第五棺

未だ終らぬ我々の埋没the Color of monochrome

Climax Phase 3
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   ■シーンプレイヤー:全員◆

GM ……。

…………。


――

そして、雑踏。

ざ、ざざ――

  わいわい がやがやがや 

やけに明るい景色――見慣れた街並み――通学路――行き交う人々――

日告市。
そんな中に、二人はそれぞれ、立ち尽くしています。

麗香はまだハートシェル化してんの?
麗香 どうなんでしょうね?
GM んー、今はいいですよ。
普通で。
麗香 んー。《ナーブジャック》されたはずだけど発言できるの?
GM 発言できますね。
じゃあ俺はこう言おう。
「…………」ぽん、と手を叩いて
「あー疲れたぁ。でも、TRPGってマジ楽しいな。今度は充さんとかも誘おうぜ!」
「じゃ、俺、先に家に帰るから。また明日学校でなー」
「あーあ、授業とかホントかったりぃ…」
麗香 「まったく不愉快な夢でしたわ」
「御機嫌よう、明日は良い日であるといいですわね」
GM 家――、家……?

そうか――放課後 ――――、放課後?


糸緒 「―――あの、尚お兄ちゃん、れいか……お姉さん」
GM と。
何処かで見た
少女。
おどおどとした雰囲気の……。
「あれ? キミ、どっかで会ったっけ?」
「さすがに夜歌高の生徒…じゃねえよな」
糸緒 「……えと……忘れちゃった……です、か?」首をかしげて
GM 忘れた――何をだろう。

何やら、覚えているような気はします。
というか俺は覚えていていいのか?
GM 好きなように演出していいですよ。
俺は〈意志〉低いからまず気づかないだろうなあ。
麗香 蛇足っぽい気がしてなんかなぁ…。なにをすればいいんだろう?
「知らないうちにロリコンに目覚めて犯罪をしてたとかマジやめてくれよ」
「そういうのはゲームだけにしておけ、っていうのが最低限のマナー」
糸緒 「ろりこん?」首かしげ
「??」
「あの、ノワール……元気、です、か?」
「ノワールさんって外国の人? 君ってハーフだったの?」
「いや、気に障る言い方だったらすまない」
糸緒 首を横に振る
GM そう――

犬だ。


犬!?
GM 彼女には、犬が――

   いたはずだ。

常に、そばに。
ノワール。確か、そう言った。

アイツは確か――可愛子になついていて――支部に――

支部に――?


「えーっと…。ごめん、ノワールって何? 君のペット?」
糸緒 こくん、と頷いて
糸緒 「でも……ペットじゃ、ない、です。―――家族です」
「……元気、ですか?」
「ノワールは……黒い毛並みの犬です」
GM ――よく思い出せない。
でも、多分、元気だ。


糸織「しーお」
ぽんと、糸緒さんの肩に手を置かれます。
女の子によく似た女性が、彼女を抱きかかえますね。
糸緒 「―――っ。ママっ!」ぱぁっと明るい笑顔になって抱きつく
GM 糸織「行くよ。大丈夫、ノワールにはきっとまた、会えるよ」
糸緒 「ほんとっ!? よかったぁっ!」えへへ、と嬉しそうに微笑む
GM 道の向こうから、スタタタタッと糸緒さんよりは大きい女の子がかけてきます。
紙縒「日向さんっ! 元気っ!」
糸緒 「あっ! 紙縒おねえちゃんっ!」
GM 紙縒「あっ、糸緒ちゃんっ! 素顔君見なかったっ?」
糸緒 首を横にふりふり
「ううん。見てないの」
GM 紙縒「私のカメラっ、取ってったんだよ! おのれー!」
すたたたたーと、走って行っちゃいます。
糸緒 「え、えええっ」おろおろ
GM 糸織「あはは……まったく、意地悪は駄目よね」
糸緒 おろおろして
「あの、お兄ちゃん。お姉さん。素顔お兄ちゃんはみませんでしたか?」
おろおろ
喧嘩になっちゃうと、心配そうに
GM 見てないですね、それは。

――素顔――阿舎、素顔。誰だったか。
(初対面の相手を質問攻めだと…? やばい、この子、電波系か…?)
「すまん、麗香。あと頼むわ」と言って逃げ出そうとする。
麗香 あ、まだいたんだ。麗香さん。
てっきり、どこかに向かって歩き出したあとかと思ってた
GM 糸織「それじゃ、新垣さん、繰鐘さん。また」
にっこりと、女性は微笑んで、糸緒さんの手を引いて行ってしまいます。
「あ、え、お!?」
「はあ…また」
糸緒 「うん。またね、お兄ちゃん。お姉ちゃん」笑って手を振ってママと一緒に去っていく
「…複数人が俺たちの名前を知ってるってことは、やっぱ、どこかで会っていて、俺の方が忘れてるってことだよ…な」
麗香 「さあ。そうなのかもしれませんし、そうでないのかもしれませんわ」
GM 二人を見送る……
「おら」
と、数学教師の甲田由が歩いてきます。
「さっさと帰れ。通行の邪魔だぞー」
はっはっは、と、彼は快活に笑う。
「ゲェッ!」
「軍オタ!」
GM 「うっせ!」
さっと、かばんを小機関銃のように持って向けます。
「ヒィ! やめてー殺さないでー」
「お、俺は、校則違反の買い食いもチャリ通もしてませんよ」
麗香 「仕方ありませんわね……」
ふっと、夜歌高校の校舎を見上げよう。
自分が作った、そして自分が守りたかった自分の居場所を。
「本当に疲れましたわ」
GM 頬助「ああ、繰鐘さん。生徒会お疲れ様」
声をかけられます。
頬助「助かったよ。例の件、よろしく頼むよ」
麗香 「まだ、これからも今日みたいな仕事をやらされるんですの?」
「まったく…、身体が持ちませんわ」
GM 「おっ、設楽先生じゃないか、あれは。相変わらず学園の癒しだよなぁ」
頬助「先生、彼女居らっしゃるんでしょう」
「おお、だがなー最近なぁ」
頬助「繰鐘さんが頼りなんだよ。僕も頑張るから、勘弁してくれ」
麗香 「ふぅ…頼られても、なにもできませんわよ」
GM 頬助「またまた。優秀な生徒会メンバーさ」
麗香 「おだて上手ですのね」
GM 頬助「ははは、それだけが取り柄でね。じゃ、また」
久井頬助はにこやかに去っていく。
麗香 「御機嫌よう。また明日ですわ」
GM 甲田先生は、設楽艶髪に声をかけている。
近くを、春林笑窪と塵内改悟が友達と帰って行く。

――通学路。

まぁ、帰るなら、帰ります?
不思議な感覚を覚えつつも。
麗香 んー。名残惜しそうに校舎を見上げておきます。
いやいやいや。
抵抗する手段があるなら抵抗するぞ。
ノリノリで洗脳されてたけど。
まあ、これがエンディングです! と言われたら従うが。
GM ふむふむ。
いや、お好きなように。
特に何もなければ、充さんあたりでも出しましょう。
麗香 んー。じゃあ、校舎に入っていく。自分は
で、何人もの生徒とすれ違いながら、自分の教室を目指す。
あえて別行動する理由もないし、ついていこう。
GM はい。
と、その途中で。
「ああ、新垣君に繰鐘さん」
声をかけられます。
「どうも、ご無沙汰です」
にっこり。
「ちわーっす」
麗香 「あら。雪吹さん」
「めずらしいですわね。こんなところにいらっしゃるなんて」
GM 「これから支部へ向かうんですよ。どうですか、ご一緒に」
「灯は先に向かっているみたいなんですけれどね」
「どうも、輪廻座とやらが来ているらしくて……ご存知です? 香華院みだらという人形役者さん」
麗香 「……ああ。あの方ですわね」
麗香さんは芸術的な教養があるので、たぶん事件前から知っていたかと。
GM 「どうやら、天月班の方々にも声がかかっているみたいで……少し不安ですよね」
麗香 「UGNで芸術鑑賞会ですの? まるで学校みたいですわね」
GM 「ええ、おかしな話で――」
そう。聞き覚えがある。
どころか――話したような気すら――する。
そこで違和感に気づいて良いか!
GM 気付きたいところで気付いていいよ。
わかった!
じゃあ、
「…みだら? 輪廻座? 秋土劇場に来てるのか?」
GM 「ええ」
「チケットも頂いたんですよ、ほら……」
「任務と関係でもあるんですかね?」
と、言った瞬間、俺は奇妙な感覚を覚える。
どこか懐かしく、胸の奥に染み渡るような、特徴的な“感覚”。
「…充さん、香水かなんかつけてる?」
GM 「はい? いいえ」
と、自分の服を嗅ぐようにします。
ふと、記憶の底から浮かびあがった、この微かな“香り”は。
「甘い香り…。砂糖? いや、これは………べっこう飴?」
呟いた瞬間、あの味と舌触りが蘇る。
嗅覚は、最も記憶に残りやすいと言われる。
……ああ、そうだ。
俺はどこかで、“みだら”とかいう人に会ったことがある。そして飴をもらったんだ。
あれはいつだった?
GM ――てめえは、香華院みだら――
――そいじゃぁ、御機嫌よう――


そう。

『あの日』の

一週間前――くらいだ――

――『あの日』?

何日前? それとも何週間前…? いや、違う。“時間”じゃない。“この時間”じゃない。
何かがずれている。
昨日の夕飯は? カップヌードル。 一昨日の夕飯は? 少し豪華にほっともっとの弁当。
その前の日は? 思い出せない。…いや、もしかして、存在しないのでは?
ノイマンであれば、一週間前どころか、一ヶ月前の夕飯程度なら、簡単に覚えていられるはず。
それができていないということは――俺が病気になったか、さもなくば、何らかの能力の影響下にあるのでは…
GM 「まぁ、行きましょうか」
と、充さんに引きずられるようにして、学校から離れそうになりますが。
どうなさいます?
その手を振り払う。
「悪い。ちょっと…ヤボ用があった、気がする」
「行って来る」
麗香 「わたくしは……教室に忘れものをしてしまいましたの」
「せっかくのお話ですが、少し遅れていってもよろしいのでしょうか?」
GM 「おや。了解しました」
充さんはにこやかに去っていきますね。それでは、先に向かっております、と――
さて、どうしますか? 麗香さんは教室に向かうのですよね。
麗香 そうします。
ついてくついてく。
なんとなく、ここで麗香と離れると、二度と会えない気がして。
GM はい。考え込む尚君、誘われるように進む麗香さん。
教室前です。
1年E組。
麗香 では、その扉を開けると。中にクラスメイト全員がいるといいなぁ…三枝くん以外
今度は誰かに会いますか?
GM 開けると――

朝咲商店街です。

麗香 「あら……?」
「わたくし、道を間違えたかしら?」
GM 玻璃「テスト面倒くさいー」
瑠璃「マジで、面倒臭いのはテストだよねー」
近くを、顔がそっくりな女子高生が歩いて行く。
「……」
麗香 「……双子ですのね」
「いや、姉妹じゃないか? 片方は、骨密度が小さそうだ。病気か何かで成長が遅れただけで、実年齢は違うと思うぞ」
麗香 「……いったい、みんなはどこに」
「……新垣さん?」
「ん…」
GM チャラくスーツを着崩した兄ちゃんが、それとすれ違うように歩いて行く……。

泰平「ぐはっ!」

がしゃーん
と、止めてある自転車にぶつかる高校生男子。

「だから、詰まんねぇ因縁ふっかけんなって」
泰平「ちっ……俺らの剛さんはやっぱつえーな……」

「……おう? てめえら、どうした、こんなところで」
永原剛、が、近寄って声をかけてきます。
泰平を殴った手をひらひらさせながら。
「ちょっと絡まれててな。結花の奴を探してんだが。学校はもう終わったのか?」
麗香 「奇遇ですわね。わたくしも結花さんを…みんなを探していて……」
GM 「そっか……じゃ、俺はこっち探してみるわ」
麗香 「……見つかるといいですわね」
GM 「ああ、んだな」
剛さんは去っていきます。
麗香 「さて、新垣さん。これからどこに行きましょうか?」
「お前…何かアテがあってここまで歩いてきたんじゃないのか?」
麗香 「そのはずだったんですけれど……」
GM 省悟「おや、新垣君。いつも息子が世話になってるね」
「あ…どうも」
GM 省悟「お店、そろそろ開けるから、食べていくかい?」
にっこりと言って、近くの塵内食堂を指します。
麗香 「ラーメン…でしたかしら?」
GM ラーメンではないですね。
麗香 「学校からの帰り道での寄り道は禁止されてますわよ」
GM 大丈夫ですよ。(笑)
「ってお前、小学生じゃねぇんだからさー…」
麗香 新垣くんはどうしますか?
「それにここんとこ、まともなもの食えてなかったし…」
GM 省悟「それはいけない。若い内はきちんと食べないと」
「ウチは一人暮らしですから」
「学校があったときはまだまともな昼飯が食えたんだけど、最近は、ほら。な?」
「………最近?」…最近ってなんだ?
GM 省悟「じゃ、遠慮なく食べて行きなさい。うちは安い上に美味しくて量が多いぞ」
と、背を押されます。
「…あ、いえ。今はちょっと、急いでますので」
「腹は減ってるんですけど。すっっっごく減ってるんですけどね」
「それより大事なことがあった…気がするので」
麗香 「雪吹さんのところに行かないといけませんものね」
GM 省悟「そうか……仕方がないなぁ。また来てくれよ」
「すみません」
(ああ…うまい飯を食い損ねた)
GM 省悟さんは、最近の若い子は忙しいんだなぁ、とか呟いて、見送ってくれます。
(あんたの息子もだ)と、心の中でつっこんでおこう。奴の場合は恋愛だが。
GM と、振りかえると、目の前にお寺があります。

叢雲寺。

キターーーー
和尚! 和尚! 和尚ーーー!
いやいや。PCは慌てず騒がず歩いていくぞ。
麗香 「はぁ……」
ちょっと面倒くさげにため息をついてみよう。
「まるで、たらいまわしにされている気分ですわ」
GM 白狐郎「……少し、いいか?」
白い髪を後ろで結んだ青年に、声をかけられます。
隣には、男物のコートを着た、けれど可愛い顔立ちの女性。
「ん…? な、なんだよ」
GM 白狐郎「いや」
薄く、鋭い目で、尚君と麗香さんを見てきます。
白狐郎「違和感があるのに、思い出せない」
白狐郎「おかしいと感じるのに、何処がおかしいかわからない」
白狐郎「そんな顔だな」
麗香 「……違和感、ですの?」
「いや。少なくとも、おかしいのが“何処か”はわかりかけている」
「“自分”。すなわち“認識”だ。“おかしくない気がすること”そのものがおかしいんだ」
こいつの言う事には信憑性がある。根拠なんて何もないが、そんな“気がする”。
GM 生美「ちょっと、白狐郎。初対面の人に何言ってるの?」
白狐郎「……和尚なら、奥にいるぞ」
「ありがとう」
GM 生美「あ、すみません。なんか、突然」
にっこりと、傍らの女性が微笑みます。
「いえ、こちらこそすみません」
GM 安心させるような微笑み。

生美「……んーと、なんだか。君達にありがとうって言いたい気持ちだな」

ぐはぁっ!
PLの心に999のダメージ
PL「生きててすみませんでした」
PLは死んでしまった
麗香 「わたくしたちはなにもしていませんわよ?」
GM 生美「あはは、ごめんね、変なことを」
黒兎「ああ、こんなとこにいたんですか、お二方」
青年が、向こうからもう一人近寄ってきました。
メガネをかけた、大人しそうな青年。
黒兎「早く、みんな駅に集まってますよ」
白狐郎「行くぞ、生美。俺たちじゃ、もう力になれない」
生美「ん……うん。兄貴待たせてるしね」
黒兎「さようなら。今度は貴方達に任せて、俺達は先に行ってます」
そう言って、彼らは階段を下りていきます。
麗香 あと、どれぐらい各地を回らされるんだろう…
「はぁ…、なんだか疲れてしまいましたわ」と言って地面にへたりこみたい。
このまま行くと、まだ病院と支部が来るぞ。
GM お寺の中に入りますか?
はっ! そうだこんな事をしている場合じゃなかった。
入る入る。
和尚ーーー!
どどどどど。
GM どどど!?
いや、今のはあくまでPLの意気込みなので気にしないで欲しい。
GM まぁ、中に座って、まるで君達を待っていたように――槐堂奇縁がいます。
奇縁「おや」
「あ…どうも」
頭を下げよう。
GM 向こうも頭を下げます。
奇縁「確か……人間嫌いの少年だったね」
「ええ。…三つ子の魂百までとはよく言ったもので、未だに性悪説を信じてますよ」
「まあ…、嫌いだからといって、見つけ次第、新聞紙で叩きつぶそうとするような真似はしなくなりましたが」
GM 奇縁「ふむ」
と、少し眉を上げるようにして。
奇縁「人間をチャバネゴキブリのように言うんだね」
微笑みます。
「いいえ。Gの方が格上でした」
GM 奇縁「今はどうかね」
「大して変わりません」頭を掻きながら。
「目の敵にしなくなったっていう――それだけです」
「疲れますしね。そういうの」
GM 奇縁「そうだね」
微笑むようにして、話を聞いてくれます。
奇縁「お茶を飲むといい」
と、お茶を出してくれます。
麗香さんにも。
「すみません。頂きます」
麗香 「……ありがとうございますわ」
GM 奇縁「人は、居場所を探すものだという」
奇縁「それは、安心して眠るべき場所を探しているのではないかと……拙僧などは少し思ってね」
麗香 「安心して眠るべき場所…ですの?」
GM 奇縁「そうだね」
奇縁「不思議なものだろう、眠るというのは。意識が薄れて、自分がだれのものでもなくなる」
奇縁「同時に、それは怖くもないかね」
ずず、と、和尚も茶をすすります。
奇縁「それでも良いと、思える場所を探すのかもしれない」
「そうですね」
「眠ったら、もう二度と目を覚まさないのではないか…」
「HAL9000じゃなくても、そう思ったことのある人間は少なくないでしょう」
GM 奇縁「古い本を読んでいるね」
「SFが好きでね」
麗香 「起きているだけの価値が、この世界にはあるのでしょうか?」
GM 奇縁「それはわからない」
奇縁「しかし……残念ながら、と言うか。君達の眠るべき場所は、まだ、ここではない」
和尚は、湯飲みを置きます。

奇縁「さあ、飲み終わったら行きなさい」

彼の笑みには、様々な感情が刻まれているように見えます。
多くは語らないまま。
その表情で、彼は二人を送りだします。
「ごちそうさまでした」
麗香 「失礼いたしますわ」
GM 戸を開けると――、

四季奏総合病院です。

入口の近くの喫煙所に、すぱすぱと煙草を吸ってる、小汚いオッサンがいます。
仁也 よれたスーツにネクタイ。のんびりと煙草を吸っている。
銘柄は、遠目にはどうやらマルボロのようだ。
「やぁ。どうした? そんな迷子のような顔をして。いい歳して迷子かい、坊ちゃん、嬢ちゃん?」
「うるせーなー。中坊はみんな迷子になるんだよ!」
GM こ、高校生!
精神年齢は12歳なので問題ありません
GM おい。(苦笑
麗香 「新垣さん、わたくしたち高校生でしてよ?」
「き、記憶の混乱が。邪気眼がぁぁ」
「静まれ俺の右腕ー」(棒
麗香 ちょっとそんな新垣くんから距離をおきます。
ひっ
他人のふりをされた!
麗香 「…どなたかの付き添いですの? 見たところ、具合が悪そうには見えないですけど……」
「うわっ、煙草の副流煙が…。よし近づかないようにしよう」
そそくさ
GM ひどっ!?
すまん。つい(笑)
仁也 「副流煙か。はっはっは。まぁ、匂うのならそれが事実だろうな。さて」ぐしぐし、と灰皿に煙草を押し付け。
「おっちゃんはもう坊ちゃんと嬢ちゃんに言いたい事ぁ言ったからねぇ。今更言う事も特にないさぁ」立ち上がり。埃を払い。
歩き出しながら、また新しい煙草を懐から取り出して、口に咥える。
麗香 「喫煙所の外は禁煙でしてよ」
釘を刺しておきます
じゃあ、そこでふと、仁也が取り出したライターを見て…
「…そういや、夏火さんが会いたがってたよ」
「顔に出すタチじゃねーけどな」
仁也 火はまだつけないけどね(笑)
つけないのかよ!(笑)
仁也 ライターは手で弄ぶさ。
ヤラレタ
仁也 「そうかい? じゃあ、伝えられるなら果実の嬢ちゃん宜しく言っておいてくんな」くはは、と笑って。
「そういうわけなので、麗香、よろしく」
麗香 「直接言ったらどうですの?」
仁也 「さぁて、直接言うにも照れ臭いもんさ。おっちゃんのトシになるとな。ま、ゆっくりおいでと言っておいてくんな」
麗香 「仕方ありませんわね…。ちゃんと伝えられるか、自信はありませんわよ」
仁也 「ま、嬢ちゃんと坊ちゃんに言いたい事は言ったが、渡すもんは渡してないんでね。ほれ、おっちゃんからのお駄賃」ぴん、ぴん、と指で五百円玉を二人に弾く。
GM ほほう。
何だろう。(笑)
仁也 ま、受けとりゃ解る(笑)
反射神経無いからなぁ。落としそうになりながらも、やっとのこと両手でキャッチする。
麗香 じゃあ、こっちはもっとないから思わず一瞬落としてしまおう
「あっとっと……!」
それから、拾う
GM ふむふむ。
仁也 「おっちゃんの言った事も頼んだ事も、嬢ちゃんと坊ちゃんにはそんくらい、って事さ。軽いかもしれんし重いかもしれない。ちょっと節約すれば1食食べられるかも。そんなもんだ」くはは、と笑い。
「何か食べてそれをちょっと動くくらいのエネルギーにしてもいいし、募金箱に入れちまっても構わない。貯金箱に入れておいても財布に入れっぱなしでもそりゃあ構わないわな」
すたすた。
麗香 「勝手…ですのね」
人間の価値など拳銃弾一発並のこの世界
五百円は命よりも高価
「ただより高いものは無い…ってか」
麗香 「少なくとも、いまのお願いに関してはただではなかったみたいですけれど」
仁也 「ま、好きにしなよ。嬢ちゃんと坊ちゃんにゃ、もうちょい歩く分の余地があるかもしれないってね。ま、おっちゃんの事を思い出すなりなんなりは、好きにしなって事で」
という事で。二人に《ラストアクション》をあげよう。正に五百円の価値さな。
マジで!?
やっべぇありがとう
GM マジで!?
やべぇ。(笑)
麗香 とはいっても、どうせ射程外だしなぁ…
くそ、結局俺が殴るしかないのか。ええい、ままよ。
仁也 「最後に立ち上がるなり、歩き出すなり、そいつぁ嬢ちゃんと坊ちゃん次第だ。そんじゃ」擦れ違って。歩きながら、ライターをつけ。
しゅぼっ。
「さ、怨嗟の旦那、待たせたね。そんじゃあ行くかね」
GM では、車がききっと止まります。
怨嗟「遅刻だ、仁也。ゆくぞ」
高級そうな車のドアが開きます。
仁也 「はっはぁ。いいじゃねぇのぉ。ちょっとくらい。あ、煙草吸ってても大丈夫よね? その車」けらけら笑いながら車に乗り込む。
GM 怨嗟「車に臭いがつくと言っているのに」

バタン、ぶろろ……。

そんな様子を見ていると、
ぐい、っと
二人の手が引かれます。
麗香 仁也さんから貰った五百円玉を、じっと見つめていよう。手を引かれるまで
GM 「……遅い」
「あ…お、おう」
うっ
………気まずい
さんざんラブコールした後だから、恥ずい
麗香 「どうして、あなたがここにいるんですの?」
「今日は大勢の方々と会う日ですわね」
GM 「…………」
「な…なんだよ」
GM 灯は二人を見上げるようにしてから。
「……呼んでる人がいるから」
と、手を引いていきます。
「あ、そう?」
GM ずいずいずい。
引きずられる。ずるずる。
猿まわし。
GM 「……尚は」
と言ってから。
「あ?」
GM 「……麗香も、結花も、諦めは悪いと思う」
「私も……だけど」
病院の階段を、ひっぱるようにして彼女はのぼっていきます。
麗香 「そんなことありませんわ」
「っつーか、どういう意味だよ」
GM 「……」
灯は軽く振りかえります。

「始まりも無ければ、終りもない――って、兄さんは、言ってた」
「……勝手に終わらせないで、ってことだよ」
ぷい、と前を向いて歩いていきます。

そして、
院長室の前。
灯はノックして、扉を開け、二人をトンと、突きだす。
中に入ると――

――会ったことは、ない。

が、

写真で――見た、ような。

二人の男女が、そこにいます。
麗香 四季奏一切か…
GM 一切「……名乗っておこう。四季奏一切と、妻の十色だ」
髪を綺麗に後ろに流した、すらっとした壮年の男性。
ふわっとした髪型の、傍らの女性が、紹介を受けてお辞儀をします。
で、出たーーー!
麗香 「名前くらいは知っていますわ」
「四季奏家ほどではありませんけれど、わたくしの家もそれなりですの」
「さすがに、あなた方の写真くらい見たことはありますわ」
GM 一切「娘が世話になっている」
複雑な面持ちで、彼は頭を下げます。
一切「――単刀直入に行こう。俺達は、名残にすぎない」
一切「予め、果実の元に残してあった、データの残骸だ」
麗香 「なにを話しているんですの?」
「そろそろ正気に戻れ。斜め45度の角度でチョップすんぞ」
まあブラウン管テレビじゃないと意味無いが。
麗香 「……あら。新垣くんも気づいていましたのね」
「おいいいい!」
GM 一切「……これを、託そう」
十色「最初のリンクで渡せたら良かったんだけど……、私達のこと、知りませんでしたものね」
女性が、微笑みながら、
書類を手渡してきます。
一切「我々の一部であり、コピーだ」
受け取ろう。
麗香にも見えるように配慮しながらめくる。
GM その書類をめくると、
任意タイミングで使える《ファスト・フォワード》のデータと、
他人を飛ばす、という仕様の《黒星の門》のデータが描かれていることに気付きます。
《ファスト・フォワード》は、直ちにシーンを切り替え、持続エフェクト一切を消去するエフェクト。
《黒星の門》は、シーン中の任意のところに移動するエフェクト。本来は自身が、ですが、ここでは他人を飛ばす使用になってます。
麗香 つまり、これであの重力場が使用可能に…
侵食率はいくつ上がるんだったっけ?
GM 《ファスト・フォワード》は10、《黒星の門》は4
麗香 「こんなにしていただいて申し訳ないのですけれど…」
「わたくし、戻る気がありませんの。だって、戻っても、わたくしはもう……」
クライマックスでの戦闘のことを思い出して、身震いします
「戻る、ね」
「ここに戻るんじゃねえの?」
「死んだらここに、戻るんじゃねぇの」
GM そこで。

きゅ、と

麗香さんの手が握られます。

顔を上げると、

1年E組の教室。

麗香 しかし、尚くんはここにはいない!
あれ、消された。(笑)
麗香 ごめん。ただ、1年E組の景観にそぐわないかいかと思って言った冗談なんだ
GM 結花「麗香ちゃん」
早乙女結花が目の前にいます。
麗香 「久しぶりですわね」
GM 結花「黙って消えちゃってごめんね」
麗香 「…本当に、結花さんはいつもそうですわ」
「いつでも、ひとりで勝手なことをして、いつでもわたくしをふりまわして…」
GM 結花「そうかな?」
麗香 「いまだって、そうですわ」
GM 結花「……」
麗香 「わたくしがどうしてあなたに会いに行かなかったのか、思いつかなかったわけじゃないでしょう?」
GM 結花「えっと……」
結花さんは頭にハテナを浮かべてます。
麗香 「ふぅ……。まったく、結花さんはいつになっても結花さんですわね」
そう言って、少し間を置いてから結花に抱きつこう。
GM 結花「麗香、ちゃん……?」
戸惑いながらも、受け止めます。
麗香 「こうして会ってしまったら、ずっとここにいたくなるからに決まっているじゃありませんの」
GM 結花「……駄目だよ」
麗香 「できることなら、卒業までずっとみんなと一緒にいたかったですわ」
「こんな世界になんて、一生来てほしくありませんでしたわ」
泣きながら、言います。
GM 結花「うん……わたしも」

結花「わたしも……本当、苦しかった」

結花「誰も守れないって、絶望してた。誰も彼も殺したくて、凄く辛かった」

結花「でも……お願い、麗香ちゃん」

結花「四季先輩を救ってあげて」

少し麗香さんを離して、正面から麗香さんを見ます。
麗香 「……いっつも、結花さんは無茶なことを仰いますのね」
GM 結花「無茶して、死んじゃったけどね」
麗香 「あっち側のわたくしはもう、衝動に流されてしまいましたわ」
「人を救うことなんて、もうできるはずがありませんわ」
GM 結花「ごめん……麗香ちゃんも、守りたかったのに」
結花「でも、待ってるから。麗香ちゃんならできるよ!」
根拠も無しに、そんなことを言います。
麗香 「こんなわたくしにでも、まだできることがある。と仰いますの?」
GM 力強く。
結花「うん、きっとあるよ!」
麗香 「無責任な発言ばかり…というのも、いまさら野暮ですわね。……どうなっても、知りませんわよ」
GM 結花「うん」
彼女は、笑顔で頷いてくれます。
結花「信じてるから」
麗香 「結局、なるようにしかならないということですわね」
その笑顔を受けながら。
「本当、この世界は残酷ですわ」

GM ――

  ――

残酷な世界に。
そうして、また――戻る……。






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