Double Cross the Reverse...  「逆巻き琴線――喪失ひ旋律」
Middle.
   

     自己満足するのはいい。けれど押し付けるな。      自己陶酔するのはいい。けれど巻き込むな。      自己防衛するのはいい。けれど近付くな。      自己嫌悪するのもいい。けど止めるな。           GM  晩餐も終了し、この館での最初の夜。     避澄……音鍵避澄に、個室へ案内されます。     恐怖するほど美しい、館の主。     動いて、喋る人形。     不気味なメイドと、執事。     怯える、クラスメイト。     そして、よく知らない、先輩。     わけがわからないまま、圧倒されるように――     ――落下していくかのように、流されてしまいました。     登場、どうぞ。  柊  (判定中……)→侵食率4%低下。 GM  前を歩いていた避澄が、足を止めます。     避澄「ここが貴方の部屋よ」     チャリ、と鍵を取り出して、一つの個室の扉を開きます。     かこん。  柊  「ありがとうございました。」     ぺこりと一礼して、部屋へとはいる GM  避澄も入ってきます。     つかつか。  柊  「・・・へ?」 GM  一流のホテルよりも豪勢そうなお部屋。     避澄「ベッドのシーツやらは、換えたくなったらメイドにでも言って。お風呂も、当然トイレもついているわ」     部屋の様子を点検している避澄です。     避澄「その他に、大体欲しいと思われるものは、揃っているはず」     人差し指を自分の唇に当てて、ふふ、と言います。  柊  「・・・欲しいと思う物、か・・・」 GM  避澄「女の子が欲しいのなら、私が出来る限りでお相手するわ」     そう言って、扉へ近付き……     かこん。     と、内側から鍵を閉じます。  柊  「・・・工具セット、ありますか?」 GM  避澄「引出しの中に入っているわ」     ちゃりり、と……部屋の鍵を渡します。  柊  「助かります・・・」鍵を受け取る GM  避澄「はーぁ」     ばふっと、ベッドに腰をかける避澄です。     避澄「お兄様の話は長いわよね。何が言いたいのか不鮮明なことが多いし。     いいえ、元々言いたい事なんか無いのかしら。きっとそうだわ」  柊  「…どうかしましたか?」 GM  ぱふん、とそのまま仰向けになって。     服が擦れて、肌が見え隠れします。     避澄「どうもしないわ。あるいはどうもするわ。        仕事と言おうとするのなら言えないことも無い、私の今日やるべき事象はこれで終ったのだから、この後はオフよ。        仕事と言っても、好きでやっていることだから、気を使われることは何一つ無いのだけれど」  柊  「・・・オフだったら、自分の部屋で休む事をお勧めしますよ。暴発する可能性もありますしね。」 GM  避澄「ねぇ、敬語を止めてくれないかしら?」     ぱ、と起きて。     ちょっと乱れた髪を、手で梳きながら。     避澄「この先も、しばらくずっと、言うことになる気がするけれど……出来ることなら、敬語を止めて欲しいわ」        嫌だと言うのなら、勿論それでいいけれど。私は無理強いするつもりはサラサラ無いわ」  柊  「そう言われても、染みついちゃった癖はそう簡単に変わらないんですよねぇ・・・」 GM  避澄「癖? 学校でも敬語なのかしら?」  柊  「まぁ、普段は敬語ですよ。」 GM  避澄「へぇ……。あまり居ないわよね、そう言う高校生は。        他人と距離をおくことを、その年齢から身につけているのかしら」  柊  「・・・」無言だけど、一瞬表情が緊張する。 GM  避澄「敬語と言うのは相手への気使いであると同時に、自分への防御壁でもあるわ。薄っぺらく、そしてあまりにも明確な。        近付かないで、と言外に言っているのも同じだものね。その気になればそんな壁は、いとも簡単に……。        そう、赤子の手を刈るように簡単に、踏破されるわ。        けれど、壁は壁。存在する限り、それは強固な隔絶よね」     彼女の言葉は、常に歌うようだ。     避澄「隔絶を望んでいるのかしら?」     くすり、と、そう尋ねます。     避澄「普通との隔絶を。その腕ゆえに――自分の素質ゆえに」  柊  「・・・!」無言で、ワーディングを『部屋の床、壁、天井を覆う電撃の檻』として作動させる。     ソレは、1種の確認。     『異常の領域』に、どこまで深く踏み込む存在かを調べる為の。     ソレは、1種の警告。     『異常の領域』に、異能者以外が入る際の危険を知らせる為の。     そして、ソレは期待。     自分と同じ道を歩むものが、他に居るかどうか知るための。     既に条件反射となったソレで、避澄を『見極める』。 GM  さらり……少しも意に介さないように。     避澄「なんなら、私を撃ってみたい? それでも構わないわ。        気にすることは無いわ。お兄様も、人形の瑕耽も、先輩も、執事から7人のメイドまで、全員がそう言う存在よ。        ――鏡原さん以外は」     鏡原詩織という存在の異常さ。     あるいは、この空間がそもそも異常。     ――否、そんな事は確認しなくても、既に自覚し、知覚していた。  柊  「・・・鏡原には、辛い所だな。ここは。」思わず、敬語を忘れてそう呟いた。 GM  避澄「そうかもしれないわね。けれど、彼女にとって相応しくなければ、いずれ彼女は自然にここを離れるわ。        それも気にしなくて良いことよ。少なくとも私は、柊君が居てくれればそれで良い。        柊君の事を、愛しているから。溺愛よ」  柊  「・・・ふぅ。」     文庫本のロイス、逆転。 GM  ほぅ。  柊  期待→諦め、さらにタイタス化。 GM  へぇ、この段階で、ですか。  柊  ・・・結局、「退屈を消してくれる鍵」にはなりえませんでしたから。 GM  成る程。     その吐息を受けるように。     避澄「お兄様と私はものの愛し方が違うわ。        お兄様は、愛ゆえに対象を束縛し――強制する。        私は愛ゆえに対象を解放し――放置する。        どちらも愛の姿であり、それ自体は論点となりえない。ただし、二人が愛し合うのは難しいわね」     思い馳せるように。ゆらりと、柊君の瞳を見つめて。  柊  「・・・放置、ねぇ・・・」 GM  避澄「あるいは誘うだけよ」  柊  「できれば部屋出ててもらえませんか?整備中、気が散るのは勘弁なんで…」 GM  避澄「……後で来ても良い? 性交しましょうよ。直接的な言い方が嫌なら、そうね。愛の交歓をしないかしら?        飛び切り卑猥な服装をしてくるわ。それをお望みなら。        飛び切り淫猥な言葉も用意するし、淫乱よりも激しく相手をしましょう」  柊  「・・・勘弁願いますよ、本気で。」     頭痛を抑えるように、頭に右手を当てる GM  しっとりと、舌で唇を舐めて。     避澄「私は本気で誘っているのだけれど。それなら、やめておくわ。        もしかしたら、私はこの先嘘を吐くかもしれない。        出来る限り柊君には真摯であろうと思うけれど、吐いてしまうかもしれない。        けれどその時は、きっと、私がうっかり嫉妬をしてしまった時だわ。感情のあまりの妄言よ。        そう。きっとそうだわ。        貴方が性的な交渉を望まないと言うのなら、無理強いしないと、ここで宣告しておきましょう。柊君」     にこっ……と。     まるで穢れを知らない、しかし奥深く吸い込まれるような、無邪気に美しい笑みを浮かべて。  柊  「・・・頼みますよ?」     そう、疲れたように呟いた GM  避澄「ええ、任せなさい。        けれどね、私は思うわ。言葉と言うのは既に汚物であり――会話だなんてものは、インテリの行う性行為だと。        人の口から分泌されるもので、言葉以外は汚物とされるもの。        言葉だけがその例外であると言う保証はどこにも無いわ。        ならばそれを好んで交換――交歓する行為なんて、大よそ人間の行動原理から言えば、        性行為以外にありえないわよね。シックスナインだとか、スカトロだとか」     くすっと微笑んで。すっと立つ。     避澄「私たちは、常に――禁忌としたい行為を繰り返している」     一つの引出しを開けて……高価そうな、しかしくすんだ色の木箱を取り出し、柊君に渡します。  柊  「・・・ソレは?」 GM  避澄「オルゴールよ。知らないわけは無いわよね。私からのプレゼント。愛の贈り物よ。思い出にどうぞ」     と、気軽な風にそう言って。     避澄「それでは今宵も喜ばしき夢を……」     かつ、かたん。 扉へ近付き、振り返ります。     避澄「……口付けくらいは、しても良いかしら?        つまりキス――接吻の事だけれど」     ちょっと寂しげに……そう言いますが。  柊  「心の準備ができたら、にしてくれますか?」 GM  避澄「とても心踊る私好みの嬉しい返答だわ。蕩ける夢が見られそう」     至福そうに微笑んで     避澄「愛しているわ。けれどその事を柊君は、ちっとも気にしてくれなくても、私は構わない。        なのに、ありがとう」     ぱたんと、扉を閉じて。足音が遠ざかっていきます。  柊  「・・・悪い事、してるのかもな・・・」     そう呟いて、右腕の砲にドライバーを差し込んだ。


               

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