GM | では、どこからスタートが良いですか? |
尚 | せっかくさっき「階段下りられるの?」と言われたことだし、病院の階段の前でどうだろう。 |
GM | 了解しました。 |
結花 |
結花はおきていたほうがいいですか? 尚くん |
尚 |
話しかけたかったら好きに話しかけてくれ、って感じかなぁ 今からやるのは本当に短い、 ただの決意表明みたいなシーンだから。 たぶんこちらから何か話しかけることはないと思う。 |
結花 | 了解です |
GM | 麗香さんは、「早乙女さんを支えるので手いっぱいです、申し訳御座いません」と先に降りた、ということで? |
尚 | どうだろう。屋上にまだいるか、先に下に降りたか。 |
GM |
では、とりあえず先に降りたということで。 残ったメンツ的に、休み休み帰るのが得策でしょうし。 1階までとりあえず早乙女さんを連れていき、尚君が苦労してるようなら往復しよう、と 麗香さんは考えたということで。 |
尚 |
了解。 じゃ、戦闘でフレームの歪んだ車椅子を走らせ、階段の前で立ち尽くす。 金属が触れ合う、ギコギコという音がずいぶん耳障りだ。 「…めんどくせぇ」 思い返せば、脚を無くしてからは青藍さんに運んでもらい、支部についてからは仁也のおっちゃんに運んでもらい。 前に、自分で“0歳児に戻った”と言った通り、おんぶにだっこの道程だった。 「いやいや…、なんていうか。一回依存しちまうと、自分で歩くのが面倒になるねぇ」 そう言って、階段の下を見つめる。 照明の壊れた通路は、とても暗い。 まるでその先は、あの世にでも繋がっているんじゃないか、とも思える。 「まあ、ある意味、この世の地獄なんだけどな」 そう言って、俺は、背中から拳銃を取りだす。 灯と充とチームを組んでいた時から持っていた、護身用の拳銃… もっとも、銃の扱いはへたくそなので、これまで、お守り以外の役割はなかった。…たった一つの例外を除けば。 俺は、拳銃の弾倉に弾がこめられていることを確認し、銃口をゆっくりと自分のこめかみにあてる。 「青藍さんが言っていた理論が正しければ――」 「レネゲイドの再生能力を利用し、脳自体をリセット。これにより、再生限界を戻し、失われた肉体を再構築することも可能なはずだ――」 もちろん、可能じゃなかったら死ぬ。 と言うより、少しでも“ここで死んでもいいや”と思っていたら、本当に死ぬ。そんな気がしていた。 しかし、先ほどの通信の内容。今の状態。 もう頼れる相手はいない。 誰もが、自分のことで精一杯。…これからは、自分のことは自分でやらなくてはならない。 今ならまだ引き金を引く力くらいはある。もし弾が不発でも、代わりになるものを探す程度の余力は残っている。今は、まだ。 …死ぬにしろ生きるにしろ、選ぶとすれば、これが最後のチャンスだった。 今、俺は、試されていた。自分自身を。 「…問題ないさ」 「俺は、俺を手に入れる」 「俺の手足も、俺の魂も、俺の過去も、俺の未来も…全部、俺のものだ」 「俺は、俺の手で! 他のなんでもない…俺自身になるッ!!」 引き金を引いた。 十数分後。 後には、横倒しになった車椅子だけが置き去りにされている。 人影は無い。カラカラと寂しく回る車輪が、だんだんと回転の速度を落としていって…やがて、止まった。 その向こうには、下へと下る階段と、その向こうの――真っ暗な闇が、口をあけているだけだった。 |