Double Cross the Reverse...  「逆巻き琴線――喪失ひ旋律」
Ending...

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         貴方が足らない下らないどうしようもない存在と言う認識、      それ以外に貴方の世界にとっての真実があるとするのなら、      貴方は自らの孤独を貴方だけのものにすることは出来ない、      その詰まらない極まりないどうしようもない不完全さよね。           GM  ♪♪〜〜♪、♪♪♪、 ♪♪……     澱みなく、美しいメロディが漂うのが聞こえる。     そして、君は意識を取り戻す。     眠っていたのか。眠っていたんだ。そう     いつものように。     ♪♪♪〜〜♪、♪♪……♪――     ――ぱたん。     と。     その音で、よりはっきりと目が覚めます。  柊  「・・・あー・・・ん?」顔を起して、教壇を見る GM  すっと、その視界が遮られます。     端麗な顔。     避澄「ねぇ!」  柊  「なに〜・・・?」眠たげに答える GM  音鍵避澄(おとかぎ ひずみ)――クラスメイトだ。     避澄「起きた? 眠っていたのね。きっとそうだわ。眠っていたんでしょう?        夢を見ていた? 夢を見ていたのでしょう。夢の内容は覚えている? 覚えていないんじゃない?        おはよう。そしておめでとうございます、よね。夢の世界に溺れないで、私の居る世界に帰ってこられたんですから」     そう言って、にっこりと、美しいと表現する他無い     そんな、魅惑的な、心とかされる頬笑みを浮かべます。  柊  「・・・・夢の世界、かぁ・・・」     「たまに、夢だったのか現実だったのか分からない夢もあるけどな・・・」  柊  「・・・夢の中で学校行って現実で学校寝過ごしたり。」 GM  避澄「そう。        けれど分らないのなら、どちらでも変わらないんじゃない?」  柊  「案外、コレが夢だったりする可能性もあるしな。」苦笑する GM  避澄「良いのよ。怠惰な惰眠を貪るのなら、貪るだけ貪れば。誰も咎めないわ。夢の中に溺れるなら、溺れてしまえば良い」     相変わらず、緩やかに笑いながら。     避澄「そこに私が居ればいいの。貴方もそう思わない? ね、柊君」     柊君、と呼びかけられる。屈託無く。  柊  「・・・そういうモンかねぇ・・・」考え込む GM  避澄「それよりも、私の贈ったオルゴールを聞いていてくれていたのよね?」     さっきその手で蓋を閉じた、そのオルゴールを掲げて言う。  柊  「・・・ああ、音鍵のオルゴールだったのか・・・」 GM  避澄「寝ぼけないで。私が贈ったのだから。愛の証に、二人の愛の証に。柊君。        彼氏彼女でしょう? 彼氏彼女の関係よ。彼氏が貴方で、彼女が私。        言わば恋人関係よ。アダムとイブだわ。イザナキノミコトとイザナミノミコトだわ」  柊  「・・・ふぅ。コレは夢か、ソレとも現か・・・」 GM  避澄「だから、それは関係無いって」  柊  「本当に分からないな。こんな美人が恋人って状況だと。」 GM  避澄「良いじゃない。あなたのものは私のこと、私と言うものはあなたのもの。素敵じゃない?        素晴らしいわよね。歌が聞こえるほどだわ」     くすっと微笑んで、耳を澄ますようにします。  柊  それにならって耳を澄ませてみる GM  何処からとも無く、オルゴールの音が。     しかし、それは、不揃いだ。     先ほどまでのように、綺麗なものではない。     ……♪ □ ◆■■ ♪……     ……  柊  「・・・何の音、かな・・・」呟く GM  ぺちん     と、額を小突かれます。掌で。  柊  「いて。」 GM  避澄「――さて、帰りましょう。授業が終ったの。今日はお終いよ。あるいは今日はこれからよ        集団生活に塗れた日常の、集団生活部分が終ったわけ」  柊  「・・・じゃあ、図書館にでも寄るかな。期限がそろそろヤバいし、返しとかないと鏡原にどやされる・・・」 GM  避澄「鏡原? 誰?」  柊  「図書委員だよ。心配しなくてもアイツはアイツで恋人いるから。」 GM  避澄「そう。寡聞にして知らなかったわ。知ろうともしなかったわ、私。興味なかったの。謝るわ。        私は貴方の好きな図書館に興味が無かったの。それを謝るのよ。これからは共通の話題も模索していかないと」     ふ、む。と考えるようにしてから。  柊  「興味が無い物も、人から聞いて興味がある、に変わってくもんだからなぁ・・・」と言いつつ、図書館へ歩いて行く GM  隣を歩きつつ……     身長が高いくせに、猫背――俯きがちな君を、下から覗き込むように、彼女は言葉を紡ぎます。     避澄「ねぇ、今夜私の家に来ない? 私のお家。勿論料理を作るわ、精一杯の料理を作るわ」  柊  「・・・さて、行くべきか行くまいか。」肩をすくめて笑って見せる GM  ちろちろと覗く白い歯。     その向こうの、赤く艶かしい舌。     それらを縁取る、妖しい唇が、最高に扇情的に     貴方を誘う。     彼女の瞳は何処までも深淵だ。     終わりの言葉を、     これで終わりと言わんばかりの言葉を、     彼女は――音鍵避澄は、そして、口にした。     避澄「 今日、 お兄様は家に 居ないから 」  柊  ・・・静かに、こっそりと左手の甲をつねって見る。      現実では無い証の、痛みの無さを求めて・・・ GM  ――     涙が     頬を伝った。


                

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