第二棺

思い出の深い町の埋没the Expansion of monochrome

Middle Phase 5
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM マスターシーンを流します。



◆元日告高等学校二年生:七宝玻璃・七宝瑠璃
 
「せーんせい、詰まらない授業お疲れ様」
「せーんせい、面白くない人生お疲れ様」
 ガタ崩れた教室の中、クラスメイトの死体達。
 動かなくなった先生、突き刺さった私達の刃。
 曇った日差しが差し込んでいる。
「あはっ、あはあはあは、瑠璃っち、私面白い」
「ぷっ、ふっふふ、駄目だよ玻璃っち、不謹慎」
 日常が一気に消し飛んじゃって、おかしくって、
 同じ顔をした二人、いつもみたいに笑いあった。
 
 私達は実は双子じゃない。
 一歳違いの姉妹だ。
 けれども同じ学年。
 高校一年の時、玻璃は瑠璃をかばって車に轢かれた。
 回復に時間がかかり。
 学校の授業に遅れて。
 クラスに顔を出せず。
 玻璃は留年したんだ。
「瑠璃っち、あのね。怪我をするのは痛いよ」
「うん、お姉ちゃん。怪我を見るのも痛いよ」
「一人でいるのは、苦しいし、怖いよ」
「一人にさせるの、苦しいし、怖いね」
「痛いのも、怖いのも、面白くない」
「面白くないことは詰まらないよね」
 二人は頷き合って、小さな嘘をつき続けることにした。
 双子でいるのは面白い。
 嘘をつくのは、楽しい。
 それでいい。
 嫌なことなど忘れよう。
 気持ちよさを認めよう。
 面白いことだけ、楽しいことだけやって生きていこう。
 痛いも苦しいも怖いも、詰まらないことは願い下げだ。
 
「しーおちゃんは、だーいじょうぶかなー?」
「あれー、玻璃っち、しーんぱいしてるの?」
「うーうん。でも、残念ではあるかもー」
「何それ何それ。見送っちゃったこと?」
「ちっがうよー。私達は後悔しない」
「後悔してもー、面白くないもんね」
 玻璃と瑠璃は頷き合う。
「ただ、香華院さんのために化け物を連れて来たの」
「あー、私達折角頑張ったのに、言ってなかったね」
「教えてあげてたら、もっと楽しかったかな」
「そーうだねぇ。もっと面白かったかもだね」
 滑稽に壊れる街や人を思い浮かべておかしくて。
 
 同じ顔をした二人、いつもみたいに笑いあった。




◆元サラリーマン:飛鳥蜘蛛丸
 
 僕の名前は、蜘蛛丸と言う。
 人から忌み嫌われがちな、「蜘蛛」の名前だ。
 名前を馬鹿にされながら、僕は育った。
 いつでも何処かで、くすくす笑いが聞こえる。
 きっと僕を、笑っている。
 
 こんな逸話があるらしい。
 一匹の蜘蛛が、巣を作った。
 完成して間もなく、
 その巣は何でもない原因で壊されてしまう。
 風だとか、石ころがぶつかったとか。
 しかし、蜘蛛はまた巣を作る。
 そして、また巣は壊れてしまう。
 蜘蛛は諦めない。何度でも、巣を作る。
 それを見て喚起された若者が――――
 あとは余談だ。
 
 僕の名前は、そういう意図が込められてるらしい。
 何度でも諦めずに頑張れと。
 誇りには思うが、実際そんな風には生きてられなかった。
 何度でも諦め、何度でも挫折し、何度でも妥協しながら、
 たくさんの嘲笑いを受けながら、這いつくばってきた。
 ただのサラリーマン。
 うだつの上がらない男。
 どれをとっても人並み以下の、数合わせ。
 価値なんてない。
 無価値だ。
 
 果たして、僕を無価値にした世界は崩壊した。
 色々な人が死んで、それはとても悲しいけれど、
 やっと、僕にもやれることが出来た。
 名前の通り、蜘蛛は僕を味方してくれる。
 そしてこの力を頼りにしてくれる人達がいる。
 やっと、僕は、生きていてもいいのかと、思えた。
 …………でも、
 本当は知っているんだ。
 僕を嘲笑ってた奴らと、今頼りにしてくれる人達。
 その間に、差なんてないってことを。
 いつかまた、僕は捨てられ、嘲笑われる。
 けれどまた、僕は諦め挫折し、妥協する。
 
 …………自分の意志を示して、
 僕達から離れて行った女の子を、ふっと思い出す。
 僕もああなれたなら、蜘蛛丸の名前を誇りに思えたかな。
 あの子に、守り神がついてたらいい。
 ……おっと……、急がないと。
 居場所に逃げられてしまう。
 くすくすと口に出して、諦めながら僕は生きる。




糸緒 うう。飛鳥さん……(おろおろ
飛鳥さんの無事を祈ってます。
結花 にしても、NPCはみんな大人だなぁ…
糸緒 おねーさんたちは……私がいうのもどうかと思うけど……子供だと、思う……な
結花 ある意味、大人じゃない? 達観したというか…
糸緒 面白いから、人が嫌がることでも、ショックを受けることでも楽しいからやる、っていうのは……達観じゃないと思うの。
人間的な子供→大人の路線からは外れてると思うがな、俺は。
笑うしかない状況っていうか…
糸緒 うーん……
GM ま、玻璃も、身を呈して妹を助けたころなら、相手を想いやることを知ってたはずなんですけれどね。
糸緒 まあ、世界が狂っちゃったから、それに染まっちゃうのが一番簡単なのは、そうなんだろうなって思うけど
GM さて置き。
よろしければ始めますよ。
糸緒 はい。大丈夫です。
はいよっと
GM 尚君のシーンですが、登場するキャラクターを選んで下さい。
前のシーンの続きです。
尚君と結花さんが登場。
後ろに下がってて欲しいならそれを認めます。
まあ、現時点、俺が登場してて貰いたいのは是色だけだ。
ああ、あと泰平な。
GM その場を完全に離脱しなきゃ、勝手に出てきます。(笑)
結花 結花は自動でついてきますが。
GM そうですか。
じゃ、登場侵食をどうぞ。
汚染レベル2
あいよ。
ダイス 8R+2 = [7,3,7,6,8,2,10,1][9]<クリティカル>+2 = 21
1D10+59 = [1]+59 = 60
よしよし。
今日は調子がいいぞー。
結花 結花さん
ダイス 7R+4@10 = [8,2,6,8,4,5,9]+4 = 13
1D10+58 = [4]+58 = 62
結花 おし! ダイスボーナス+1! 嬉しくない!
GM ま、いいか。
さて、では。
可愛子と泰平が対峙してるところです。


結花 結花と尚くんと四季先輩との位置関係は?
GM まぁ、可愛子から3メートルのところに観客、そこから5メートルで泰平。
その後ろに尚君達という感じですかね。
距離は任せますし、NPCの戦闘を見ててもあれでしょうから、参加しなければ飛ばします。
結花 もちろん首をつっこみますよー。
GM どうぞ。
結花 つっこもうとしますよ。誰も止めなければ。
俺は是色に《カームダウン》使ってもらうだけ。
何も要望がなければ、そのまま待機。
結花 「尚くん……。笑窪ちゃんのこととか、艶髪ちゃんのこととか、いろいろあって、わたし忘れてたんだ」
と、話しかけてみよう
GM はい。
結花 「あの人にもさっき言ったけど、ちゃんと話せばみんな伝わる! みんな分かり合える!」
GM 是色「……」
結花 「こんなときにあんなことしてちゃ、危ないよ! 早く止めないと!」
と言って、尚くんの返答を待ってみよう。ちょっと待って、なにも返答がなかったら彼らの中にツッコむ。
なら、その質問には答えず、その場に立ったまま、横目で結花を見つつ、是色に話しかけよう。
結花 じゃあ、その態度に
「もう!」
と言って飛び出そう
GM 泰平「オラァ!」
泰平が殴り込みに足を踏み込んでるところです。
結花 じゃあ、なんとかその前に立って、とおせんぼしたい。
「せっかちだなぁ…」苦い顔をして、結花の背中を見やりつつ「なあ是色、頼みたいことがあるんだけど」
GM 是色「ん?」
「改悟とやりあった時に使ってたエフェクト…《カームダウン》。あれ、もう一回使ってくんねぇ? 今、ここで」
GM 是色「君の頼みならしょうがないなぁ」
是色「って言ってみたり」
頷いて、請け負います。
頼んでおいてなんだけど、思わず吹き出して言い返す。
「何様!」
GM 是色「神様」
それでは、戦闘開始、かな。
イニシアティブ一番早いの是色なんですよね。
とりあえず、距離を出す前に。
是色の髪の色が揺らぎ、根元から外側へ流れるように、カラフルに変わっていきます。
是色「皆様お静かに」
《カームダウン》
泰平「!?」
ざぁっと……静寂が広がっていきます。
喧噪をかき消すように。
みなさま、全ての判定にダイスペナルティ8個です。
※是色の《カームダウン》は特殊で1シーン有効。
ふふふ…。これだけダイスペナルティがかかっちゃ、ダメージも大して出せないだろう。
「生き方で悩んだり、ぶつかったり。若くていいねぇ。…だが」
「子供のケンカに凶器はいらない」
泰平たちの乱闘を見つめつつ、背中側で手を組みながら、傲岸不遜に言い放つ。
GM 観客A「な、なんだ?」
泰平「ち……っ、あの女か」
横目で是色を見やって。
視線を前に戻します。
泰平「――関係ねぇ!」
まあそれはそれとして是色に礼を言っておこう。「悪い、また世話になった」
GM 是色「それは言わない約束でしょ」
にへらっと笑います。
泰平、イニシアティブ8、可愛子12、観客トループ扱いです。
というわけで、可愛子から。
結花 可愛子さん、早い!?
オルハヌの真骨頂
GM 可愛子「や……こ、来ないで!」
悲鳴をあげます。
《サイレンの魔女》《さらなる波》
ダイス 1R+3@11 = [6]+3 = 9
GM 達成値9ですね。
対象は、飛び込んだ結花さんと泰平君。
結花 泰平さんは別エンゲージだからかばえないんだよなぁ…
GM 結花さんは観客と泰平の間かな。
観客―結花―泰平
おっと、間に入り込んだか。
GM 《炎神の怒り》《ブレインコントロール》で、クリティカルができる。
ダイス 1R+2@8 = [7]+2 = 9
GM 回避か。
糸緒 おしい
結花 結花さん回避。
ダイス 1R+3@10 = [1]<ファンブル>+3 = 3
GM 命中。
あう。
糸緒 (視線をそらす
結花 さすがは結花さん! 背中向けてたから!
ダイス 1D10-1 = [5]-1 = 4
GM 装甲無視、4点ダメージ。
結花 残りHP1!
ドクドクと血を流して、瀕死状態です。
GM 可愛子「――! 声が!?」
泰平「体が鈍いな……こいつは昼前以下じゃねぇの、カッ」
で、結花さんの番。
結花 GM、メジャーで可愛子さんに説得を試みたい!
最終奥義《説得》
GM 説得?
ん、どうぞ。
結花 「可愛子さん…。いま、自分の力に驚いてたよね?」
GM 可愛子「な、何が? 今は、声が出なくて驚いて……」
結花 「いまのは、力なんだよ。可愛子さんの、力」
「可愛子さんの声で、こんなふうに誰かを傷つけることができるように、いまこの街はなっちゃたんだ」
GM 可愛子「……、知らない!」
結花 「可愛子さんだけじゃなくって、みんな、みんな、変な力に目覚めちゃったんだ」
GM 可愛子「知らない知らない……そんなの知らない!。>_<。」
結花 「聞いて!」
GM 可愛子「可愛子のせいじゃないもん!」
結花 「可愛子さんの歌、わたし好きだよ! 大好き!」
「本当に歌うことが大好きで、楽しんで歌ってるって、わたしそう感じたもん」
GM 可愛子「……」
結花 「だから、わたしは可愛子ちゃんに、ちゃんと夢を追っててほしいの! 歌っててほしいの!」
「だから、聞いて!」
GM 可愛子「じゃ、じゃあ……」
可愛子「じゃあ、可愛子の歌を聞いてくれるんだ……」
結花 「でも、いま、この街には、そんなふうな変な力を持った人がいっぱいになっちゃったんだ。しかも、理性を失っちゃて化物みたいになっちゃた人もいる。危ないんだよ」
「だから、一緒に逃げよう。可愛子ちゃんには楽しく歌ってて欲しいから、こんな危ないところから協力して出ようよ!」
GM 可愛子「それは知らない」
結花 「お願い!」
GM 可愛子「?」
可愛子「貴方は一体何がしたいの?」
可愛子「可愛子の歌を聞きたいの? そうじゃないの?」
きょとん、と首を傾げます。
結花 「可愛子さんと、一緒に、この街から出たい。もっといっぱいの人が、可愛子ちゃんの歌を聞いてくれるように」
GM まぁ、ダイス振って下さい。
結花 はい。
ダイス 1R@10 = [9] = 9
GM 対抗判定。
ダイス 1R+2@11 = [1]<ファンブル>+2 = 2
GM う。
あうち。
GM 可愛子「……」

可愛子「そっか、ここで歌ってても仕方ないもんね」

可愛子「もっと多くの人に聞いてもらえるところへ行かなくちゃ。^−^」
動揺する観客たち。
GM 観客「「か、可愛子ちゃん……」」
可愛子「みんな、可愛子行くね」
観客「「そんな、じゃ……お、俺達は?」」
可愛子は舞台から降ります。舞台と言っても、段の上に乗ってただけですが。
オルクス効果で少し綺麗な印象を受けるようにはなってました。
結花 「みんなで一緒に行こうよ!」
GM 可愛子「そっかぁ。そうすればいいね!^▽^」
可愛子「みんなも一緒に行こうよ」
観客「「い、一緒に……?」」
結花 「みんなも、もっといっぱいの人に可愛子ちゃんのこんなに頑張ってるところ知ってもらいたいよね? だから、一緒に行こう!」
GM 観客A「いいのか……?」
観客B「まぁ……かぁい子ちゃんがそう言うなら……」
観客C「だなぁ……」
ざわつく観客達です。
遠くからその様子を眺めながら「…マジかよ」
「見直したっていうか、呆れたっていうか…」
GM 是色「なんか、形容しがたい事態になってるけど、大丈夫かな?」
「まあいいんじゃねぇ? 全員生き残れると決まったわけでもないし…」
GM 是色が肩をすくめてます。
是色「そっちじゃないんだけどね」
泰平の方を見ます。

泰平「……」

可愛子「それじゃみんな、駅に行こー!^−^」

結花 「そこの人も」
と言って、泰平のほうを振り向いてみよう。
「可愛子ちゃんに気に入らないことがあるのはわかるけど、だからって可愛子ちゃんに死んでほしいわけじゃないんでしょ?」
「だったら、こんな危ないときに喧嘩なんてしないで、もっと安全なところで……」
GM 泰平「――カッ」
顔をしかめてましたが。
肩の力を抜いて、笑います。
泰平「アンタさ」
結花の方を見て、言います。
泰平「アンタ、すげぇな」
結花 じゃあ、その言葉にわけがわからないというように首をすくめよう
「えーと…、なにが凄いのか、わからないんだけど……。とにかく、喧嘩はもっと安全なときに、ね!」
GM 泰平「本当にスゲェ。マジスゲェ」
つかつか、と近づいてきて、言います。
泰平「俺はこんなにムカついたのは初めてだ」
泰平「マジスゲェよ、俺をここまでイラつかせるとはな」
ひくひくっと笑いながら言います。
結花 「え、えーと…、お兄さん……?」
ちょっと、怖がりながら後ずさろう。
GM 泰平「なんだ、アンタは詐欺師かなんかか?」
泰平「人を陥れて楽しいのか?」
結花 「え?」
GM 泰平「ああ? 他人の大切なものを踏みにじって楽しいのかって聞いてんだよ!」
がっ、と、結花の胸倉をつかみます。
可愛子「た、泰平君!?」
結花 じゃあ、その行動にわけがわからずおろおろしていよう。
GM 泰平「こいつが、楽しそうに歌ってる?」
可愛子の方を見て。
泰平「アンタ、本気で言ってるのか?」
結花 「だって、さっきまで舞台でみんなに向かって、あんなに楽しそうに歌ってたじゃない」
GM 可愛子「か、可愛子、た、楽しんで歌って……」
泰平「だから!!」
泰平「本当に歌うのが楽しいって奴が!」
泰平「こんな状況で、馬鹿みたいにコンサートするかって言ってるんだよ!」
泰平「目ぇそむけるのに必死になってるだけだろうが! 歌うことに縋りついてるだけだろうが!」
結花 「そんなの、わかんないじゃない!」
「それに、こんな状況なんだよ。ちょっと弱気になっちゃうことだって、みんなあるに決まってるよ!」
GM 泰平「他人の弱気を肯定してんじゃねぇ!」
泰平「そんなことしたら、周りを駄目にしてくだけだろうが!」
結花 「それじゃあ、少しでも弱気になったらダメなの? 街がこんなになっちゃったときでも!」
GM 泰平「しかたがねぇって、弱気を振りかざしてるところが気にくわねぇんだよ!」
ぐぐっと拳を固めてから。
ゆっくり、と、それを広げます。
結花 「いつでも…、いつでも強くいられる人間なんていないよ」
「だから…だからこそ、人は夢に向かって頑張るんだよ。挫折しても、諦めかけても…」
「それでも、夢に向かって頑張れるんだよ!」
GM 泰平「……クソッ……」
泰平「アンタは卑怯だ」
泰平「せめて、自分の卑怯さくらい知ってろ。俺が言うのは、それだけだ」
結花の胸倉から手をはなして、離れます。
かつかつと靴音を響かせながら近づき、20人くらいの観客の、人垣の後ろから声をかける。
「もういいのか? 昼ドラは」
「まあ、産方さんが現実逃避してたかって言ったら、してたと思うけどな。…泰平、お前はキレイ好き過ぎるんだよ」
「ちなみに早乙女さんはキレイ過ぎ」
と、独り言のように呟く。
結花 「………?」
GM 泰平「…………」
可愛子「えっと……、終ったのかなっ?^−^;」
おろおろっとしながら、可愛子が聞いてきます。
泰平は、押し黙ってます。
「まあいいけど…。用が済んだなら、さっさと行こうぜ。あれだけ騒いだんだ、いつ何が来るかわかったもんじゃない」
結花 「そ、そうだよね。早くしないと、怖い人たちがきちゃうかもしれないし…」
GM 可愛子「ファンが増えるのならうれしいなー」
「増えるどころか、減るばっかりだと思うけどな」ぼそっと。
GM 泰平「……カッ」
泰平「俺は別行動するわ」
泰平「道中どうも。ありがとな」
と、尚に。
「そうか。じゃあ元気で」
挨拶でもするように、一切ためらわず、言う。
「何かあったら秋土劇場に来い。俺の仲間で、無事な奴が溜まってるかもしれない」
結花 「…尚くん!?」
「……一緒に行こうよ。ここで別れたせいで、おにいさんが死んだりしたら、わたし悲しいよ」
GM 鏡蔵「泰平……」
泰平「カッ。じーちゃんも達者でな」
鏡蔵「……ほうかの。元気でやれよ」
泰平「サンキュ」
拳をがしっと鏡蔵と合わせてから、背を向けて歩いて行っちゃいます。
結花 「………そんな」
ちょっと、絶句しよう。
GM 可愛子「泰平君……」
可愛子「何か嫌なこと、あったのかな……? ・〜・」
結花 「待ってよ! お兄さん! みんなで一緒に行こうよ!」
と、その背中に声をかけよう
GM 無視。
結花 「ひとりじゃ、危ないよ!」
GM 無視。
是色「早乙女さん、凄いねー」
是色「さっきのことが在ったのに、そうやって声をかけられるんだ」
結花 「四季先輩……」
「だって、ひとりじゃ危ないよ! 喧嘩なんかしないで、みんなで助けあわなきゃ!」
「なのに…、なのに……」
GM 是色「それは正論だけど、それを押し付けるのは支配じゃないかな」
くすりっ、と笑って、是色はそう言います。
結花 「………え?」
俺はまだ知らないけど、歯車がやってた事とかか。
糸緒 新興宗教になりかねませんもんね
(結花に)「君が言うことは正しすぎるんだ。だから、君と違う意見を持ってる奴は、自分が悪者になったような気分にさせられるのさ」
結花 「…………」
何も言えずに考え込もうとします
「まあ、本当に理想論だけで全部済むなら、テロも戦争も起こらないんじゃないか。60億人が脳みそフル回転させて、今の世の中があるんだし」
「別に、それならそれで勝手にやってろって感じだけどな」
GM 可愛子「何だかスケール大きいね。・O・;;」
結花 「でも…、せっかく知り合えたのに……」


――


    ずぐしゃっ


GM と、後ろで嫌な音が聞こえます。
糸緒 ひぃ
結花 「――――っ!?」
急いで、音のほうに向かおう。そして、みんなを守るように前に出たい。
GM 観客A「ひ、ひいぃ!」

観客B「な、なんだあれ……!」

化け物「しゅぅううしゅうぅううしゅうぅぅう」
(そっちの方を向いて)「来たか…。思ったより早かったな」
「このとおり、現実はどこにでもある。逃げたっていつかは追いつかれる、ってわけだ」暗く沈んだ目で。
GM 化け物「な゛、な゛んにも、な゛ぐなっでし゛まっだ……」
さっき、泰平が進んだ方向から、
大きな化け物が出てきます。
何人かが絡まりあったかのような肉体。
糸緒 はうっ
お、お兄さん……
…。
死んだか?
結花 「あ、あのお兄さんは………」
ちょっと、絶句しながら言おう。
GM ずるずると何かを引きずってます。
可愛子「……た、泰平君?」

ぶんっ!
 
  ぐちゃあっ!


結花 なんとかキャッチしようとはするかなー…
GM いえ、地面に。
泰平の面影が在ったそれを、そいつはさらに叩きつぶします。
糸緒 《リザレクト》……して……ます?
GM いえ。
してません。
死亡状態。
糸緒 ですよねぇ……
結花 「……そんな」
「…あばよ、泰平」
結花 「許さない………」
GM 化け物「な゛、な゛んに゛も、な゛ぐなれ……」

化け物「しゅぅううぅうぅ、しゅぅうううぅぅぅう」

観客C「う、うわ、うわぁ、に、逃げ……」

観客A「逃げろぉお!」

観客「「わああああぁああっ!」」
観客達が叫び声をあげながら、思い思いの方向に散っていきます。

可愛子「あ、ああ、ああああ」
目がそらせない。
あんなに目をそらしてたのに。

可愛子「ああ、た、た、泰平……くん」
潰れた、彼の顔から目が離せない。
結花 残ってる人たちはいる? 腰を抜かした人とか
いや、いるなら、同じエンゲージに行ってカバーにまわろうかと
とくに可愛子ちゃんとかの
GM いません。
まぁ、捕まえたかったら捕まえてもいいですが、役には立ちません。
結花 みんな、逃げたか……
糸緒 所詮は烏合の衆だからね…
人がたくさんいて、現実から目を背けられるから、酔っていただけなんだろうね……
ま、そんなもんだよな。
自分が救われるために歌を聞きに来たのなら、結局のところ、大事なのはまず自分。本気で産方のことを考えてたのは、泰平だけだったってわけだ。
結花 ここに一人いるけどなー…
GM 可愛子「いや、いや、いやぁ」
可愛子「いやああああああああああああああああああああ!!」
叫び声をあげます。
糸緒 ……しょ、衝動判定かなぁ……
GM 《サイレンの魔女》《さらなる波》
糸緒 そっちか
ダイス 1R+3@11 = [1]<ファンブル>+3 = 3
糸緒 わぁ
おし。
GM うわぁ。
結花 じゃあ、その声に気づいて、可愛子さんに近づこうとはする
GM 近づいてもいいですよ。
結花 「可愛子ちゃん!?」
GM 可愛子「いやぁ、泰平君、泰平君……かっ、か、えええ!?」
可愛子「こんなの嘘……な、なんでこんなことになってるの!?」
可愛子「え? ……え? 可愛子歌を歌ってただけなのに……歌を歌ってたら、全部そのままなのに」
可愛子「何も変わらないのに……」
目が、そら、せない。
結花 「可愛子ちゃん、落ち着いて!」
「これが…、これが現実なんだよ。だから…、だから……」
GM 目を見開いて、涙を流してます。
可愛子「いやぁああ!」
駆けだします。
結花 「可愛子ちゃん!」
GM 可愛子「いやぁ、止めないでぇ!」
止めたければ運動対決。
ダイス 1R+1@11 = [7]+1 = 8
結花 おーし。1Dだけどな
誰かが支援くれれば増えるけど。
あー、くそ、PC的に止められねぇ。
結花 最良の選択肢は《獣化》《電光石火》なんだが
ここで《電光石火》使うと、死んじゃってますます可愛子さんの精神衛生上よくなさそうで迷う…
糸緒 どっちにしても
精神衛生上とてもよろしくないと思います。
が、素ふりでいいんじゃないかなぁ
8なら超えられるよ。多分
まあ、できることはやっとくか。
GM、結花に《妖精の手》を使う余裕はある?
GM はい? 難しいです。
おっと。
すまん、自力でなんとかしてくれ。
糸緒 諦めて天に任せるしかないんじゃないかな
なぜばなる
結花 おーし。やっちゃうぞー
糸緒 頑張って〜
結花 《獣化》とか《電光石火》はするとマズそうなんだよなぁ…
素で行くか
ダイス 1R+2@11 = [7]+2 = 9
GM ち。
糸緒 ほら、でたでたw
結花 おし、ダイビングキャッチ!
GJ
君マジすげーわ。w
GM 可愛子「放して! 放してぇ! いやぁあ!」
結花 「可愛子ちゃん、ダメ! 一人じゃ危ないよ!」
GM 可愛子「五月蝿い! 五月蝿い、泰平君が死んじゃう!」
可愛子「放して、放して!」
「……」喉まで出てきた“そいつはもう死んでる”って言葉を飲み込む。
結花 なんとかなだめようと頑張ろう。
「落ち着いて! とにかく落ち着かないと、助けられるものも助けられないよ!」
GM 化け物「ふしゅるるる、ふ、しゅるる、しゅるるる」
ずん、ずん、と、化け物が近づいてきます。
可愛子「嘘! 嘘……! 嘘!」
可愛子「嘘だ、もう、泰平君……助からない……」
はらはらと泣き始めます。
結花 「可愛子ちゃんは、みんなは、わたしが守るから…。だから……」
結花も泣きながら言おう。
GM 可愛子「嘘吐き……貴方は嘘吐きだ、近寄らないで!」
結花 「やだ! 可愛子ちゃんまでああなっちゃたら、わたし悲しいよ!」
GM 可愛子「さっきもそう! 可愛子の歌が上手なんて嘘! 泰平君は、泰平君は……厳しくても」

可愛子「縋りたくなるような嘘だけは吐かなかった!」

結花 「そんなことない! 可愛子ちゃんの歌、一生懸命だった、ちゃんと、楽しそうだった!」
GM 可愛子「嘘吐き! 嘘吐き! 楽しくないもん! うぁ、うああああああ」
可愛子は泣きじゃくります。
結花 「……………」
「たしかに、私は歌のことなんてわかんないよ。でも、ああやってみんなを元気づけてる可愛子ちゃんを見て、凄いって思ったんだ」
「だから、わたしは可愛子ちゃんを死なせたくない。誰も、死なせたくない」
GM 可愛子「もう、いらないいらない。いらない。綺麗事なんていらないいらない」
結花 「嘘付きでも、いいよ…。でも、わたしは可愛子ちゃんを死なせたくない!」
GM 化け物「ふしゅるるる……な゛な゛、な゛」
化け物「な゛――」


ぶんっ!!


腕をふるってきます!
《大蛇の尾》《巨神の斧》《因果歪曲》《魔王の理》
範囲攻撃です。
是色たち全員範囲でいい?
そういや聞いてなかったけど、俺たち全員同一エンゲージなのか?
GM 適当な理由がなければそう。
ち。油断した。さっさと逃げるもんだと思ってて、離れる宣言してなかったしな。しょうがない。
俺はそれでいい。
結花 カバーリングできるなら、したいなぁ…
可愛子ちゃんをカバーできない? どうせ、あと1点だから
GM 良いですよ。
では、ダイス行きまーす。
ダイス 7R+8@7 = [8,10,4,8,4,7,4][6,1,9,4][3]<クリティカル>+8 = 31
GM ぐぅん。
バロールのくせにダイスが多い、って言いたいところだが、キュマイラ入ってたらこんなもんか。
《カームダウン》つきでもけっこう行くなー
結花 Takasi_10
ダイス 1R = [3] = 3
まあ無理。
GM 是色が《ミラーコート》《全知の欠片》
ダイス 7R+8@7 = [9,8,6,5,1,4,4][7,6][8][4]<クリティカル>+8 = 42
GM ひょい。
結花 さすが四季先輩!
GM 鏡蔵は自動命中。
おい、鏡蔵いつシーンに出てきた。
GM さっき。
いや、確かにしゃべってたけどw
結花 出てましたねぇ…‥
GM 管理下NPCじゃないので言うことは効きません。
なるほど。
ダイス 26+4D10 = 26+[5,2,6,9] = 48
GM 装甲有効。
どぐしゃあ。
はいはい《リザレクト》。
ダイス 1D10 = [1] = 1
GM 鏡蔵《リザレクト》。
ダイス 1D10 = [8] = 8
結花 《リザレクト》ー
ダイス 1D10+62 = [6]+62 = 68
あ、GM。
GM はい?
今の戦闘、厳密に戦闘ラウンドとして進行してないってことでいい?
そうなら、後ろに向かって全力疾走することで戦闘を離脱できるかどうか聞きたい。
GM 逃走判定はして欲しい。
いや、俺ダイス1個なんだけど? どうやって逃げろと。
結花 結花もだね。
たぶん、可愛子さんも
GM 頑張って。(笑)
結花 ……逃げるの、無理っぽそうじゃない?
まあ手段はあるけどな。タイタス切って、セットアップで交渉判定すれば。
俺だと《天性のひらめき》もあるから、そこそこ行くはずだ。
産方は結花が抱えて逃げればなんとかなるだろ。
糸緒 ダイス増やせばなんとかなるはずではあるもんね
おじいちゃんは、どうするつもりかな。
戦う気満々?
GM お爺さん移動して、化け物に接近します。
よろしければ、お爺さんは突っ込んじゃいますよ。
爺さん止めてもいいですよ。
結花 「…お爺さんが!」
結花さんは可愛子ちゃんの相手で精一杯な気がする。
糸緒 おじいさんは見捨てる感じ?
結花 じゃあ、なんとかお爺さんを止めようと
声をかけてみよう
かけるだけ
GM どうぞ。
結花 「お爺さん、ダメ! お爺さんまで死んじゃう!」
…まあ、それだけ。
GM 鏡蔵「ふん。短い間とは言え、泰平は孫みたいな感じが在ったんでの」
鏡蔵「婆さんには悪いが、あいつもどうせ生きとらんだろ」
とんとんっと、杖を握ってたとは思えない軽やかなフットワークをします。
結花 「でも、わたし、もう誰にも死んでほしくない! お爺さんにも!」
「…お爺さん!」
GM 鏡蔵「そいつは我がままって奴だの、お嬢ちゃん」
横目で慈しむように見て。
鏡蔵「諦めないってのは、誰かに諦めさせることでの」
鏡蔵「おいぼれの言葉だが、覚えておいて欲しいもんじゃ」
ほっ、と、前に飛び出て化け物を殴ります。
《コントロールソート》《コンバットシステム》《オウガバトル》《漆黒の拳》
ダイス 1R+3@8 = [8][2]<クリティカル>+3 = 15
GM 化け物回避判定。
ダイス 7R+2 = [2,9,10,2,1,3,10][8,2]<クリティカル>+2 = 20
糸緒 ばろばろ対決だ
GM 鏡蔵「ふん、素早いの」 外します。
結花 「でも…、でも………っ! わたし、やだよ。そんなの、やだよ………」
「お前、産方抱えながら何ゴネてんだ!」
結花 「え…、え……?」
まだ、ちょっとほうけてる感じで、尚くんに一喝いれてもらいたい感じ。
GM 是色「新垣君」
是色「見える?」
指を指した方向を見ると、商店街の影から、
もぞもぞと。
人でない動きをしたジャームが、近寄って来るのが見えます。
是色「こっち来るよ」
おっと。新手か?
(結花に、有無を言わせず)「逃げるぞ。いいな?」
じゃ、セットアップで交渉判定を行って、逃げるぞ。
GM はい。
では、セットアップ。
糸緒 交渉判定だー。頑張ってー
GM 鏡蔵と
是色が
足止め宣言。
あれ、マジで?
結花 残るつもりか…。四季先輩
かっこよすぎる…
GM 是色「僕が足止めしてあげるから、早乙女さんと一緒に逃げてあげてね」
是色「大丈夫、あとで必ず追いつくから」
「…おいおい、これで何個目だよ、借り」
是色の戦闘力の高さについては疑問の余地がないので、心理的な抵抗は少ない。素直に逃がしてもらおう。
GM 是色「そういえば僕、帰ったら結婚するんだ」
是色「ここは任せて先に行けー」
そう言いながら、ひょいひょい、と前に出ます。
糸緒 棒読みすぎるw
「うぜぇ…。…そういや思い出した。お前に貸して貰った欠席中の授業ノート、落書きばっかで読むのすっげー苦労したんだ」頭を抱える
GM 是色「ああ、般若心経書いてあったっけ」
これで、逃走判定に達成値+20補正。
じゃあ交渉判定… するぜ!
タイタス使わなくていいや。
ダイス 1R = [1]<ファンブル> = 0
うぐう
GM ぷ。
糸緒 (涙を拭う
まあダイス目の悪さは健在だよねっていう。
糸緒 DXって本当はこんなファンブルに出会わないゲームのはずなのに……ね
GM さて、では戦闘。
最初は是色。足止めするために、化け物にエンゲージ。
マイナーで《エンジェルステップ》
とんとんとん。
鏡蔵「なんじゃ、嬢ちゃん。手伝ってくれるのかの」
是色「拳、交えた仲だからねー」
鏡蔵「よく言うわ」
行動終了。
鏡蔵が化け物に攻撃。
コンボは一緒。+《急所攻撃》
ダイス 1R+3@7 = [3]+3 = 6
GM 化け物回避判定。
ダイス 7R+2 = [6,3,10,7,3,8,1][6]<クリティカル>+2 = 18
GM 鏡蔵「ち……」
化け物「な゛、な゛、な゛……」
是色「そろそろ、能力限定の効果も切れるから」
で、尚君。
封鎖ではないので、ペナルティは1つ。合わせて9個のダイスペナルティ。達成値に+20の補正。
じゃあ、マイナーでバイクに乗って、逃走判定を試みるか。
GM はい。
判定どうぞ。
こちらも対抗判定を行います。
ダイス 1R+20 = [7]+20 = 27
7R+2 = [8,8,2,2,8,9,3]+2 = 11
GM 成功!
NPC達は先に撤退してます。
「オラオラオラぁ! 道を空けろッ!!」
灯と充が隠れてる方へ走り出す!
GM はいな。
次の行動は結花さんです。
結花 じゃあ、ちょっと呆けた様子ながら、身体が勝手に動く。
可愛子ちゃんを抱えたまま、マイナーで《完全獣化》
《電光石火》も使って、逃走判定します。OKでしょうか?
GM どうぞ。
結花 では
ダイス 2R+22@8 = [1,7]+22 = 29
7R+2 = [4,6,5,3,4,4,5]+2 = 8
GM 成功!
結花 低!
警戒し過ぎて損したかもな……
GM 是色と鏡蔵に夢中だったようです。
まぁ、ダメージ支払っておいてください。
結花 最後にダメージを
ダイス 1D10 = [6] = 6
GM 《リザレクト》は大丈夫?
結花 だいじょうぶ
さっき、したばかりだ
GM はい。
では、逃げられました。
可愛子は打ちひしがれて、泣いています。
結花 それを呆然とした結花さんが抱えて逃げる…と
GM シーンカット。



◆不良高校生:嵐泰平
 
 カッ。
 この俺に言わせてみりゃ、むかつくことはただ一つ。
 世の中、本気で生きてない奴が多すぎる。
 他人を殴った時に、自分が殴られることを考えてない奴。
 そもそも、他人を殴ろうとすら思わない奴。
 最初っから、殴るなんてのは愚かだと信じ込んでる奴。
 どいつもこいつも反吐が出る。
 
 人間、全員が別のことを考えて生きてるはずだ。
 そしたら当然、そりが合わないこともぶつかることもあるはずだ。
 だったらどうなるんだよ。
 相手を殴りてぇ、って思うのが自然だろうが。
 実際そうするかどうかは問題じゃねぇ。
 だが、殴りたいと思ったこと自体を否定するのは間違っている。
 それを否定する奴は、ただの嘘吐きだ。
 そういう奴は、自分が一度決めたこともすぐに曲げちまう、最低の屑だ。
 
 夢を語る女がいた。
 つか、小さい頃はよく遊んだ仲だった。
 高校ではすっかり他人だったが、
 罰でやらされた球技大会の委員会で再会した。
 どうやら歌って踊れるアイドルになりたいらしい。
 まぁ、夢が無いよかいいんじゃねぇの、って思った。
 
 話を聞いたし、力になれるかわからんが、相談にも乗った。
 歌も聴いた。
 上手かったが、こいつは駄目だと思った。
 他人の歌を真似ているだけ――要は、その女は。
 アイドルになりたいんじゃなかった。
 きらびやかな他人と成代わりたかっただけだ。
 俺はそれを指摘したが、あいつは聞こうとすらしねぇ。
 女を殴っちまう前に、俺は離れることにした。
 
 運命ってのは皮肉だ。
 死体だらけのこの街で、またその女に会うだなんて。
 こんなに生と死が近い場所で、相変わらず空っぽな歌を歌って、
 他人を散々巻き込んで、一緒に現実逃避してやがった。
 
 空っぽな歌。
 一度だけ、あいつが自分で作った歌を聞いたことがある。
 真似じゃないその歌は、お世辞にも上手いとは言えなかったが、
 …………本気を感じた。
 
 だから、今度は、殴ってでも止めねぇと。
 一瞬でも感じた、あの本気を叶えるために。
 そう思っていたのに……。
 
 カッハッハ――
 ――上手くはいかねぇもんだよな。




糸緒 一度も会ったことがないけど、お兄さん……(めそめそ




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