第一棺

夢のような現実の埋没the Beginning of monochrome

Ending... 1
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   ■シーンプレイヤー:新垣尚◆

GM それでは、灰色に埋もれた街
第一棺のエンディングを始めますよ〜。
あいあいさ。
GM よろしくお願いいたします。
結花 お願いします
GM 最初は尚君からで。
何かご要望はありますか?
んー。前に言ったのと同じー。
校舎の廃墟の前に立って、思い出の品かなんかを取り出すシーンがいいかな、と。
GM 弔いですっけ。
余裕あるな。
UGNにいたら、同僚が死ぬことも珍しくなかっただろうからな。
GM いや。
ジャームがまだ周辺に居るんですが。
そこはそれ、「5分だけくれ」って奴だ。
GM 成程。ではそのちょっと前から始めますか。
シーンスタートします。



GM とりあえず充さんの車に乗り込み。
一時校舎をあとにしました。
 
ごごご…………ん
 
振動がしばし。
「崩れた……ようですね」
「……うん」
是色「にしても……、ちょっと狭いね」
きゅうくつ。
「我慢して下さい」 苦笑して応えます。
「5人は定員オーバーだな…」
「灯がチビで助かった」
GM 「チビじゃない」
「……悪いが、少し車戻せるか?」
「え?」
「…早乙女さんのことが気になるかい?」
GM 「ああ。悪いか?」
ぎろり、と睨みます。剛さん助手席。
振り返りながら。
「いや。むしろうらやましいくらいさ」
助手席の後ろの席でふんぞりかえる。頭の後ろで手を組…もうとして、天井にぶつかり、車の狭さに悪態をつく。
GM 「はあ?」
「気になることがあるうちは、死ねないって気になるだろ」
GM 「なんだテメエは。ガキのくせに偉そうによ」
チッと舌打ちして。
「で、戻せるのか戻せねぇのかどっちだ。断るってなら、俺はここで降りる」
「しかし、あの倒壊でジャームが全滅したとは限りませんしね……」
「むしろ、結構な量は生き残ってると見るべきでしょう。危険です」
「なおさらだ。結花が生き残ってたらどうするってんだ」
がんっ。と、ダッシュボードを叩きます。
「そう言うと思ったよ。あんた相手に、リスクを持ち出して説得するのは効果が薄そうだ」
「危険とは、つまり“自分の身の安全”に関わることだ。このアニキには、もっと大事なことがあるらしい」
「つーか… ぶっちゃけ、俺らと一緒に来る気なんてハナからないだろ?」
GM 「……そういわれりゃ、そうだな」
「…………兄さん私からもお願いできる……?」
「……、灯もですか……」
ため息をついて。
「どうしますか、新垣君?」
「なんでガキに意見を求めるんだよ」
「彼がリーダーなんですよ」
「は? なんなんだテメエらは」
「UGN。こういう状況のプロさ。…今は、頭に、“元”ってつきそうだけどな」
「やれやれ… 支部じゃ、まともに動けるのが何人残ってることやら」
GM 「サツの友達かなんかか? 自衛隊とかよ」
「ま」
扉に手をかけます。
「そんなもんさ。…というわけで、戻してくれ。充さん」
「途中まででいい」
GM 「じゃ、精々頑張って――お?」
「――はい」
ハンドルを切ります。

きゅ――きゅきゅ。

「なんだ? 危険だから云々じゃなかったのかよ」
「……」
「だから途中までって言った。…それに、この街で危険じゃない場所なんて無い」
「学校周辺は、学生とその家族が集中するため、人口密度が高い。ゆえに、比較的ジャームの数も多いと予測される」
「…だが、こっちは5人しかいないからなぁ」戦力差が大きすぎるという意味でもあるし、これ以上戦力を減らしたくないという意味でもある。
GM 「小難しいことを並べてんじゃねえ」
「考えたほうが、生存率が上がるんだよ」
GM 「ジャムだかバターだかしらねえが、何が言いたいんだテメェは」
「言いたいこと? ないね。暇なのさ」
「あんたが、俺の言葉で何か変わるってのなら話は別だが、そういう風でもなさそうだしな」
茹ってしまった男たち。
GM 「ムカツク奴だってのはよくわかった」
けっと言います。
是色「ところで、新垣君は何しに戻るの?」
と、是色が口を挟みます。
「ん? ああ… ちょっと、忘れ物があってさ」
GM 是色「ふうん。そんなところだと思ってたよ」
「……忘れ物……?」
「こいつだ」胸の内ポケットから、ウサギをデフォルメした感じの、変な携帯ストラップを取り出す。
さっき、校舎の中で這いずりまわっている時に、偶然、胸の内ポケットに入っていたことに気がついた、なんてことのないアクセサリー。
俺は、携帯にストラップをつけない主義なので、たまたまこうして残った。
(そ…、忘れ物さ。あいつらのな)
それは、改悟と笑窪が二人でゲーセンに行った時に当てた景品。同じのがたくさんあるとかで、俺にも一つ押し付けられた、ってわけだ。
GM 「この辺りでいかがですか? ドアは開けておきますから、急いで戻ってきて下さい」
きっ。
「っしゃ。助かるぜ。その気になったら勝手に行っちまってかまわねぇ」
バタン。
「……?」 首を傾げてから。
走っていってしまった剛さんを追いかけます。
「すまない、充さん。5分で戻る」
GM 「……うん」
たかたか。
是色「僕もついてくね」
「……心細いんで、なるべく早めにお願いしますね」
にこっと。
いう感じで、崩壊した廃墟に視点を映します。
粉塵がまだひどいです。
逆に、めくらましにもなるようですが。
「まだ……そこかしこに居る」
気配がしますね。
是色「でも、崩壊の衝撃かな。すぐには動けるのは少ないみたい」
「結花ー! くそっ、さっきの場所は何処だ」
近くでガラガラっとしてる剛さんがいます。
「この辺り……」 灯がそばで、探すのを手伝ってます。
結花 じゃあ、きっとなにか見つかるんだ。痕跡が
GM 是色がひょこひょことついてきてますね。
グラウンドの端。倉庫の影になって、身を隠すにはちょうどいい位置。
「…」無言で、その場にしゃがみこむ。
ここからだと、自分達の教室の窓が見える。あの、二年E組が。
「ったく、最初にゲーセン行こうって言った俺を放置した上に、こんなもん押しつけやがって…」手のひらに載せたストラップを眺めながら、顔をしかめる。
「まあ…いいんだけどよ。言ってなかったが、本当は、俺、カラオケだけじゃなく…ゲーセンも、大嫌いだったんだ」
「…だけど。少しだけ…行ってみたら、楽しかったんじゃないか、って気もしてたんだ」
突然目の奥が熱くなって、あわてて手でまぶたを覆う。
GM 是色「……泣かないの?」 顔を覗き込むようにして、是色が聞きます。
「嫌なんだ…、今だけは」今まで、ジャームなら、小学生だろうとかつての仲間だろうと、ためらわず殺してきた。それが仕事だった。改悟も殺した。…泣く? いまさら何を。
GM 是色「ふぅん……」
是色は顔をあげて、崩れてしまった二年E組を見るようにします。
「ま、どうせ、行ったら行ったでクソつまんなかったって言ったんだろうけど……。ああ…もったいない。…くやしい。…くやしいなぁ…」
地面にあぐらをかくようにして座り込んだまま、ぼそぼそと、絞り出すような声で。
GM 是色「いいクラスだったと思うよ。僕は」
そんなことを彼女はいいます。
無表情に近い、不透明な表情で。
「俺、卒業アルバムって作ったことねぇんだ。あのクラスのページとか、どんな感じになるんだろうな?」はは、と、軽く引きつるように笑う。
だがもちろん、それができる日はこない。
「…誰が死んでも、地球は回る。世界は続いていく」感情の抜け落ちた顔で、ぶつぶつと、呪文のように呟く。
「第一次世界大戦中に流行したスペイン風邪…つまりインフルエンザでは、全人類の50%が感染し、死者は数%… つまり数千万人にのぼった。14世紀には、ペストの大流行で、ヨーロッパ全人口の3割が死んだ、と言われている」
「それでも、人類はもとより、ヨーロッパは滅びなかった」
「“そうであるべき”なんだ」
「だからこそ、俺たちは生まれてこられた。そして今も、生きていられてる」
何のために生まれたか、わからなくても。死んだことに、意味がなくても。
GM 是色「……」
ぽん、ぽん。
と、是色が肩を柔らかく叩きます。
「人間ってのは、あっけなく死ぬ。…だが、思われてるよりは、しぶといんだ。きっと」
ちらりと、手の中に納まったストラップのウサギを見て。
「俺は生きるぞ。絶対に、死んでやらねぇ…!」
突然がばっと立ち上がり、思いっきりストラップを放り投げる。校舎の方へ。
自分の教室があったあたりへ。
GM  ……
   ちゃりっ……。
一瞬、過去の学校の風貌が頭をよぎる。強い日差しと青空の下、前と変わらない校舎が、少しつっぱった感じで、でも誇らしげに、目の前にそびえているのが見える。
校舎の… 教室の窓から、改悟や笑窪、甲田先生… そして何人もの同級生が、こっちを見ている。
一人でグラウンドに立っている俺のことを、指差して笑ったり、肩をすくめてあきれたりしながら。
…けれど、何もない灰色の空へ一直線に飛んでいったアクセサリーは、割れた校舎の窓の隙間から、廃墟の中に飛び込み、消えた。
俺の耳には、ほとんど何の音も届かなかった。
それを見送って…
GM とん。
肩を叩いてた手を、ゆっくり置いて。
是色が言います。
是色「……がんばろ」
「ああ。…行こうや」
「幸か不幸か、俺たちはまだ生きてる」
GM 是色「うん」
「じゃあな」振り返って、歩き去る。ひらひらと片手を振って、背中でさよならを言いながら。
そのまま、粉塵のむこうに消える。



GM 車に戻ると、灯が後ろをかけてきます。
てけてけ。
「お帰りなさい。新垣君、灯。それと四季奏さん」
「悪い、約束より3、4分遅れた」
GM 是色「早乙女さん、見つかった?」
「……何も見当たらなかった」
気を落とした様子で、首を横に振ります。
「携帯は? まだ使えないのか?」
結花や麗香、あと市外にもかけてみるけど、全部つながらないのか?
GM はい。
是色「携帯電話は死んでるよ」
「うん」
開いて見せますが、圏外。
うわぁ。
結花 歯車くんが《妨害電波》を…
GM 「どころか、ラジオも入りません」
「…おいおい。おかしいだろ、それは」
GM カチカチと車についてるラジオをいじりますが。
ざざー。
「まるで、世界中から切り離されたみたいだなぁ。え?」
GM 是色「みたいじゃないよ」
「……どういうこと?」
是色「この街は、閉鎖されてる」
薄らと、霧のようなものが漂い始めて、遠くが見通せなくなってきてます。
「……あれ、それより……永原さんですっけ。あの方は?」
「学校の前に……俺のバイクが止めてあるって」
「取りに……」
「そんな、勝手な……」
ブロロロロ……と、音が聞こえます。
「あいつと俺たちとじゃ、生きる目的が違う。…気づいてたか?」剛さんはそのまま戻ってこないと思っている。
GM 「さっきも言ってましたけど、それはどんな意味ですか?」
「両手両足にかなりの筋肉がついていた。それに、甲田先生との戦いでの身のこなし…おそらく全身を使う格闘技をやってたはずだ」
「だが、あのサングラスは、視力が低い人間がつけるものだ。…動体視力は、格闘技には重要。病気か事故か何かで視力を失った可能性が高い」もちろん、例外もあるが。
結花 そこまで見抜くとは……!
「つまりあいつは“生きる死人”なんだ」
GM 「……成程?」
肩をすくめるようにして。
「死人……」
「生命は、基本的に、自分と、自分と同じ遺伝子のため、“生き続けようとする”」
GM 「しかし彼にとって、自身の生き残りは、それほど重要じゃないってことですか」
「ああ。何らかの理由で、自分のために生きることをやめた人間… それがああいう類さ」
(そして、ある意味では、俺もその一人だ)と、心の中で呟く。
GM では、ぶろろろ、とそんなところで音が近づいてきます。
「おや」
きっと。バイクが近くで止まりますね。
ヘル無し剛さん。
「…だが、人間は節操がない生き物だ。あっさり主義主張を変えることもある」と、ひょうひょうとごまかす。
GM 「倒れてやがって、ヘルメットも行方不明だが……とりあえず動くみたいだ」
「あ? どした?」
「そのまま行っちゃったのかと思いましたよ」
「……」
きゅ、きゅ、とバイクのグリップを握るようにしてから。
「結花の痕跡は何も見つからなかった」
「ってことは、自力で抜け出したか、助けた奴がいる線もある」
「……」
「……」 現実的じゃありまあせんけれどね、とは言わない。
「自力で抜け出したなら、学校で出会ったはずだ。先に救出した人間がいたとすれば、艶髪先生のグループかもな」
灯から、艶髪先生と歯車たちのことは聞いていた、ってことでお願い。
GM 「艶髪先生?」
「早乙女さんの担任だ。早乙女さんが、改悟との戦闘の直前まで一緒に行動していた」
「あっちは人数も多い。移動速度もそう速くはないだろう…。向かった方角さえわかれば、見つけるのは難しくない」
「運がよければ、繰鐘も向こうにいるはずだ」
GM 「しらねぇが……ま。そこのチビとも仲良かったみてぇだしな」
「だから、チビじゃないもん……」
「おお、悪ぃ。テメェらは何かこのふざけた状況に、詳しいらしいじゃねぇか」
「俺じゃ見つけられねぇだろ。学校の奴らの顔もわからねーんだから」
「つーことで、ついてくことにした。色々教えろよ」
そう言います。
「いくらでも聞いてくれ。暇だからな。なにせこっちは、学生のくせに、授業も宿題もない。時間はたくさんある」皮肉っぽく。
GM 「ラジオも効かないんじゃ、情報も得られませんけれどね……」
かちかち。 ざーざー……。
「ああ……そういや……。校内に放送繋げてた女子高生がいただろ」
無意識のうちに表情を暗くして「…笑窪のことか?」
GM 「……死んじまったが」
剛さんも少し顔を曇らせますが。
「あいつの話によると、政府が正式にこの街の閉鎖を決定したらしいとか、言ってたぜ」
「合流した時にな」
「………」手を組み合わせたまま、黙ってそれを聞いている。
GM 「それから少しして、携帯が繋がらねぇとかになってよ」
「どういう手を使ったんだかわかんねーけどな。んで、校内放送がつなげられそうだとか言い始めて」
「その後、あの先公に遭遇した」
「……って感じだ」
「………」
どこか遠くを見つめるような、ぼんやりとした目で、そう言う。
「そう、か…。教えてくれてありがとう」
GM 「……つまり、一時的なものではないと思った方がよさそうですね」
ラジオをいじるのを諦めます。
(これだけ大きく、周辺市街との境目もあいまいで、かつ、ジャームとオーヴァードだけで占められた都市を封鎖?)
(UGNだけでは、戦力が足りているとは思えない… 防衛軍が出たか?)
(となると、行われたのは、封鎖というより…制圧、だろうな。今からだと、近づいただけで殺されかねない)
GM 是色「……そろそろ移動した方がいいんじゃない?」
尚君の思考を遮るように、是色が言います。
「そうですね……こんな路地で囲まれてもなんですし」
「おう」
「ああ。…長期戦になりそうだ。色々と必要なものがある…。まずは早乙女さんと繰鐘を探して、その後、UGN支部に向かおう」
GM 「……」
こくっと頷きます。
「出しますよ」
「頼む」
GM と、車が動き始めたところで。
シーンカットです。




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