第五棺

未だ終らぬ我々の埋没the Color of monochrome

Middle Phase 1
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM まぁ、とりあえず始めてみましょう。
灰色に埋もれた街第五回、始めます。
麗香 お願いします
よろしく。
GM よろしくお願いします。最初は尚君からで。
OK
GM ま、普通に振っていいですよ。登場侵食は。
ダイス 31+1D10 = 31+[5] = 36
8R+5 = [8,4,2,1,5,9,4,7]+5 = 14
汚染レベル聞いてなかったけど前と同じく3でいいのか。
GM いや、汚染レベルなど考えず、普通に振っていいのですが、ここは。(笑)
ひい。
既に普通の定義が変わっていた。
GM というわけで。



GM ふっと気がつくと、真っ白な空間が広がっています。
右も左も上も下も白い。けれど、まぶしくはない。
壁があるわけでもなく、どこまでも真っ白?
GM はい。
がらーんと広がってます。
特に音が聞こえるわけではないですが、耳が痛くなるような静寂でもありません。
「なるほど」と、余裕があるふりをしつつ座りこもう。あぐらをかく。
右も左もわからないのに焦っても仕方ない。
そうして、周囲を見回してみよう。何か見えるものはあるか?
GM 特にありません。

でしたが。

儚恵「あ、あの……」
と、隣に……黒い服の女性が立っています。
「ん? ああ。お久しぶりです」と、座ったまま頭を下げる。
GM 儚恵「その……叢雲寺ではお世話になりました……」
お辞儀をします。
「いえ、こちらこそ。どうぞ座ってください」と言う。
GM 儚恵「は、はぁ」
座ります。
…勧めておいてアレだけど、ミニスカはいてたりはしないよな?
さすがにその状態で座れとは言えない。
GM 以前絵に描いた通りです。(笑)
ロングスカートだったな。確か。
GM 長いスカートです。はだし。
さて。

彼女が座った

のは、畳の上。
便利だなぁ
GM 気がつくと、
そこは叢雲寺です。
儚恵「……ご存知の通り、その……ここは、レネゲイドクリスタル“仮初(Area of Fake)”の構成する、意識のみの仮想空間です」
拙い言葉ですが、
するすると頭に入ってきます。
「理論と実体験というのはずいぶん違うものですね」
「全身像まで再現できるなんて。俺はてっきり、目玉だけ浮かんでるのかと」
GM 儚恵「は、はぁ……」
「冗談です」本音を言えば、チャットのようなものを想像していた。
GM 儚恵「新垣尚さんとリンクを繋ぐ過程として、一時的に尚さんの人格――経験・記憶・傾向を、同期インストールする必要があります」
儚恵「その副産物……ですね、この空間は」
「死んだ者の人格を再現できる、と聞いていますが」
GM 儚恵「そうとも、言えます」
儚恵「新垣さんが、何かを思う、と、それに釣られるようにして、関連記憶が呼び起され、周囲を構築します」
「じゃあ、次は手塚治虫とドストエフスキーのコピーお願いします」
火の鳥とカラマーゾフの兄弟の続編が読みたい。
どちらも続編が出ないまま作者が死んでしまったからな。
GM どさどさ、っと、
手塚治虫の漫画と、罪と罰などの分厚い本が周囲に積まれます。
「(口笛を吹いて)こりゃすごい」冗談で言ったのに、マジで出てきて内心びっくり。
GM 儚恵「本人のデータは、私の中にも、新垣さんの中にもないので、これが限界ですけれども」
儚恵「このように、呼び起された記憶に刺激を受け、また何かを思い、新たな関連記憶が呼び起こされる」
儚恵「ここが叢雲寺なのも、『私』――『瀧儚恵という人物のイメージ』を起点とした、関連記憶ですね」
儚恵「呼び起されるのは新垣さんの中にあるものだけではなく、私の中にストックしてある記憶も同時に想起されます」
「ああ、俺がソラリスシンドロームの持ち主だったらなぁ」大げさにため息をついて肩をすくめる。
「そうしたら、自分にエフェクトを使って、都合のいいように記憶を改造できたのに」
GM 青藍「そう上手く行くものでは御座いません」
と、秋土青藍が尚君の後ろに。
ソラリスシンドローム、という考えに想起されたのでしょう。
「まあ邪道もいいとこだってのは認めますがね」と、振り返って青藍さんを指さし「これもコピー?」
GM 儚恵「はい。それは新垣さんの思う秋土さんです」
青藍が軽く頭を下げます。
青藍「御機嫌よう、“Light”」
それはいつもUGN支部で会った時の挨拶。
「なるほど。言えてる」三歩後ろからついてくるたしなめ役、みたいなイメージ。
GM 儚恵「秋土さんのことは、私もよく知らないので、ほとんどが新垣さんのイメージですね」
儚恵「私の中には……現在進行形で、日告市のレネゲイドの回収・浄化・精製による、様々な記憶……『記録』が蓄積され続けています」
儚恵「それは、この街で死んでいった皆様の知識とも人格とも言えます」
儚恵「彼らと会い、会話し、関連記憶を想起することが、いわゆる『リンクの構成』になります」
と、儚恵は言います。

まとめると。

尚君が街で死んだ人をイメージする→尚君の記憶に刺激され、儚恵の中にあるストックから、彼らの人格が再現される→
その人格と会話する→さらに関連記憶が呼び起こされる。
これを繰り返すことで、“仮初”と尚君が同期・リンクされるってことですね。
うぇーい。
そういう風に説明されると、改悟から一人一人呼び出さなきゃならなそうな気になってくる。
GM ま、全部追ってる余裕はないですし、この過程自体、外から見たら一瞬の出来事なので、
元に戻った時に覚えている内容は微々たるものです。
了解。
まあ、改悟に会ったところで、今更、話したいこともないしな。
あるとしても、「もしあの世があったら笑窪と適当にやれや」ってことくらいだ。…が、コピーごときに言ってやるほど暇でもない。
GM 儚恵「……ということです。それでは、会いたい方・行きたい場所のイメージをお願いします」
そう言われた時には、その言葉に刺激され、
尚君のイメージが想起されています……。


というわけで、艶髪先生を思い出そう。
(現状、艶髪先生のエフェクトは貴重だ。可能ならば手に入れたい)と、下心丸出しで念じる。
GM おや。艶髪先生ですか。
二話、三話の登場人物とは関わりが深いとは言えないからなぁ
和尚を気に入っているのはPCじゃなくPLだし。
GM 艶髪先生と言えば、尚君にとってどんなイメージですかね。学年が違うので、担任ではないですが。
うーん、気は弱そうだが、わりといい先生だったんじゃないか。
GM はい。
まぁ、生物の先生でしたね。
高二なので、生物選択でないと交流は少なかったかも。
ナマモノの先生。
まあ俺はノイマンシンドロームだし、売りの分野で後で困らないようにするために、一応、全教科に手を出してたと思うぜ。
仲が良いというわけではなかったと思うけれど。
GM ということなら
尚君にとっては、一番最近の、四季奏総合病院前での接触が印象的かもしれませんね。
エフェクト目当てですし。
なるほど。
そうだなぁ
最後だけいいとこ見せやがって。あれは卑怯。


GM ふっと気がつくと。
雨に降られています。
瓦礫だらけの街。
灰色の街。
ふと、自分がただ一人座っていることに気づく。
記憶からできた街。
その中で、俺だけが――異物。
思い出の人々が、それぞれに決断をし、命をかけ―――そして死んでいく。
GM 顔のたくさんついた槍を、首なしの彼女――設楽艶髪が持っている。

艶髪「街はこんなになってしまったけれど「私は貴方達生徒がいれば、ぁ「この街を脱出……」

ぶつぶつ、と、彼女は喋っていて。
やがて、尚君の方を見ます。
「やれやれ。よりによって、こんな再会とはね。バチが当たったかな」
「まあ、“どうせ私の体が目当てなんでしょう”と言われても仕方なくはある」
GM 艶髪「あらぁ「確か貴方は、二年「二年生の……」
艶髪「二年生の―― そう」
ざーっと雨の音が消えます。

周囲を見れば、

生物室――

艶髪「二年生の、新垣尚君ね」
と、視点を戻せば、正常な様子の設楽艶髪先生です。
ああ、確か……彼女と初めて会話をしたのはここ、だったか。
放課後の――夜歌学園高等学校。
艶髪「はい、塵内君のノート。今度は忘れないように言っておいてね、ぇ」
柔らかく微笑みます。
「どーも。だが、今回はUGNとして来てるんですよ」
「学生じゃなくてね」
GM 艶髪「UGNぅ……?」
彼女は首を傾げ、席の一つに腰掛けます。
「ええ。まあ…、ただの半端物の集まりですよ」
人にもなれず、化け物にもなれず。中途半端はよくないと最初に言ったのは誰なのか。
「単刀直入に言いますが、先生の力をお借りしたい」
GM 艶髪「そう……何か先生に用が在ってきたのね」
何処か納得したように、彼女は頷きます。
「まあ、先生の家族でも恋人でもありませんし」
だから、用がないのに会いたがったりはしない。
GM 艶髪「それはどういうたとえかしら、ぁ」
ちょっと困ったように眉根を寄せます。
「純粋に、先生の能力を、人類の未来のため…、いえ、半分以上は俺の願望をかなえるために、役立ててくれないかなー、ってことです」
オーヴァードの説明を一からする必要はないよな?
GM 艶髪「それは、いいけど、ぉ……」
困ったような顔をしています。

ああ、と、理解する。

これは彼女の記憶、人格から構成されたもので。
彼女にとっての日常はこっちで。
あの出来事は、肯定したくない“記憶”なのだと。
だから、噛み合わない。
彼女にとって、異能の力は「なかったこと」「あってはいけないこと」なのだ。
ただ話していても、なかなか想起してくれないだろう。
さもありなん。
GM 艶髪「……で、先生はぁ、どうすればいいの、かしら、ぁ?」
「仕方ないな。時間をあまり浪費したくないし…アレを使うか」と言って
後ろから、山吹色のお菓子を出すぞ。
「家庭科部の子に味見頼まれたんですけど、ちょっと先生も感想聞かせていただけませんか?」
「俺、舌オンチなんで」
GM 艶髪「あら、ぁ……そうなの?」
受け取って、箱を開きますが。
普通に山吹色をしたクッキーが入っている。
ただし、睡眠薬入り。
「さあどうぞ!」満面の笑み。
悪党だな。俺。
いや、人間のクズか。
…というか、この空間で、睡眠薬入りクッキーをすぐに出せるってことは、普段からこういうものを作ってたってことだな。
あーヤダヤダ。
GM 艶髪「…………」

彼女は箱を開いて、止まっています。

艶髪「……これ……」

箱の中身を見つめ、彼女は複雑な表情を見せる。

艶髪「……これは……」

と、箱の中身を尚君の方へ見せてきます。

「クッキー嫌いでしたっけ?」
GM 中に詰まっているのは、
黒い
赤ん坊のような
小さな生き物。
しきりに何かを叫んでいる。
「おっと…。間違って(ピー)料理を入れてしまったみたいですね」
GM 赤ん坊「悪党が! 悪党が! 人間の クズが!」

赤ん坊「頭が良いふりをしてるだけ! 聞こえが良いことを言うだけ!」

赤ん坊「世の中を見下して、諦めているだけ!」

赤ん坊「ろくでなし! ひとでなし!」

赤ん坊「はっはー、そうさ! オーヴァードは人じゃない!」

赤ん坊「人間以下さ! 人間なんてどうしようもないクズだけど、それ以下のクズさ!」

赤ん坊「中でも一番クズなのは新垣尚さ! 

赤ん坊「それがなんだ! そんなこと知ってる! 尚がクズなのは自分で知ってる! みんな知ってる!」

知ってる! 知ってる! しきりにそう叫び、赤ん坊たちはむせび泣きます。

醜く、醜く。

目的のために、睡眠薬を当たり前に使うようなクズ。
他人を利用してはばからないクズ。
当たり前だ、それが世の中なんだから、生きるってことなんだから、と言い訳をするクズ。
抗うってことが生きるってことなんだと、わかったようなことを言うクズ。
クズ、クズ、クズ、クズ、彼らは泣いています。
「言ってくれるねぇ」アハハ! と小気味よく笑い。
「だが、そこは思いやりと言って欲しかったな。夢は夢のままに終わらせよう、っていうんだから」そのまま箱を、とん、と横の机に置く。
「たとえ、目の前にいる先生が、幻にすぎなくてもね…」
「まあ、俺がクズだってのは認めるが」
GM 赤ん坊「そんなこと思ってないくせに! そう言い訳してるだけだ!」
そう、箱の中の赤ん坊たちはしきりに叫んではいますが。
気付いている。
あの赤ん坊たちは、自分なのだと。
自分が、少しでも感じた後ろめたさが、
あれを想起しているのだと。
「そうそう。昔、親に言われたことがあるよ。“なんでお前は親の言うことを聞かないんだ”って」
「俺は、なんて返したかな。確か、“親の方こそ責任を果たしてないだろう”みたいなことを言ったんだ。そうしたら、“言い訳はするな”って言い返されたよ」
「ぶっちゃけさぁ。どっちも変わらないんだよ」
俺の言ったことが、正当な反論だろうと、ただの言い訳だろうと…、親にとっては、“言い訳”という名前の“反抗”にすぎなかったし。俺にとっては、何を言っても言い返される以上、ただの“愚痴”でしかなかった。
GM 言い訳ばかりだ。自分の人生は。そして、その言い訳の方が正しいと信じている。信じていた。正しいことを受け入れられない周りの奴らの方が…………そう言いたくて。
だが、そう。
変わらない。
艶髪「そんなこと、ないと思うわ、ぁ……」
そっと、
設楽艶髪が尚君の頬に触れます。
「そうですかね?」
GM 艶髪「……ええ」
艶髪「貴方には、譲れないものが在ったのだと思う」
艶髪「今も、そして、昔も」
艶髪「それは、他の人から見たら、それほどのものでなくても」
艶髪「世間から見たら、取るに足りないものだったとしても」
艶髪「自分でさえ、何故そこを譲れないのかわからなかったとしても」
艶髪「きっと、それが貴方を、貴方にしている部分」
艶髪は、悲しそうな顔をしています。
「…そうだといいですね」
それは時にちっぽけなプライドだったり、厨二病的な“自分の存在意義”なるものだったりしたのだろう。
時が経てば、“ああ、俺はバカだったなぁ”と、苦々しく…しかしなぜか懐かしく思い出すたぐいの。
GM 周囲の情景が変わっていく。
親に大切にされる艶髪、親戚と仲良く、お隣とも仲良く、友達とも波風立たず、いつも笑顔で、記憶に残らないような会話をして、
努力の必要がない程度の勉強をして、進められるままの進路をたどり、流れるままに教師になり、
異変が起き。
戸惑って、
生徒の、根拠のない断言に従って、頼って、
そして――抜け殻のようなまま――
艶髪「……私には、何もなかったもの」
設楽艶髪は、悪くなかった。
責められないように必死で、だから悪くないと信じて、
何も、何もない。譲れないものなど何もない、設楽艶髪。
まあ、あの状況で歯車みたいな“状況が見えてそうなヤツ”がいたら、みんな頼るわな。俺だってそうする。
GM 艶髪「最後に残ったのは、『先生』って言う……殻だけだった」
ざぁっと……
雨の中に戻る。
「立場は、便利ですよ。中身が無くなっても、しばらくは自分を守ってくれますから」
GM 艶髪「ふふ……でもね……生きた心地は、しないものなのよ」
雨の雫とは違う何かが、彼女の頬を伝う。
艶髪「……持って行っていいわ、ぁ……でも、先生……どうすればいいかわからない、から……」
彼女の人格。
最後まで、先生というかりそめの器に従った、彼女の人格。
気付けば、尚君の手には、小ぶりなナイフが握ってあります。
「…いや、まあ。俺もカンペキにわかってるわけじゃないんですけどね」苦笑いしつつ。
GM 経験点を消費して、彼女を突き刺せば、望みの物を刳り抜けるでしょう。
やだなぁ。注射するくらいまでまからない?
GM なんない。奪い取るんですからねー。
奪い取る、ってイメージが必要。
手を汚さないとかありえない。
ではサクッと。
UGNでやった訓練を思い出しながら、頚動脈をすっぱり。
即死を狙って。苦痛を感じる間もなく…というのは俺の願望に過ぎないが。
GM では、予想よりはたやすく、しかし思ったよりも重く、刃が突き刺さります。
そして、だんだんと彼女の力が失われ、もたれるように……
何が欲しいのですっけ?
《妖の招き》
GM なら、問題なく取得できますね。
髪の毛で出来た縄が、ナイフの代わりに握られているのを感じます。
じゃあ、最後は定型句でしめよう。
静かに、別れの挨拶を呟く。

「せめて安らかに」





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