Double Cross the Reverse...  「逆巻き琴線――喪失ひ旋律」
Opening.
   
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    PC3 推奨ワークス/カバー:お人形/お人形            眼窩ニ込メタ硝子ノ小部屋ニ映ル全テガ艶ヤカデス。     「さぁ、お聴き。僕が子守唄を、美しい君へ、弾いてあげる」      須ラク麗シク在ルベキ世界ニテ御主人様ハヨリ馨シク。      高ク細イ調ノ渦中滑ラカナ指先ガ髪ヲ優シク梳キ解ス。      腕ニ抱カレナガラシカシ寒々シイ想イニ心崩サレマス。      御主人様ハソノ瞳ノ総テデ我ヲ観テナド否イノダカラ。     「貴方なんか、ご主人様の一番になれないの。……醜いモノ」      叫ビ声ガ軋ミ割レル脆キ命ヲ必要性カラ喰ライマス。           シナリオロイス:御主人様ト存在意義ノ関係。     推奨感情:肯定/否定           GM  きしっ……     椅子の軋む音。     開いた窓から、そよそよと風が吹き込んでくる。     揺れるカーテンは白く。     見える空は広く青く。     差す光が、小部屋を優しく映す。     御主人様は瑕耽に近付き……その、長く、滑らかな髪を梳く。     指で、愛しげに―― 瑕耽  (判定中……)→侵食率7%低下。 GM  御主人様「ふふ……」     御主人様は、楽しそうに笑う。 瑕耽  ああ 御主人様     貴方が私に触れる場所から     沁みるように 滲みるように 染みるように     私の心には愉悦が満ちるのです GM  貴方を膝の上に載せ、抱き、抱え。     一通り、愛でる。 瑕耽  もっと と願います GM  優しく、緩やかに。 瑕耽  満ちても、足りることはありません GM  御主人様「君は美しいね」     しかしその瞳は、貴方を超えたところを見ている。     御主人様「君は美しい」     貴方を観賞しているだけ、ではない。     御主人様「君は本当に――美しいね」     けれど貴方は人形だ。 瑕耽  「――有難うございます」 GM  御主人様は、そこで君を、脇の椅子に座らせる。     漆黒のグランドピアノが目に映る。     つやつやと、鏡のように磨かれた、高級そうなピアノ。     御主人様「さぁ……お聴き」     すべての言葉が美しい。 瑕耽  「はい」     こくりと頷き GM  御主人様「僕が子守唄を……、美しい君へ、弾いてあげる」     きぃん……     Aの音から      B C D E F  G ……♪     律儀なまでに静粛に並び伏した鍵盤を、順に撫でてゆく。     鍵達から――歌う事を、奏でる事を剥奪したとしたら。     その美しい声を、そもそも根本から戒めたら。     それはどんなに皮肉なカタチになるのだろう。 GM  御主人様「…………」     指が滑ってゆく、世界を統べてゆく――     流れる旋律が、こんなにも心うつ。 瑕耽  人の形を模した もの     それに 心が宿るとしたら 何を模したものなのでしょうか     私の存在 私の価値 私の意味     己によって立つことの出来ぬ私は ならば 求めましょう GM  音が、絡まりあってゆく。 瑕耽  与えられた五感で     全てを     全てを     壊れるくらいに     ――そう 壊れるくらいに GM  曲は、しかし、やがて鳴り止む。     擦り切れるような。熱く、麗しく、恐ろしく……     しかしなにより、しつこい余韻。     それはどこか悲しい。     御主人様「……僕が愛した人がくれたメロディさ」     御主人様が愛した。 瑕耽  「…え?」 GM  愛した――愛している……愛、愛、愛、愛――――     人。     貴方は、人形。 瑕耽  「――それは、どのような方でしたか?」 GM  御主人様「ふふ……」     次の曲を、弾きはじめる。     瑕耽の言葉に、気付いていないように。     絡みつくような曲調が、神経を逆撫でる。     ちりちりと     ちりちりと、もどかしく。 瑕耽  「………」     ああ     貴方は     私の 何を 美しいと言うのですか GM  ??「無駄よ」     声が聞こえた。     美しく磨かれた――     グランドピアノ――     鏡のように。     自分の姿が、壁面に。     映って、見える。     私は美しい。私は美しく、私は美しいが。     貴方は美しいけれど。     壁面は緩やかにカーブを描いている。     映りこんだ私が、今一度口を動かす。     鏡像「無駄よ」     それとも、喋っているのは自分か?     鏡像「無駄なのよ」     鏡像は、虚像か――?     鏡像「ね。自分でも知ってるんでしょ?」 瑕耽  「そんな…ことは…」 GM  御主人様に届かない言葉は、貴方の中で反響しつづける。     鏡像「貴方なんか、ご主人様の一番になれないの」 瑕耽  「あ……」 GM  鏡像「……醜いモノ」     人じゃない――モノ。 瑕耽  無い と そんなことは無いと叫びだしたくなっても     それ以上に口腔からあふれ出しそうな嘔吐感 GM  叫び声のように、旋律が割れ響く。     ♪ …… ♪ ♪      ぎちり、 ぎ ぎ ぎちり――     鏡像「――」     触れてしまい、気付いてしまい、囚われる。     あなたの――       歪――ユガミ――。


               

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