第四棺

唯麗しきあの人の埋没the Vale of monochrome

Middle Phase 6
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM ◆元FHセルリーダー:八重崎怨嗟
 
 人は死ぬ。
 簡単に死ぬ。
 雨に負け、風に負け、雪に負け、嵐に負け、
 病に負け、毒に負け、心に負け、世に負ける。
 人は、弱く、脆く、儚いもので、生きているのが精一杯だ。
 
 ならばなぜ、オーヴァードを素晴らしく思わないのか。
 力満ち溢れるこの身体に、何故感謝しないのか。
 無論、手に入れるのに多少の犠牲は払っただろう。
 しかし、その犠牲に見合うものが手に入ったのだ。
 素晴らしいではないか?
 
 わたしは全てを失った。
 わたしはそれまでの人生を失った。
 家族も、最愛の人も、夢も、経歴もなくした。
 しかし、だからこそ。
 代わりに得たこの力に価値が無いとするのなら、
 それ以前の人生にすら、価値が無かったことになってしまう。
 
 だから、わたしは思う。
 
 レネゲイドウィルスの開花こそが幸福だ。
 オーヴァードこそが悲願の達成なのだと。
 単純な、その覚醒こそが、真理なのだと。
 そう考えれば、皆幸せなのではないかと。
 ならばそれを広めることこそが使命だと。
 
 だから、わたしは歌う。
 
 高らかに歌い、覚醒を促し、銃弾を撃つ。
 高らかに、高らかに、高らかに、幸福を。
 内なる魔を起こし、慣らし、共に生きよ。
 共に魔となり、共に狂いて、共に死のう。
 
 そうして、いつからか感じている。
 わたしが傅くべき、高貴なる存在が現れることを。
 わたしはその日を信じて、誘いの雨を降らす。
 定められた役割を全うする。
 
 一時の住処よ、FHよ。
 一時の友人よ、仲間たちよ。
 ありがとう。
 わたしはやはり、定めには逆らえぬ。
 真理には逆らえぬ。
 
 日差しの喜びに雨が必要なように。
 幸せのためには悲劇が必要なのだ。
 わたしのような、
 悪魔のような、驟雨が必要なのだろう。
 
 いつか全て報われる日へ。
 
 
 
仁也 ガチで戦闘をするか演出で痛み分けかが悩む所じゃあるなぁ(笑)
結花 ガチじゃないんですか? GM的に。
それか、浸食大幅増大な演出戦闘
GM 一応言っておきますけれど、今回のボス戦は逃げ戦予定じゃないですよ。(笑)
あと、ここでの戦闘は別に想定してませんでしたからね。(笑)
結花 まあ、悪魔さんはきっと中ボスです。
灰色的な見地から見て。
どういう見地だ(笑)
結花 え? ボスがあんなに弱いわけがない。
すっかりトラウマになってるな(苦笑)
GM 何というかこう
結花さんに先を予見されたことがない。(笑)
いや、このGMのセッションがセオリーとは一線を画しているからじゃないかと思うぞ(笑)
結花 でもでも、仁也さんの前に悪魔出したら、仁也さんが残るだろな、というのは予見できましたよー
だって、ボスって果実さんでしょう?
仁也 まぁおっちゃん戦闘にかなり特化してるから此処で戦ったとしてもどうだろね、帰還気にしなければ実は結構勝てる(笑)
仁也はデータの時点で帰還考えてないガチキャラじゃないか(笑)
120%エフェクトいくつとったよ(笑)
仁也 1個しかないよ(笑)
結花 120%を2個とったのは自分です。
しかも、4d10と20上昇のエフェクト
そっちもか!(笑)
結花 帰還を考えてないキャラで帰還するのが熱いんじゃないですかー
んーまあなんとかなるんじゃない? といい加減なことを言ってみる


GM まぁいいか。
では、えーと。尚君のシーンで。
さっきの続き。
汚染レベル3でどうぞ。
ダイス 9R+5 = [6,4,10,6,2,10,7,4,9][2,8]<クリティカル>+5 = 23
1D10+75 = [9]+75 = 84
GM 問題なくて詰まらない……。
ちぇーちぇー。
だが麗香さんなら!(笑)
ダイス 9R+4 = [8,4,2,10,5,9,7,6,1][1]<クリティカル>+4 = 15
89+1D10 = 89+[2] = 91
GM 是色と会話するのなら、通路で出来ますが、何かありますか?
何もなければ、支部に到着するあたりから始めましょう。
洗いざらいしゃべれ、って言いたいところだが、何も言わなさそうだ(笑)
GM はーい。
で、尚君。今の内に是色と話しておきたいことはありますか?
おめー隠してること全部しゃべれ、って言ってみるけど
何か意味の通る返事返ってくる?
GM 是色「僕さー」
「え?」
GM 是色「ボクサー」
是色「……」
麗香「…………」
「フライ級にしても軽すぎだろ」
GM 是色「僕さー、実は天使なんだよ」
麗香「……」
「神様じゃなかったのか」
「で、その天使って、仕事は何だ」
「街のレネゲイドウィルスの沈静化か?」
GM 是色「うん」
てくてく。
「俺の推測では、この街の人間は、常時、何%か、浸食率を下げられている」
GM 麗香「……えっ、って、真面目な話をしていたんですの?」
「疲れるだろ? 学校行ってた時からこんな感じなんだ」
「こういう時だけは、ノイマンでよかったと思うね」
GM 麗香「……」
是色「繰鐘さんは」
麗香「……はい?」
是色「生徒会、頑張っててくれてたよね」
麗香「……はぁ……」
そう言えば是色は副生徒会長でした。
是色「僕のことは、あまり気にしなくて良いと思うよ」
そう言って、麗香ににへらっと笑いかけます。
是色「早乙女さんと、仲良くね」
麗香「……えっと……わかりましたわ……」
是色「うん」
という感じですが。
何かありますか?
いや…今ここであえてやりたいことはない。
GM はい。では、出口でまた昇りのエレベータに乗り、扉が開くと……
秋土劇場の一つの部屋につきます。
麗香「ここに繋がってたんですのね……」
「ふぅー。ようやく帰ってきた気がする…」
「どーなってるの、今、支部はー」どーなーっつ。
GM 是色「ここからは解るよね」
振り向いて「行くのか?」
GM 是色「ん。ちょっと、夏火さんと話してこないと」
そう言って、彼女はてくてくと言ってしまいます。
「…あいつかぁ」悪い予感しかしないわけだが。
まあ是色を送ろう。他にすることもないし。
GM 麗香「……わたくし達は、ええと……支部長のところへ行けばよいのでしょうか。とと……」
麗香さんもついていきます。
中略。夏火の部屋です。
こんこん、と、ノックして、是色が中に入りますと。
“腐敗済み(Rotten Fruit)”こと、夏火果実が出迎えてくれます。
白衣に、足首までの黒いストレートロングヘア。
にあいもしない学者帽に、右目にの螺子。
「おいーす」
GM 果実「わざわざ部屋に来てくれるなんてねん」
「まあ用があるのは是色だけなんだが。ついでで悪いけど、支部長って今どこにいるかわかる?」
GM 果実「是色ちゃん、元気?」
是色「元気ですよ」
果実「それは良かった……って、新垣の旦那。それはどう言う趣向なのん」
新垣君の変わりようを見て。
「え? あー、また説明しなきゃなんないのか…面倒だな」かくかくしかじか。
GM 果実「……」
果実「車いすと松葉づえだったら……」
是色「車いすじゃないですか?」
果実「いや、松葉杖が攻めな方がしっくりくるんじゃないかしらん」
「ストップ」
「そこから先は言わなくて良い!」
GM 麗香「貴方方、何をはなしてらっしゃるの……」
果実「待って、重要なことなのよ」
「それお前ら限定だろ!」
GM 果実「あっ、今インスピレーションが……」
「同人誌でやれ!」というか出すな(笑)
GM 果実「実際のところ、新垣の旦那は雪吹の兄上とどのくらいまで進んだの?」
麗香「えっ、というかそう言う関係だったので?」
「あー、うるせぇ!!」
「んなわけねーだろが!」
「お前も乗せられるな!」>麗香
GM 麗香「え、いえ……申し訳御座いません」
果実「まぁ、お・し・ご・とぉ、こなさないといけないのよ」
「そうそう、話を戻すぞ。俺が聞きたいのもそこなんだ。夏火さん。アンタ、なんか“この街をどうにかできる手段がある”んだって?」
GM 果実「そうよ」
果実「“仮初(Area of Fake)”、持ってるって聞いたんだけど」
と言って、折れそうなほど細長く白い指を伸ばしてきます。
「率直に言って、お前、“是色とレネゲイドクリスタルを融合させたら街規模に届くエフェクト自動発生装置ができるわん”とか言い出しそうで嫌なんだよ」
GM 果実「さすがノイマン。詳しいことは冬水の旦那に聞くといいわん」
「じゃ、詳しいことは支部長の許可が出てからな」
「また後で」
GM 果実「……、ま、いっか。新垣の旦那はその車いすで十分?」
「不自由はしてるがそこまでキツくはないぜ」
「それがどうかしたかい?」
GM 果実「もうちょっと動く足、あげられるわよん」
「へぇ。夢みたいな話だな」
「原理は?」
GM 果実「幸いというか、何と言うか」
面倒くさそうに、髪をいじります。
果実「……冬水の旦那が『似たり寄ったり』だったから」
「…初耳だな」
GM 果実「そ・う・い・う技術のストックが在るのよん」
「まあ、今は忙しいし、時間ができたら頼むわ」
GM 果実「わかったわ。それじゃ、是色ちゃんのお嬢様はわ・た・しとぉ、語らいましょうか」
是色「……」笑顔で受け流す。
止める強い理由もないし、ここは退出して支部長に会いに行こうか。
うーん、おっちゃんのOPの内容を知っていればなぁ
《マインドリーディング》してもらいたい。ものすごく信用できない
仁也 いや、果実の嬢ちゃんと知り合いだって事は言ってなかったか?(笑)
いやしかし、不穏な思考してたじゃないか(笑)
結花 剛さんに《ブラッドリーディング》を取らせるべきだったか。リーディングつながりで。
GM という感じで、支部長室へ向かう尚君です。
結花さん剛さんの登場はご自由に。
結花 はーい。自由なタイミングで登場しますね
GM 他のメンツは、広い部屋で休ませてもらってる感じのようです。
なるほど。
GM では、支部長室です。
「ちーっす」
「ピザお届けに上がりました」
結花 「尚くん!」
支部長室で心配そうにしてた結花が顔をあげます
ということで判定
ダイス 8R+5 = [4,8,2,1,7,8,9,10][4]<クリティカル>+5 = 19
1D10+62 = [2]+62 = 64
「おー結花。おっちゃんは病院に残っちまったが、たぶん大丈夫なんで全員無事だ」
結花 「……?」
病院での出来事を知らないので、首を傾げてこう
まあこっちのシーンであったことをかくかくしかじかと報告しておく。
是色のこととかも。
結花 じゃあ、
「四季先輩!」
「すまん、今は夏火のところだ」<四季奏
GM 是色はいないです。
夏火のところ。
麗香「ああ、早乙女さん。早い再会でしたわね」
結花 「良かった…。無事だったんだ」
「麗香ちゃんも無事で良かった…」
「でも、麗香ちゃんと一緒にいたあの人が……」
仁也さんの安否をあんじておきます。
「で、支部長いる?」そわそわ。
本当に街が救われるんならそれに越したことはないからな。焦りもする。
GM 支部長室の扉が開きます。
青藍「ああ、“Light”」
心なしか、若干沈んだような顔をしています。
青藍「よくここへ。迎えに上がれず、申し訳御座いません」
「ういーす」
「…何かあったんですか?」
ま、さ、か…
GM 青藍「……中へどうぞ」
言われるままに中に入ろう。
GM 結花さんと麗香さんはどうしますか?
入ろうとすると青藍さんが止めようとしますが。
結花 ……とくに入る理由がないんですが。
結花のほうは。
GM 麗香もとめられるのなら、と入るのを躊躇しますね。
少しシーンから退場して、尚君次第では再登場ありにしてもいいですよ。
俺としては、別にひそひそ話をするつもりはないので、一緒に出てもらってまったく問題ないわけだが。
まあとりあえずこの場は俺だけ先に行くか。
結花 麗香ちゃんと今後のことでも話し合っております。主に、悪魔と再び遭遇したらどうしようとか。
GM はい。
では、支部長室の中。
「おじゃましまーす」車椅子キコキコ
GM 机に支部長――“氷園の種蒔き(Frosty Bullets)”、冬水真冬がいます。
席に深く腰掛けて、もとより年齢よりもずっと下に見える小柄な身体は、ほとんど隠れて見えます。
真冬「やぁ、“Light”――新垣君、良く戻ってくれたね。心待ちにしていたよ」
「死ぬかと思いましたがなんとか」
GM 真冬「何だいその格好は。みっともない。いやいや、人のことを笑えはしないんだがね」
と言って、身体を起こします。
身体の左半分が、機械仕掛けである――ように感じられますね。
うおお。戦闘で無くしたか?
「UGNは人様の代わりに怪我してナンボの仕事でしょうに」
「で、どうしたんです、その体は」
GM 真冬「いやね。青藍を出してしまったものだから、支部の周辺の安全を確保するのに苦労してしまって、だ」
真冬「元来私の体は、それほど再生力に優れていないのだよ」
真冬「本当のことを言えば、『私の体ですらない』」
げげぇ
GM 真冬「まぁ、そのあたりは物語で言う裏話だから、さほど気にすることではないのだけどな」
「その苦労もようやく報われる…かもしれないわけ、で、す、が」と言ってレネゲイドクリスタルを出し。
GM 真冬「“仮初(Area of Fake)”か――良くやってくれた。助かるよ。値千金どころか、君の人生で最も人類に貢献した仕事と言えるだろう」
今や、この俺程度でも貢献できる、滅びかけの人類、ということか。と皮肉に思いつつ。
「しかしですね。正直、これがあれば街を救えるとか言われても、イマイチぴんとこないんですが」
「説明して頂けませんか?」
GM 真冬「ふむ」
頷いて。
後ろに倒れるように、椅子に背を預けます。
真冬「まぁ、説明しないわけにはいかないのだろうな」
真冬「新垣君も――、そこまで『失った』のだ。納得いかずに済ませられる話でもないだろう」
真冬「ただし――だ」
こつ、と、机をたたく。
「他言無用?」
GM 真冬「違う」
真冬「覚悟して欲しいのだよ」
真冬「この話は、少々――どうしようもないのでね」
「ああ、なるほど。いえ…なんとなく察しはついています」
仁也さんとの会話内容をかいつまんで話そう。
GM 真冬「そうか――まぁ、彼は掴んでるかもしれないな。既に」
真冬「さて――」
腕を組みます。
真冬「何処から話したものか、と、勿体ぶりたいところだが――やはり発端は、コトの起こる一週間前にさかのぼる」
第零棺の頃ですね。
真冬「そう、UGNの支部長達が集められた、あの会談だ」
真冬「覚えているかい?」
「内容は秘密でしたっけね」
GM 真冬「そう。“救いし賜物(All in the One)”四季奏一切の、一大発表についてだ」
右手で、左の機械の指をいじり、彼は言う。
黙って聞こう。
GM 真冬「――我々一同に対して、彼は言った」
人類は滅亡する!
GM 真冬「――『UGNはもはや必要ありません』とね」
真冬「一般社会に対するオーヴァードの迎合など、無駄なのだ、と。無意味なのだと」
「言い切りましたね」
「まあUGNの理念に一種の嘘が含まれるのは否定できませんが。…それで?」
GM 真冬「彼はついに突き止めたのだ。レネゲイドウィルス――その特異性を発揮する原因となる、ゲノムをね」
「え…っ!?」
GM 真冬「何処からだと思う?」
こつん、と机をたたいて。
真冬「――非感染者からだ」
「つまり、ウィルスがもつゲノムと、人間がもつゲノムに同一の部分があると?」
GM 真冬「人間のDNAに擬態し、それゆえに発見されないレトロウィルス――だと、思われていた」
真冬「違ったのだ」
真冬「 人間自体がレネゲイドウィルスだったのだよ 」
「しかし、人間のDNAは停止コドンの存在によって、発現しない部分もあるはず。他の種と似ている場所も少なくない。それだけでレネゲイドウィルス=人間と言い切るのは…」
と言いかけて、はたと気づく。
果たして、優秀な医師でありレネゲイド研究者でもある四季奏一切が、その程度のことに思い至らなかったのだろうか。
…いや、そんなはずは無い。
GM 真冬「思い至ったかな。既に彼は様々な検証を終えていた」
真冬「何かの気付き――きっかけ自体は、『既にずっと昔に済んでいた』に違いない」
それは例えば、身近な者の検診で。
原因が無いのに、発現している『感染』などで。
「…わかりました。人間の祖先がレネゲイドウィルスであり、進化の過程で、いずれ、超能力を手に入れる、としましょう」
「それがどうしてこういう大惨事になったわけですか?」
GM 真冬「彼は、独自に研究を進め、とある結論に至っていた」
真冬「人間がレネゲイドウィルスに感染する――否、人間イコールレネゲイドウィルスであり、そのゲノムにスイッチが入ってしまったのがオーヴァード――いやいや」
真冬「まだぬるい」
真冬「むしろ、こう言うべきだと」
真冬「レネゲイドウィルスに感染しているのが『人間』だと」
真冬「我々の自我は、人格は、文化は、一時のものに過ぎないのだと」
真冬「来たるべき『いつか』、レネゲイドウィルスは、我々という『疾患』から治癒するだろうと――そう言うことだ」
「なるほど」
「自然界においては良くある話ですけどね。自分の身になってみるとちょっとしんどいかな?」ぜんぜん辛そうに見えない、あっけらかんとした表情で。
GM 真冬「無論、そうなってしまえば、UGNなんぞ何の意味ももたない」
肩をすくめます。皮肉気に。
「ですよねー」
「まあ、それも悪くはないと思いますが。医療関係者だって、理想とするのは、自分たちが役立たずになること…、つまり怪我も病気もない世界だって聞きますよ」
GM 真冬「問題は、いつ『それ』が起きるかだ。近年、――まぁ、これは過去の言い方になってしまうが――レネゲイドウィルスの感染者は加速度的に増えている」
真冬「いつだかはわからないが、『近い内』にそれは起こると判断され――」
真冬「UGNは今までの体制をひっくり返して、上へ下への大騒ぎ――だが、全ては機密の内に行われた」
真冬「いささかショックが大きかったからね。一歩間違えば、『それ』の前に、同胞によって世界が滅ぼされかねん」
「まあ、そりゃなあ」
とりあえず黙って聞こう。
「現代人には刺激が強すぎる、ってやつですか」
GM 真冬「そして、いくつかの救済プランが検討され――」
真冬「最も早期にそれが起きた場合のプランの準備が――終了する、一歩手前」
真冬「すなわち、『最悪』のぎりぎり手前で、『その時』は来た」
「手前って言うかほぼ手遅れって言うか…」
呆れた、という感じで肩をすくめよう。
GM 真冬「もう気付いてるかもしれないな」
真冬「この状況は、かろうじて最悪ではないのだよ」
真冬「などというのは、オブラートに包んだ言い方であって」
真冬「この状況はほとんど最悪なのだよ、新垣君」
ため息をつくように、長く長く息を吐く。
そして、少しだけ息を吸って、言う。
「うん、まあそりゃ…ねえ」第一棺から第四棺までで見てきた、この街のありさまを思い返しつつ。
「どう考えても…」言葉を詰まらせる。
GM 真冬「我々人類は、もうほとんど敗北しているのだ」
真冬「即ち――」
 
 外の世界など無い。この街こそが、今の世界において、最良の地なのだ。 
 
「…………」
「ということは…」
少し考え込んで…真冬支部長の顔を見つめ、ものすごく真剣な顔で。
「今なら、簡単に世界征服ができますね」
GM 真冬「はっはっは」
ひとしきり、彼は笑います。
真冬「――さて、最終防衛地帯であるこの土地をどうするかだけどね」
「はい。そこにどう夏火さんとレネゲイドクリスタルが関わってくるんです?」
さっきのは冗談としてあっさり流して。
GM 真冬「そこで、“仮初(Area of Fake)”と“彩める空(monotone sky)”の協力が重要になってくるわけだ」
真冬「“腐敗済み(Rotten Fruite)”――夏火果実は、四季奏一切夫妻の下で優秀な助手として働いていた研究者でね」
真冬「専門は、ずばり、レネゲイドクリスタルなのだよ」
真冬「レネゲイドクリスタルのアーティストと言えば、彼女のことだ」
真冬「“仮初(Area of Fake)”の――その特殊な性能については、もしかしたら既に体感しているかもしれないが」
真冬「……ふむ、どのくらいまで知っている?」
そういえば、と言った風に聞いてきます。
叢雲寺のことを話そう。かくかくしかじか。
「汚染レベルの低い空間を作りだす、あるいは物質を復元する、というくらいは」
GM 真冬「……成程、槐堂はそのようにそれを使わせたか……」
真冬「ああ、浄化、復元、そして他者の能力の複製」
真冬「アレは、レネゲイドウィルスの特殊な作用要素――まぁ、チェッカーなどで測るあれだな」
真冬「それを『取り込み』『記憶し』『組み直す』という、一言でまとめるとそういう『装置』だ」
「なるほど…それで“Fake”ですか」
「本物のコピー」
GM 真冬「ああ」
「で、是色のレネゲイド操作能力をコピーしよう、ってことですか?」
GM 真冬「いや、彼女のは無理だ」
真冬「“仮初”のキャパシティを超えてるからな」
真冬「単純に、『空気清浄機』として使うのだよ。“仮初”は」
真冬「蔓延してる要素を取り込み、純化させて、『レネゲイドクリスタル』として精製させる」
真冬「だから、二重の意味で“腐敗済み”の果実君が必要なわけだな」
真冬「しかし、こうは思わないかね」
真冬「埃が延々と発生する部屋に、空気清浄機を置く意味がどれほどあるのかと」
真冬「パンクして終わりだ」
「まあ、確かに、根本的な解決手段ではないですね」
“根本的な解決策”なんてものがあるなら、教えてほしいが。
「ん…? 待ってください。じゃあ是色は計画のどこにいるんです?」
えっと、レネゲイドクリスタルを作るのが是色の仕事?
GM いや。
真冬「“彩める空”には号令をかけてもらうんだよ。掃除をするから、ちょっと静かにしていてくれとね」
そう言って、また椅子に背を預けます。
大体話は終わったというように。
一見、理は通っている、ように見える。が…
「…。なんて言うか…、本当に苦肉の策って感じですね」
GM 真冬「そうだよ」
結花 そこまでして、救うだけの人数が生き残っているのかどうか…
というか、要するに自然淘汰ですよね
「これはもう駄目かもわからんね」
人類おわったー。
GM 真冬「その通り。君はこの賭けに乗るかい? 新垣君」
にぃっと笑って、聞いてきます。
皮肉気なその笑みが語るのは、
彼自身――冬水真冬自身も、
本当に心の底から感じているのだということ。
馬鹿馬鹿しいと。
こんなこと、何にもならないじゃないか、と。
まあそうだよなー。
是色か仮初が駄目になったらそこでお終いだ。代わりもない。
GM けれど、彼は半身を失っても、街の大半を失っても、世界のほぼ全てを失っても、
――UGNの一支部長なのだから。
そして自分は、冬水真冬という人間なのだから。
それを全うしてやろうじゃないか、という。
そんな意志。
「まあ、そりゃやりますよ。どうせ死ぬなら面白い死に方したいので」
「ま、俺は…そんなに重く受け止める必要ないと思いますけどね」あえて軽い調子で言おう。
「絶滅する種族なんていくらでもいるじゃないですか」
「人間が一人もいなくなっても、そのうち別の種族が進化しますよ」
「最悪、地球が無くなっても、どっかの銀河系の別の惑星で、知能は生まれるでしょう」
「“この世に絶対は無い。世界が滅ぶ確率は常に消せない”と言うなら、“世界が滅びない確率”も、絶対に消せないんだ」
俺たちには無理でも、いつか、後を行く誰かが、必ず、命の価値を―――すべての命が存在する価値を、証明してくれるだろう。
結局は。
信じるか、信じないか。
希望か、絶望か。
何を、自ら、選ぶのか。
それだけなのだ。
GM 真冬「そうかもしれないな」
真冬「うむ。ま――」
笑って。
真冬「希望には縋ろうじゃないか。人間だろう?」
そして、机を軽くつつきます。
「まぁ、あるなら使わないと勿体ないですしね」
「もし駄目でも、次に進化した生物に馬鹿にされるのはゴメンです」
GM 真冬「それでは」
真冬「我らの一世一大の賭けに、相応しいチップを」
プライドも見栄も、心底ばかばかしい。そうは思うが…
他に何もないなら、あえて捨てることもない。
GM シーンカット。




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