Double Cross the Reverse...  「逆巻き琴線――喪失ひ旋律」
Ending...
   

     難しい事など何一つ言っていないよ。      理解されない事を言っているだけさ。           GM  ――沈んでいくのを感じます。 どこともなく。     扉が、閉められていくのが、見えます。 姫巳  「・・・」目を見開いて周囲を見ます。そこがどこであろうと。     たとえ、目では物を見ることの出来ない場所であろうと、心やそれ以外の知覚で見るのだといわんばかりに。 GM  空間が、頭痛のするような甲高いメロディに、包まれていきます。     血の臭い。     馴染みに馴染んだ、血の臭い。     漂っている、血の臭い。     腹部に突き立つ――赤い赤い刃。     何を、思いましょう? 姫巳  「ふん・・・やっぱり救われないな、僕は。」苦笑一発。それだけさ。 GM  最後の瞬間に。 姫巳  「僕を苦しめていいのは、僕の卑しさだけだ・・・だから、扉を閉められても困るんだけどな。」     腹に剣がささってようが、構わず歩いて部屋を出ようとします。 GM  彼――音鍵遺櫃(おとかぎ いびつ)が     砕けるのを、見た。     脆くも硝子細工のように、終るのを見た。     砕け落ちた時の音が、残響のように、まだ耳に残っている。 姫巳  「・・・そして、君もまた救われないな。」頬の肉皮を吊り上げて、苦笑。 GM  けれど。私を殺したのは、私をあるいは殺し損ねたのは、     彼じゃない。 姫巳  「少なくとも砕け方まで、外見は美しかった。しかし・・・」     ふむ?>彼じゃない GM  その後だ。     自分の卑しさが終ると思った。擦り切れそうな板挟みから、開放されると思った。     その刹那だ。     館から出る、あの扉が開き渡り、駆け出そうとしたその時に。     誰かに、刺されたのだ。 姫巳  「・・・自分では自分を救えない人間のところに現れる死神・・・セイギノミカタというわけか?」 GM  わからない。     わからないけれど。     駄目なのでしょうか? 清智姫巳は、もはや許されないのでしょうか?     人を殺したから? 卑しいから? 貴女のユガミは直しようが無い、そういわれたような気分。 姫巳  「はは・・・」涙を流し、血を流しながらも、軽やかに空虚に笑う。     「・・・ああ、何て卑しいんだろうな、僕は。」     腹部を貫く剣     握り締めて     歩こうとしながら笑う。     「こんなになっても、自分を許せない。」     「そのくせ、こんなになっても、終わることに納得が行かない。」 GM  順々に、淡い明かりが、遠くから――消えていくようだ。 姫巳  「ああ、何て卑しくも、腹立たしくも・・・」消える明かりを無視して歩む。     ぐねりぐねりと、きっと、共生する怪生物たちは、傷の修復を試みているのだろう。     「・・・いとおしくも、恐ろしい。」     「いとおしいということは、恐ろしい。」扉に、辿り着き。     「いとおしいことは、畏ろしいんだ。」手をかける。     開かない扉をこじ開けようとし続ける。 GM  ふっと、苦笑するように、館の中が暗闇に堕ちる。 姫巳  「あれほどの畏ろしさにくらべれば・・・他の理不尽に。何で納得出来るものか。僕は卑しい殺人鬼・・・」     かすかに歌うように節をつけて、蠢く蟲のように足掻き続けるよ、それでも。     「救われてなんか、やるもんか。」     何を思ってか。     嫌悪した己の一面よりも卑しく、頑固に、そう呟くよ。 GM  はい。


               

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