM 「ぅぅぅ……」
だんだん、蚊の鳴くような、か細い嗚咽に、それは変わっていく。
「今だったら―――俺もジャームになって、街もなにもかもぶっ壊してでも、放しはしなかった」
GM 「ぅ、ぁ――」

「ぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ――!!

ずんっ!

重力が増す。

 ずずずずん !

灯が頭を抱え込んで、声をあげる。

ぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ――――!!

ほとんど裏声のように甲高く、しかし激しく、喉を潰すかのような悲鳴。

びきっ、びきびきっ、びきびきびきびきっ……!

重力がさらに増し、灯と尚の足もとから、床に、亀裂が入っていく。
重力によって、血が足元に下がり、視界は暗幕が下りるように、どんどん暗くなっていく。

「ぅぅああぁぁぁぁぁあぁぁ――――――!」

ぐ。
正直、かなりしんどいんだが、平静を装って話を続ける。

「最初に、俺たちがチームを組むと決まった時に、言われたよな」

「“オーヴァードの戦いにおいては、敵の攻撃は、音や光の速さで飛んでくる”」

「“だから、一緒に戦う仲間とは、何も言わなくても意思疎通ができるくらいになっておけ”ってよ」

「一言で言えば“一心同体”ってやつだ」

「つまり、お前は俺の一部だったわけだ」苦笑して。

「まだ大した時間は経ってねぇけど、お前がいないとやりにくくてしょうがない」

GM びきっ ばきっ ――   バリン!

床が崩れ、
二人は落ちる。
重力加速度に流されるように、
周囲の景色が、上へ上へと、
飛ばされていく。

そう――

雪吹灯の過ごした日々。
新垣尚と過ごした日々。
UGNとしての――その異端児としての――日々。

「あぁあぁぁあぁぁあぁ、ぅぅぅうぅっ、ぁっ、ぁぁぁぁあぁぁぁぁあ

わかる。
一心同体――新垣小隊――
過ごした日々の、少なくも、濃く、非日常という時間。
決して表では語られない、裏方としての、その中のさらに異端としての時間。

雪吹灯は――

今までの彼女を知っているのなら、信じられないことに――
無口で、無表情で、任務に忠実な彼女は――今……
「もしかしたら、別の人生もあったのかもしれない…」
「もし生まれた国が違ったら。もしオーヴァードにならなかったら。もし同じ部隊に配属されなかったら」
「もっとウマのあう奴と出会えて、もっと幸福な人生を送れたのかもしれない」

「だがな」

「今のこの俺の人生において、お前と組んだチームは、最高だった」
GM 「――っ! ぁぁぁあぁぁぁ!

悲しんでいる――
泣いている――

ここにきて、やっと。

終わってしまったことを。
守るものをなくしてしまったことを。
ささやかで偽物だった、平穏の日々を。
苦しくて過酷だった、戦場の日々を。
兄の死を――
尚との別れを――

最後まで、戦い切れなかったことを――

彼女は、初めて、人間らしく、幼く、悲しんでいる。
頭を抱えて、視界をふさいで。
みっともなく、泣いている。
俺と灯は、友達や仲間と言うには時間を共有しすぎた。
家族や恋人と言うには裏側まで知りすぎた。
「俺はお前で、お前は俺」
「お前が俺に殺されたように、俺はお前だけに殺されるだろう」

「だから俺の物になれ」

「俺は自己中だから、絶対に自分を裏切らない。絶対に、自分と等しい存在を裏切らない」

「さもなきゃ…俺を永遠に恨み続けろ」
「できるだけ長くもがき苦しむように」

「それでも、お前のことを忘れたくないんだ」

GM 「――――っ、っ……」

照明の消えた学校の景色が、空へ消えていく。
瓦礫の散った街の景色が、凄まじい速度で流れていく。
叢雲寺の景色が、墓場の景色が、天月班の顔ぶれが、
縦線となって消えていき――

ぐっ ぐぐぐ ……。

気付けば、
列車の車輪のすぐそばで、お互いに突き落とそうと、
力をかけ合っている状況です。
重力だと思っていたのは、お互いの……ささやかな力。
それが、重く、重く、お互いにのしかかる。
電車の音がうるさくて、もう悲鳴は聞こえない。
ああ。
もちろん、わかっていた。
目の前にいる灯がただの記録のカタマリで、本物はもう死んでいる、ということくらい。
ホステスやゲーム相手に疑似恋愛をするのと似て、
これが、単なる自己満足の域を出ない行為であるだろうことは、わかっていた。
それでも、言わずにはいられなかった。

「…それでもいいさ」

    「後悔はしない」

これは、すこしだけ脚色された幸福な夢。
目が覚めたら、なんとなく暖かい気分だけが残るけれど、内容はすぐに忘れてしまうような。
何の役にもたたない、ただの夢…。
GM 目の前の、彼女の目から、見たことのない涙がこぼれて、風の中に消える。
そして、彼女は呟いた。
泣き疲れたように。
「…………おなか、空いたよ」
すっと。
彼女の力が抜けていきます。
「バカ、空気読め―――」
…止めない。
GM 「兄さんと……ご飯食べてくるから」
薄く。本当に薄く。
尚でなければ分からないくらいに、微笑んで。
「楽しんでこい」
GM 「うん」

「 あとは よろしく 」

――

  タタン タタン

    タタン タタン

気付けば一人、列車の中。 おそらく次の記憶へと――続いているのだろう。
しかし、もう少し。
余韻のように、彼女との記憶が続けばいい。



GM シーンカット。
灯さんの持ってたエフェクトを一つどうぞ。
取れそうなら、経験点を払って、何か取得してもいいです。
そりゃもう《時の棺》だろう。
GM はい、どうぞ。
これで経験点は残り1点だ。
俺のターンは終わった!




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