最終話

夕立えんどれす 前半
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   シーン1“ほにゃらら”

鋼助さって、いよいよラストか
どうなることやら
GM 
 
 日暮れに差し掛かる頃、突然に降りしきる雨。
 にわかに下がる気温と、湿ったにおい。
 
 それは、何事もなかったのように、やがてやむ。
 
 まるでそんな夕立のような、ひと夏の事件だった。
 唐突に訪れて、唐突に去ってゆく。
 非常識な非日常の思い出。
 
 もしかしたら、思い出すらも……。
 
 残されるのは、たった一つ。
 かけがえのない、彼女だけ。
 
 「どんなに夢見みて願い、否定し拒んでも、
  やがて導き出される、身も蓋もない結論。
  人はそいつを、現実と、呼ぶんだぜ。
  ――――夏休みは、おしまいだ」
 
 
 夏雲れありすむ・最終話
 「夕立えんどれす」
 
 
よろしくお願いいたします。
鋼助よろしくー
桜子よろしく。
GMでは、前回の続きから唐突に入る感じにしますか。
「だってお前が、『ここ』の」
 
「  唯一の参加者(プレイヤー)であり 管理人(アドミニスター)なんだから 」
と言うことで。
桜子うむ。
GM桜子さんだけ、時の流れが非常に緩慢に感じられます。
桜子私だけか?
GM貴方だけです。
桜子他には?
GMとりあえず、好きなようにいじれますよ。
状況を。
羽を消去も出来ますし、重力加速度の変更も可能です。
桜子いや、まあなんだ……いじってもいいが。
まだ早いという話じゃなかったか?
GMそこは別に構いません。
鋼助まだってのはよくわからんが、お前がどうにかしないと俺は確実に死にそうなんだが(苦笑
GMとりあえず桜子さんが何とかしないと、この状況の突破は難しいです。
桜子じゃあとりあえず鋼助を私と同じ時間軸に戻す。
GMと仰いますと?
桜子いやまあ、
やっぱり加速度を打ち消そう。
だ。
GMふむ。
着地するか、空中静止するか、どちらです?
桜子着地。
GMはい。
ではふわりと着地します。
桜子で、時間が戻るのか。
鋼助それは、どうあっても衝撃がくると思ったから唖然とするぞ
GM時間は戻りません。
戻してもいいですけれど、戻すのはもう少し待って頂けますか?
桜子ああ。
GM時間の流れは元に戻って良いですか?
桜子どっちなんだよw
GM流れは戻してもいいです。
桜子そういう意味か。
じゃ、時間の流れが戻る。
んだな。
GMはい。
「……!」
鋼助「・・・・・・は?」
GMぱちぱちぱち、と、音がします。
桜子「……」
GM鋼助?「お疲れ」
鋼助君の恰好をした誰かが、登場します。
鋼助それは、俺も見えるのか?
GM見えますよ。
「まさか……」
鋼助「はぁ!?なんで俺が!?」
桜子「お前は誰だ?」
GM「アプリ・ア・プリオリ――棟倉静脈(むなぐら じょうみゃく)様……尊く高貴なるあなた様がここにいらっしゃったと言うことは……」
桜子名前がおかしいだろうw
GM突っ立ってる鋼助(?)君から視線をそらし、
髄が桜子さんを見ます。
鋼助聞いたことあると思ったら2話でいってた予告のやつか!
桜子誰だ?w
鋼助いや、名前は出てるんだよ
GM「ま、まさか……美しく麗しく須らく尊く高貴なる思考なるあなた様こそが……アドミニスター!?」
桜子「知らん」
鋼助「まてまてまて!?どういうことだよ!?ちゃんと説明しろ!?」
GM鋼助→静脈「そうだが……知らんってお前」
静脈「やっぱり、かなり記憶制御のレベルが高いな」
呆れたように、鋼助君の容姿をした……棟倉静脈と呼ばれた人間が、桜子さんの方を向きますよ。
「…………」
桜子「私はサンタだ。佐藤サンタ、そんなあどみに何とかとなどと言うものではないだろう? 鋼助」
鋼助「ちょっとまて!?アドミニスターってのはこいつのことじゃないのか!?」滴をさすが
GM濡れ女は黙ってましたが、
やがて、肩を落とします。
「……あーあ。救援要請プログラム、ですかぁ……そこまで備えてるだなんて、油断しましたね」
「まさか今どき、自分のワールドに他人を入れるのを許可するプレイヤーが、居るだなんて」
そう言って、境内に腰掛けてしまいます。
静脈「まあ、珍しい状況だよな。一つのワールドに、3人も人間が居るってのは」
静脈「そいつが俺を呼んでくれたんだよ」
「そのような仕様で御座いますゆえに」
鋼助「お前らなに勝手に話進めてるんだよ!?わかるように説明しやがれ!?」
桜子「鋼助。こいつらが何を言っているのかよくわからないんだが」
GM静脈「鋼助、か。コースケ」
笑うようにして。
鋼助「な、なんだよ」
GM静脈「いや、きちんと説明する」
そう言って、向き直ります。
二人に。
桜子「それで?」
GM静脈「そいつからどんな説明を受けたかは知らないが、重要なのはそれが」
静脈「 全部嘘っぱちってことだ 」
鋼助「・・・・・頭痛くなってきた」
GM「……全部じゃないですよぅ。ここが人生保全プログラム、『a-NO the R. type-jp2M』であるとか」
濡れ女が唇をとんがらせます。
桜子「この世界がゲームで、鋼助にバグが沸き、テロリストが襲ってきたという話か」
GM静脈「そうだな」
鋼助「えーと、なんだ?つまりあんたらはテロリストじゃねぇんだな?」
GM静脈「この世界がゲームなのは本当だ」
静脈「だが、オンラインゲームみたいなものじゃない」
鋼助「どーゆーことだよ?」
GM静脈「この世界でのプレイヤーはただ一人、そこの」
桜子さんを指します。
静脈「そいつだけ」
桜子「では」
「お前と、お前と、F91はなんだ?」
GM静脈「俺は、お前の……友達で良いか。一応友達だよ。『現実世界』の方の」
静脈「で、そっちの奴は、いわゆるハッカー……通称『シリアルレイン』だっけ」
「間違ってません。ハッカーって、酷いですけれど……」
濡れ女は恥ずかしそうに微笑みます。
鋼助「むしろてめぇのほうがテロリストじゃねぇか・・・・」ジト目で滴を見る
GM「その……桜子さんの『ワールド』がよく出来てたんで、頂こうと思いまして」
桜子「F91を吊るせえ! その乳を伸ばせ!」
GM「ひ、ひえぇええ!?」
鋼助「はぁ・・・・それは後でいいから、先に説明の続き聞かせろ」
GM静脈「記憶制御型プレイヤーの『ワールド』に潜り込み、あの手この手で、その世界を盗み取ってく」
静脈「アクセスを拒絶・混乱させるプログラムを持ってて、逆探知が難しい。それゆえ捕まってない、犯罪者だ」
静脈「何か使ってただろ」
鋼助「あぁ、心当たりならいくつも」
GM「うー、言いたい放題ですねぇ」
いじいじ。
桜子「ちなみに羽女は?」
GM静脈「プロテクト・プログラム」
静脈「そう言う『攻撃』に対して、対応するための……この世界で言うなら、コンピュータウィルスに対するウィルスバスターだよ」
髄が頷きます。
静脈「他にもいくつかあったはずだけどな」
鋼助「んじゃ今まできたゴスロリの2人とか火のやつもそうか」
桜子「名前がおかしいのはメーカーの仕様なのか」
GM静脈「凄い趣味してるな、お前」
桜子の方を見ます。
静脈「いや、管理人の趣味だぞ」
鋼助「じゃあ俺とあんたの姿が似てるのも、管理人の趣味ってのか?」
GM静脈「そう」
彼は頷きます。
鋼助「はぁ・・・・・意味がわかんねぇな」
「そういや、さっき呼ばれたっていってたがあんた何しにきたんだよ?」
桜子「F91をつまみ出すためか」
GM静脈「この『ワールド』を直しにだよ」
静脈「最終的にはそうなるかもしれないが」
静脈「そいつ……桜子の記憶制御レベルが尋常じゃなく高いんで、俺が出張って来たんだ」
静脈「基本的に、アドミニスターはプロテクト・プログラムをはじめ、『ワールド』全てを操作できる。その気になればね。異変に気付けるなら、排除やリセットも出来る」
静脈「だけど、気付けなかったら別だ」
肩をすくめます。
桜子「鋼助が私にずっと隠していたからか」
GM静脈「違う」
静脈「お前がそもそも、気付きたくなかったんだ」
鋼助「眠ったままでいたかった、てことか?」
桜子「……ふう」
GM静脈「鋼助、お前」
静脈「こいつ、面倒臭いだろ?」
桜子さんを指します。
鋼助「あぁ、面倒臭いことこの上ないな」
GM静脈「でも、お前はこいつと一緒に居てやってる」
静脈「なんでだと思う?」
鋼助「・・・・・それにも理由があるって?」
GM静脈「そうプログラムされてるからだよ。お前に」
さらっと言います。
桜子「静脈とやら。最後の質問をいいか?」
GM静脈「ん? なんだ?」
桜子「この『ワールド』とやらは。一体何のために存在するんだ?」
GM静脈「基本的には、現実世界のストレス緩和……ゲームみたいなもの。このタイプのは」
静脈「擬似恋愛タイプだ」
静脈「お前がお前の欲求を満たすために、選んだ世界だよ」
桜子「鋼助がよくやっているエロゲーのようなものか」
鋼助「・・・・もっとも、やってんのはお前だがな」
GM静脈「そう言ってしまえば、そうかもな」
桜子「私は……なんだ。その私とやらは、一体どれくらいそのゲームをやっているんだ?」
GM静脈「一時間くらい」
桜子「くっ」
鋼助「じゃあ俺は生後1時間ってか?笑える話だな」
桜子「F91も暇人だな。その1時間に割り込んできたのか」
GM「そうですよ。記憶制御レベルが高いほど、割り込みやすいですし」
静脈「感覚を引き延ばしてるからな。人生ゲームだって、ワンゲームに一生かけないだろ」
桜子「つまりお前は私から鋼助を寝取りたかったんだな」
GM「言ってしまえば、そうです。でも、とても優しい方でした。桜子さんのモデリングが凄く丁寧なんですね」
はにかむように笑います。
鋼助「はぁ・・・・・ほんと暇人だな。こんな騒動起こして」
GM「貴方から、鋼助さんをひきはがしてしまえば、意義としてこの『ワールド』が貴方から乖離する。そしたら後は、ダウンロードさせて頂いて、おしまいです」
桜子「ふん……図らずもオンライン対戦ゲーになっていたわけだな」
GM「告白まではしたんですけれども、ね」
桜子「ま、鋼助が私にめろめろだったからな」
GMぽつぽつと、
桜子さんの記憶に、
先ほどから、湧きあがってくる情景や、感情があります。
それはおそらく、『現実世界』の方の記憶。
イライラして、悲しくなって、でもそんな物があったら、楽しめないから、そんなもの
封印した
ような。
思い出そうとすれば、思い出せそうですが。
桜子いい。
GMはい。
鋼助「いってろ。まぁいいや、俺の最後の質問だ」静脈に向かって
GM静脈「どうぞ」
鋼助「俺はやっぱ消されるのかねぇ?」何気なく聞くが
GM静脈「そこの桜子に訊けよ。『こういう』記憶を消すのなんか、ボタンを一つ押す程度の労力だ」
何気なく答えます。
桜子「くっ」
「くくくくっ……しかしなんだ、私とやらは余程ストレスが溜まっていたんだろうな。サンタはないだろう、サンタは。しかも真夏だ」
GM静脈「……」
桜子「まあ、どうでもいいさ。知ったことじゃあないんだ。私は向居側桜子で、鋼助のサンタクロース。お前の言葉を借りるなら、そういう設定なんだから」
鋼助「設定にしても妙な設定だがな」
桜子「私を好きだなんてお前も相当変な設定と言わざるを得ないぞ」
鋼助「いや話的には設定したのお前だろ」
GM静脈「さて……」
桜子「さて」
GM静脈「後は、好きにしてくれ。俺は帰る」
静脈「後の話は、その気になれば桜子が全部思いだせるし。全部忘れて、初めから仕切り直してもいいだろ」
桜子「F91はあれか。捕まるのか?」
鋼助「帰るならついでにそこの騒動のタネもどうにかしてくれ」滴をさすぞ
GM静脈「シリアルレインは、逆探知が無理だから、すぐには捕まらねぇだろ」
「えへへ」
舌を出します。
桜子「そうか」
GM「でも、わたしも手を引きます。救援要請プログラムがあるんじゃ、何度やっても同じですし」
桜子「F91。はっきり言って、私はお前が大嫌いだが」
GM「あぅ」
鋼助「何度もやるな。迷惑以外の何者でもねぇんだから」
桜子「それでも、お前のせいで滅茶苦茶になったこの夏は。滅茶苦茶なりに、なかなか面白かったぞ」
GM「そうですか……」
「失敗に終わりましたけど。名前をつけてくれたのは、嬉しかったです」
桜子「F91シルエットフォーミュラーがそんなに嬉しかったのか」
鋼助「こいつはこういってるが今度同じようなことしてたらぶっ飛ばすからな?」滴に
GM「そっちじゃないですっ!?」
わたわた。
静脈「お前、犯罪者だからな。その内マジで捕まるぞ」
鋼助「そのほうが更生していいかもな」
桜子「実はババアなのかもしれないな」
GM「うー」
静脈「ったく。じゃあな」
そう言って、棟倉静脈は背を向けて歩いて行きます。
ぴん、と、天に向かうような光の筋が走って、姿が消えますね。
「それじゃ、わたしも。お騒がせいたしました」
ぺこり。
鋼助「あんま迷惑かけんなよ」
桜子「本当にな」
GM「桜子さん、実はわたし……」
「本当は、貴方くらいしか胸ないんですよ」
そう言って、ウィンク。
桜子「この偽乳がっ!」
GMざああっ、と、彼女の周りだけ局所的に大雨が降って。
消失します。
鋼助「たく・・・・・じゃあな、雨宿滴」
GM「……はっ」
「お、お邪魔いたしまして御座います」
背景と化してた髄も、そそくさっと翼になって消失しますね。
鋼助「・・・・・・・もうちょっかいだすなよ?」
GMさて――
残されたのは、
桜子さんと鋼助君だけですが。
夜空の中、
にわかに二人の目があったところで!
コマーシャルです!




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