第三棺

尊く懸命な輝きの埋没the Twinkle of monochrome

Middle Phase 7
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM 次は尚君のシーンですが。
その前にマスターシーン。



◆カガヤキ倶楽部マネージャー:阿舎生美
 
 この街――日告市から通える範囲の、国立の大学へ行く。
 それが私の目標だった。
 決して水準の高くない私の高校からしたら、
 そんなの無謀な挑戦にしか見えなかった。
 
 でも、仕方なかった。
 私達のお父さんとお母さんは、
 事故で突然に他界してしちゃったのだから。
 
 幸い、保険は効いたし、兄貴はすでに就職してたので、
 即座に路頭に迷うことはなかったけれど。
 私と、弟。
 未成年二人を抱えての生活は、困難な状況だった。
 とにかくお金が必要で。
 だから、高校を出たら働くつもりだったのに。
 
「いや、お前は大学に行くんだ。生美」
 兄貴は言った。
「そんな、だってそんなお金……」
「大丈夫、何とかなるよ。
 お前の将来を潰したくない。
 勉強、お前は出来るんだからさ」
「…………」
 
「姉貴は頭いいから、大学行けるよ、絶対」
 弟は、そう言ってくれた。
「俺、バイトはできないけど……、
 邪魔しないように、出来ること、頑張るからさ」
「……ありがとう」
 それしか、言えなかった。
 
「白狐郎……、兄貴も、素顔も、
 ああ言ってくれるけど……ホントは、
 心の中では、私に働いて欲しいんじゃないかな」
 兄貴の親友である、白狐郎は。
 幼いころから、私のもう一人の兄みたいなものだった。
「二人とも、とっても優しいから……、
 あんな風に言ってるだけでさ。だって、苦しいはずだよ?
 私が、負担をかけちゃうような、そんな……」
「裏切りは良くない」
 白狐郎は、簡潔に私へ告げた。
「うら……ぎり?」
「本心がどうあれ、あいつらはそう言った。
 そう言いたかったんだよ。
 あいつらの決心を、裏切るな」
「…………」
「進学したかったんだろう」
「……うん」
「頑張れ」
「…………うん」
 白狐郎と背中合わせで、私は涙を流した。
 
 期待してくれてる。愛してくれてる。
 だったら、応えなくちゃ。
 お金のかからない国立へ。
 勉強のできる大学へ。
 私は、行く。
 
 けれども。
 
 そんな決心も。 
 
 そんな挑戦も。
 
 あっという間に消え去った。
 この街は、変貌した。
 化け物になる人々。
 私を襲う兄貴。
 その兄貴を殺す、白狐郎。
 悪夢、悪夢、悪夢……。
 
「うっ……うっ……兄貴ぃ……」
「泣くな。泣くな、生美」
「だっ……ってぇ、白狐郎…………」
「今は泣いてられない……。
 涙を流せる場所を探そう」
 涙を、流せる、場所。
 兄貴のかつての愛情に、私はどうすれば応えられるだろう。
 私達の弟を、どうすれば守ってあげられるだろう。
「行くぞ」
「さよなら……兄貴……」
 
 今、私は、仲間達と一緒に、街の運命に抗ってる。
 それは、大学へ行くよりも、ずっと辛い挑戦だ。
 でも、まだ、全てをなくしたわけじゃない。
 白狐郎、素顔、みんな。
 私は、頑張らないといけない。
 
「頑張ろう」
 白狐郎が、静かにそう言った。
「うん、頑張ろうね」
 それに頷いた。
 
 私ね。
 貴方のことが好きなんだよ、白狐郎。
 だけど、こんな状況だから。
 頑張るって決めたから。
 また、涙を流せるようになるまで、言わないんだ。




GM では、シーンを始めます。
シーンプレイヤーは尚君ですね。
ただ、集会のようなものなので、他の方々も出たければ出ていいです。
登場キャラは申請して下さいな。
了解ー
じゃあ充さんと出るか。
糸緒 空気見てから考えます。
子供だから…(笑)
結花 んー。様子見していい?
その集会って、朝?
GM 朝ですね。
結花 じゃあ、一応結花はあのあとみんなに謝りに回って
傷がたたって寝込んでいます
傷がたたるって言い方はおかしいですけど…。まあ、そんな感じでお願いします
傷が化膿して熱が出て、みたいな感じか?
GM 汚染レベルは2です。
対汚染判定からどうぞ。
まあ、とりあえず対汚染判定するか。
ダイス 8R+5 = [3,1,3,10,3,6,9,8][3]<クリティカル>+5 = 18
1D10+45 = [1]+45 = 46
充さん
ダイス 7R+5 = [2,1,7,6,6,5,2]+5 = 12
1D10+38 = [5]+38 = 43
おかしい。もう追いつかれそうだ。
GM あはは。
黒兎 出ます
GM 了解です。
ダイス 5R10+3 = [7,10,2,5,2][10][5]<クリティカル>+3 = 28
GM おう、28ですか。
ダイス 1D10+46 = [2]+46 = 48
GM 他に出る方は?
糸緒 とりあえず出たい雰囲気だったら
盗み聞きしてた事にシマス。
なんというか、子供がいても場違いでしかなさそうだから…(笑)
結花 様子見で。
どんな集会か分からないから
GM 集会というか、まぁ。朝食の場でお知らせって感じです。
さて。



GM 現在の日告市の夜は、暗いです。
電力供給ももはやされず、街灯を含めたほとんどの明かりが無いためですね。
叢雲寺周辺は、ブラックドッグの能力により一部ライトをつけたり、
叢雲寺内では蝋燭が灯されたりして、若干明るいですけれども。
暗いとは言え。
街を覆う壁のせいで、星すらも見えません。
そんな真っ暗な夜を超え。
薄明るい、朝。
カガヤキ倶楽部の朝食です。
相変わらず、ワイワイガヤガヤと、こんな状況下でも楽しげにメンバーは食事をしていました。
御馳走様、と、ほぼ全員が食べ終わったところで。
白狐郎が手をたたき、みんなを注目させます。
白狐郎「――みんな、注目してくれ」
30人ちょっとの目を集めますね。
白狐郎の隣に生美。
近くに和尚、隠れるように儚恵。
まぁ、他には日向ママとか、一斗とか。
糸緒 ままー
GM 素顔と紙縒はきょとんとしてます。
ああ、そうそう。黒兎君も近くにいて下さいな。
黒兎 では端っこに居ます
GM はい。
一斗「なんだい、リーダー?」
白狐郎「だから、リーダーじゃない」
ははは、と少し笑い声。
生美「ほら、聞いて聞いてー」
白狐郎「一部のメンバーは既に知ってると思うが」
白狐郎は少し言葉をためて。
白狐郎「今日中にも、脱出列車が完成する見込みだ」
メンバー:「「おおお〜」」
一斗「ついにか!」
糸織「やったね、葛西さん」
素顔「マジで! ってことは……」
紙縒「今日っ、街から出られるのっ?」
わいわい。
「へぇ……だそうですけれど、新垣君」
隣の充さんが言います。
「まあすべてが計画通りにいけば、脱出できるだろうな」
寝不足で頭がぼんやりしてるが、なんとかそう答える。
黒兎 「ドリル付けたかった(ボソ」
GM あはは。
どこにそんなパーツがあるんだ!(笑)
糸緒 そりゃ……先端部分?(笑)
材料だよ!!(笑)
糸緒 その辺はほら、モルフェウスで……頑張れ?(笑)
GM 生美「はーい、静かにー」
白狐郎「点検も含めて、今日の昼過ぎごろから搭乗を開始、問題が無ければそのまま脱出に移る」
白狐郎「各人、準備をしておいてくれ」
一斗「よっしゃ、俄然やる気がわいて来たぜぇ」
生美「一斗さんはいつでもやる気満々じゃないですかー」
はははは、と笑い声が沸き上がります。
奇縁「しかし、よく頑張りましたな」
白狐郎「……和尚、本当にいいのか?」
奇縁「構わないよ。……というより、もとより拙僧が決めるようなことではない」
白狐郎「そうか。感謝する」
奇縁「いやいや」
何かコメントするようなことはありますか?
なければ、話を進めます。
そんな感じの、盛り上がった雰囲気。
糸緒 シーンにはいないので。尚お兄ちゃんたち次第ですね
特に言いたいことはないかな。
GM 大詰めに入ろうと、メンバーが動き始めたところで……。
良吉「おーい!」
と、焦った声が聞こえます。
良吉「た、大変っす!」
白狐郎「どうした、良吉」
良吉「れ、列車が……」
生美が水を持ってきます。
ごくごく。
良吉「列車が……、今、見て来たんっすけど……、こ、壊されてるっす」
一斗「な……なんだとぉ!?」
ざわめくメンバーを、白狐郎が手で制します。
白狐郎「どの程度だ?」
良吉「いや……ほら、俺、点検行ったじゃないっすか。メインドライブ周辺だけっしたけど」
白狐郎「紙縒」
紙縒「はいっ!」
カメラを、梔子駅の方に向けて、カシャカシャッ。
じー。
フィルムを取り出し、ポケットから写真の用紙を出します。
ジジジッ。
紙縒「……できたっ。これっ」
写真を白狐郎に渡します。
白狐郎「ふむ……。確かに、そこだけみたいだな」
良吉「ど、どうしまっしょ」
白狐郎「一斗、日向さん。良吉と駅に行っててくれ。これ以上壊されると困る」
一斗「それはいいけどよ。一体誰がこんなこと……」
良吉「そう言えば……、例の、イケメン野郎居たじゃねえすか」
結花 いけめん?
GM 良吉「なんか、サングラスの兄さんがそいつのこと怪しいって……」
糸緒 はうわっ!(笑)
私が仲間割れのタネまいてるー!(笑)
結花 剛さーん!!!
GM 一斗「あいつか……秋土つったか。四季駅の劇場関係者か? 確かに何か企んでそうな……」
良吉「つか、そいつの姿みえねっすけど」
きょろきょろ。
一斗「ちっ、早くとっ捕まえねぇと」
白狐郎「それは俺がやるから。さっさと行け」
一斗「でも、リーダー」
白狐郎「これ以上壊されると、また修復に時間がかかる。言っただろう、この場にとどまり続けるほど生存率が下がる」
良吉「……そっすね」
黒兎 「とりあえず俺は容疑者探しより先に修復に向かいます」
GM 白狐郎「黒兎も行ってくれるか?」
シーン退場になっちゃいますが、どうします?
黒兎 「わかりました。今から向かいます。……こんな力があるのなら遠くに居ても壊すことが可能だと思うしね。その人が犯人だとは限らないよ」と言いながら立ち去ります
GM あと、尚君はどう行動しますか?
じゃあ何も言わないで見てるか。
まあ列車の方は陽動かもしれないし。
結花 陽動だと…? なんだってー!?
GM はい。
まぁ、黒兎君と、一斗・良吉・日向ママあたりはシーンを退場します。
生美「……メインドライブの、ここ……、『積む』予定だったところだよね」
白狐郎「ああ。まだ何もなかったけれどな」
白狐郎「……紙縒、秋土青藍を探せるか?」
紙縒「はーいっ」
カメラを構えます。
カシャカシャ。
白狐郎「仏様のいる周辺を写してみてくれ」
紙縒「仏様っ? はぁい」
結花 仏様って?
儚恵のことだろう。
糸緒 儚恵さんは
ここにいるよ
結花 あれ? 儚恵さんじゃないの?
GM 叢雲寺はお寺ですから、本尊があるのですよ。(笑)
ああ。青藍さんが寝てる場所がそこ、ってことか。
GM いいえ。
結花 まあ、いいか。
じゃあ、そこに剛さんを出していい?
GM いいですよ。
ダイス 7R+5 = [1,6,4,1,9,7,9]+5 = 14
1D10 = [3] = 3
結花 「なんだ? 仏様って?」
っていう感じで出てきます
ひょっくら。
GM はい。
生美「本尊のことですよ」
「本尊?」
生美「お寺の中心に設置してある、仏様の像のことです」
紙縒「あ、いたー」
紙縒「これ」
と、写真を見せます。
そこには仏様と、
散乱したお教。
青藍さんが映ってました。
結花 「ずいぶんと荒らされてるようだが…、こりゃあの秋土って野郎がやったのか?」
「あのガキの言ってることが正しかったってわけか。俺のカンも、どうやら捨てたものじゃなかったみたいだな」
GM 白狐郎「……やはりか」
白狐郎が腰を上げます。
白狐郎「紙縒は、周辺を見回ってきてくれ」
紙縒「えっ、私も行くっ!」
生美「紙縒ちゃん、ちょっと危ないからね。戦うのは得意じゃないでしょ?」
紙縒「ぶーっ」
素顔「あんまり姉貴達を困らせんなよ。ほら、行こう」
紙縒「仕方ないなぁ」
紙縒「そう言えば、しおちゃんっ、何処かな?」
てこてこ。
結花 「俺もついていくぜ」
と、紙縒ちゃんに。
GM ん、紙縒についてくんですか?
紙縒は厄介払いされただけですよ。
結花 「周辺を見まわるにしても、この状況に女ひとりじゃ危険だろ?」
GM 素顔「俺がいるから大丈夫だよ、おっさん」
結花 「誰がおっさんだ。ガキ」
GM 素顔「おっさんじゃねぇの?」
結花 「それに、結花のヤツが心配なんだよ。周り見まわるついでに、ちょっと確認しに行きてぇんだよ」
「そんなわけで、俺はお前らについていきてえんだが…」
それに加えて、紙縒の能力が狙われるとやっかい、というのは確かにある。
することが無いなら着いていくのもいいかもしれない。
GM 素顔「ついてきたいならついてくればいいじゃん」
てっけてけ。
結花 「いわれるまでもねえ。行くぞ、ガキ」
GM 素顔「ガキガキ言うなよ、おっさん!」
結花 「ガキにガキって言って、なにがいけねえんだよ」
「まったく」
「可愛げのねえガキだな」
GM ということで、フェードアウト。
糸緒 尚お兄ちゃんは、この場で狐さんといたほうがいいかもだけどね
どうなんだろ
GM 白狐郎達は青藍の方に行きますが。
どうしようかなー。白狐郎たちについて行きたい気もするけど。
言っておくけど、俺が白狐郎を守るように行動するとは限らないぞ。
糸緒 いや、守ってねなんていってない(笑)
自分的には、青藍と白狐郎のことは優先度が低いな。
せいぜい、二人で殺し合いする程度だろうし。
糸緒 せいぜいて!(笑)
考えてみろよ。青藍さんは支援系だぜ?
まともに一対一でやりあったら、勝てるはずがない。
糸緒 そういう問題?(笑)
である以上、彼は囮か、仲間を呼ぶか。
どちらにしろ、その他への影響は小さいし、なによりとばっちりはゴメンだ。
本音を言うと、コウモリを決めこみたいところ。
糸緒 尚お兄ちゃん……(笑)
GM 白狐郎「俺達も行くぞ、生美」
生美「うん。和尚、一応ついてきてくれると助かります」
奇縁「ええ」
「どうしますか、新垣君」
「葛西さんが確信的に、本尊の場所を指摘したのは何かあると思いますが」
「青藍さんが探してるものに心当たりがあるんだろうな」
GM 「ふむ」
あれ、そういえば儚恵はどこにいったんだ?
GM 儚恵、居ますよ。
部屋のはじっこに。
この場に?
ずっと残る感じ?
GM はい。
おろおろと見守ってます。
蒼い顔で。
まぁ、何か白狐郎についていくような感じはありません。
じゃあ俺もこの場に残ろうか。
あ、ごめん。一つだけいいか。
GM はい、どうぞ。
白狐郎の背中に、声をかけておこう。
「ああ、青藍さんのことだけど」
「俺も詳しく知ってるわけじゃないが…、あの人は、組織の人間だ」
特定のどこかの組織、という意味ではなく、組織に属する人間にありがちなタイプ、というニュアンスで。
「個より全体。横の連帯。上は絶対。…事を構えるつもりなら、慎重にやったほうがいい」その場に寝そべったままで。「やりにくい相手だぜ」
GM ん。
と、振り返って。
白狐郎「そうか。どうも」
と、涼やかにそういいます。
では、白狐郎達も一時退場。
さて、白狐郎達がいない間に何かしますか?
とりあえずこの部屋にいる人間は大多数はけましたが。
儚恵さんはおろおろとしてますが、その内、食器とかの片付けをし始めます。(笑)
とりあえず儚恵だけ守れてりゃいいや。
レネゲイドクリスタルをどうにかするなら、儚恵に何かあるはずだし。
ああ、いや、白狐郎が死んでも計画はおじゃんになるのか?
エンジン係だったよな。白狐郎。
GM ある意味ではそうですね。
なんだ。青藍さんにとって最大の好機じゃないか。
GM と仰いますと?
今ここで白狐郎を含む3人を殺せば、カガヤキ倶楽部の首脳陣の抹殺および列車収奪の両方が簡単に達成できるぞ。
糸緒 ひぃ
まあ俺はやらないがな。
結果的にそうなったらなったで別に構わないけれど、とにかく今は何もしない。
結花 またまたー。そんなこといってほんとは…
GM まぁ、何もしないなら、少し時間を飛ばします。
はい。
では、その場所に白狐郎達が帰ってきます。
青藍さんと。
一応、白狐郎が青藍の手を掴んではいますが。
その程度の束縛。
ほほう?
GM 青藍「おや、“Light”、“Shower”。こんなところに」
青藍「この通り、捕まってしまいました。情けない限りで御座います」
首を傾げるようにして、美しく彼は言います。
「お疲れ様です」
GM 「って言いますか、その呼び名は」
と、戸惑った様子の充。
さて、白狐郎らが洗脳されてないか調べようかな。
いや、それともこっちを巻き込むつもりなのか?
GM 白狐郎「秋土さんから、話は聞いた」
白狐郎「お前達も、その『組織』の一員だそうだが」
近くに、すとん、と座ります。
生美「……」
「なるほど。で、俺たちに何を喋ってもらいたいんです?」
GM 白狐郎「いや、喋りたくなかったら喋らなくていい」
白狐郎「どうしようか、と思っていてな」
「そりゃご寛大なことで」
頭の後ろで手を組み、地面にごろんと寝転がったままの体勢で答える。
片手には文庫本があり、ページはその持ち手だけ器用にめくる。
GM 青藍「“仮初(Area of Fake)”を下されば、それでよろしいのです」
白狐郎「だから、それは俺達にも必要なものだ」
「えーっと。青藍さんがどこまで話したか聞いてもいいですか」
GM 青藍「はい。ほぼ全てお話いたしました」
青藍「こっそり“仮初”を回収できればそれで良かったのですが、やはり無理が在りまして」
青藍「私は彼らを」
と、白狐郎達を見て。
青藍「正面切って敵に回せるとは思っておりません」
青藍「“Light”達の協力を得られなかった時点で、ほとんど身動きが取れない状況だったのです」
「他に連れてきた仲間は今、どこに? あなたは直接戦闘より、間接支援の方が得意なはずだ。一人でここまで来られたとは考えにくい」
GM 青藍「ああ、その件で御座いますか」
青藍「全滅いたしました」
青藍「だから、行きに使ったルートは使えないと申したでしょう」
白狐郎「ここにたどり着いた時は、命からがらにしか見えなかったな」
青藍「ええ」
青藍「だから、“Light”。貴方方が頼みの綱だったのです。一人で出来ることは致しましたが、何やら子供達にも怖がられ、良からぬ噂も立っているようで御座いますし」
「となると、列車に細工をしたのはあなたですか?」
GM 青藍「先ほども問われましたが、ここに着いて以来、梔子駅へは向かっておりません」
青藍「叢雲寺に“仮初”が在ることは確実でしたので」
生美「あれは別の誰か、あるいは何かの仕業だと言い張るんですね」
青藍「言い張るも何も、それ以外には御座いません」
「じゃあ質問を変えましょう。あなたは列車に細工がされることを、知っていましたか?」
GM 青藍「はい?」
青藍「いいえ」
さらり、と青藍は答えます。
と、ここで使う機会のない《インスピレーション》を使おうか、と思ったら。(笑)
先に答えられた。(笑)
GM 使いたければどうぞ。
「んー? んー…」と、文庫本で顔を覆って、しばらく考え込んで。
「…まあ、青藍さんがどう関わっていたかは些細な問題なのか」と、一人で呟く。
重要なのは、“青藍さん以外の、何らかの敵対的な意思を持った人間が潜んでいる可能性”なのだから。
GM 青藍「経典を調べていたのは、その形で“仮初”が保管されていると思ったからで御座います」
「え、レネゲイドクリスタル、ですよね」
青藍「ええ。でも、子供達は『まもりがみ』と言ってましたので。葛西白狐郎から聞いた、と」
白狐郎「ああ。言った」
青藍「寺院で『かみ』なのですから、『神』ではなく、『紙』ではないかと」
白狐郎「駄洒落だけどな」
糸緒 言葉遊び?!
GM だから常にひらがなで言ってたんです。
「…よく思いつきますね、そんなこと」
GM 青藍「“仮初”は特殊なクリスタルと聞いておりましたから」
奇縁「拙僧がそれを受け取った時には、墨の形だったのだけどね」
「墨? へええ…」あの、固形の墨か?
GM 奇縁「磨って、紙に記す形で保管したんだよ。寺に置ける形として」
はい。
水に溶かして使うんだよな。うわー。すげぇ。
GM 生美「うーん、そのUGNってのは、昔からあったんですよね」
青藍「ええ」
生美「街がこうなるのは……」
青藍「対処しきれませんでした」
生美「和尚は、そのUGNの人なんですか?」
奇縁「厳密にはそうではない、が……」
青藍「“裁かぬ秩序(golden mean)”と言えば、『中立』の立場を貫く孤高の研究者でした」
青藍「それゆえ、“仮初”を預けられた」
奇縁「うむ」
奇縁「そもそもは、あれはとある町の……抗争の原因となった、レネゲイドエッグと呼ばれるものを基にしていて……」
白狐郎「そのあたりはいい」
白狐郎が話を終わらせます。
白狐郎「問題は、『それ』をどうするか、そして、『それ』が今どこに在るか、だな」
生美「今騒ぐと、メンバーが不安になるからめったなことは言えないけれど……、あそこに、なかったんだよね」
青藍「あそこに保管してあったので御座いますね」
奇縁「ああ」
白狐郎「そうだ」
「しかし、無くなってた、と」
GM 「……大事件じゃありませんか、ひょっとして?」
白狐郎「そうだな」
生美「そうだよね」
青藍「そうで御座いますね」
奇縁「うむ」
全員が頷きます。
まったく焦らずに…「しかし、寺の汚染浄化機能は消えていない。つまり…レネゲイドクリスタルとは、縁が無かったんでしょうね」
「あきらめたらどうですか。なるようになりますよ」
GM 奇縁「いやいや。つまり、寺からは持ち出されていない、ということだろう」
青藍「つまり私があそこへ向かう前に、既に誰かが回収していた、と」
白狐郎「そして、持ち出した者はまだ寺の中にいる、と」
生美「そういう状況、か」
…なるほど?
白狐郎が知っていたのは、儚恵がクリスタルを持っていることじゃなく、クリスタルが寺にあることだったわけか。
もしくは、儚恵のことを知っていて隠しているか。
GM 白狐郎「唸っていても仕方が無い。彼女に確認をとろう」
青藍「彼女、で御座いますか?」
奇縁「そうだね。なるべくは……彼女に意識はさせたくなかったが」
「俺たちがいる前で、堂々としたもんだ。下手をしたら流血沙汰になるかもしれないってのに」
GM 白狐郎「流血沙汰ね。別に、君は力づくででもそれを奪いたいと言ってるわけではないんだろ」
青藍「私は、勝算があれば奪おうとは思いますが」
「青藍さんには言ったんですけど、俺はUGNのやり方なら確実に助かると確信はできないので」
GM 白狐郎「そんな確信、俺達にもないぞ」
「ええ。それゆえに、先んじてクリスタルを確保していたあなた達の意見を積極的に排除する気にならないだけです」
GM 白狐郎「確保もしていない」
「しかし、現にクリスタルはこの寺にある」
GM 白狐郎「そうだな。彼女がここに留まりたいと思っていたからだ」
青藍「ですから、彼女とは?」
白狐郎「そこの新垣君なら知っている」
「さあ? 何の話だか」と、とぼける。
「もっとも、知ってても言いたくはないでしょうけれど。ここにいる人は、ほとんど皆、カガヤキ倶楽部に愛着があるみたいですからね」
「UGNのモルモットになるくらいなら、銀河鉄道に乗りたがるでしょう」
GM 儚恵「……、私、です」
と、儚恵さんが手を上げます。
「……」さも初耳だ、というような驚いた顔を作る。
GM 青藍「……、特殊、とは」
奇縁「……モルフェウスの複製能力を重点的に高めたクリスタルでね」
(なるほど。それであの修復能力、というわけか)
GM 奇縁「ただ、研究の過程で――クリスタル自体に、あらゆる応用力を含めて、複製能力を持たせるためには」
奇縁「『人格』が欠かせないと言う結果が導き出された」
「人間の意識が“物”を定義する、というわけですか」
GM 奇縁「ああ、そうだ」
木を切って、椅子を作った。その椅子が壊れた時、修復能力を使ったら、壊れた椅子は直って椅子になるのか? それとも木まで戻るのか?
それを決めるのは人間の持つ概念だ。
GM そういうこと。理解が早くて助かります。
ファジィな判断力が必要なわけですね。
GMもよく考えるよ、こんなこと。
GM 奇縁「コントロールの効かないモルフェウスの結晶化が、街一つを消失させた、という前例があってね」
奇縁「疑似人格を、組み込むことになった」
儚恵「それが……私、です……」
ルール的には
《生霊化》と《砂人形》です。
修復は《マシンモーフィング》。
つまり、目の前に見える儚恵さんは、
レネゲイドクリスタルの生んだ《砂人形》です。
げげぇ!? ルールがあった
こほん、
ともあれ。
「レネゲイドクリスタルに宿る人格、ですか」
「どこまで人権を適用するべきですかね」苦笑いを浮かべながら、冗談めかして言う。
GM 儚恵「で、でも、わ、私は……」
奇縁「彼女は、人として扱ってもらいたがった」
奇縁「だから、私の権限で、UGNやFHから持ち出したのだよ」
奇縁「そして、カガヤキ倶楽部への協力も、彼女が望んだことだ」
「なるほど」
GM 白狐郎「……」
儚恵「白狐郎さんに……人として扱ってもらえたのが、凄く嬉しくて……」
儚恵「でも、私……」
儚恵さんはそこで非常につらそうな顔をします。
白狐郎「……教えてくれないか、……、誰が持ち出したんだ?」
儚恵「それは……そ、れは……」
顔を伏せて、苦しそうに。
生美がその背を優しく撫でます。
儚恵「…………、……」
悲しそうに言います。
儚恵「……、四季奏、是色さんです……」
「えぇー…?」
「…何考えてんだ。あいつ。マジで」死ぬほど不機嫌そうな感じで。
GM と。
その時。
 
き――
 ぃぃん
 
 
―――――――― バリン。
 
 
 
砕けるような音とともに、寺を覆っていた結界が――
 
――崩れました。





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