「産んだモノに越えられる、滅ぼされる。  出藍の誉れ――それは喜ばしいことじゃない?  そこに愛があれば。愛さえ、あれば……」    By Heart-Knife   6th chapter:混乱  A:あとのまつり     Warld Word:龍岬飛来(たつみさき ひらい)  通称、「一匹台風のハザード」。元殴り屋本舗のリーダー。姫路夜兎の師匠。  幅広い技能を修めた、ベテランにして敏腕冒険者であるが、強引で自分勝手な性格をしている。  世界中のソードワールドを飛び回っており、赤園市には今居ない。     GM   : というわけで。        かつてないほど赤園市を追い詰めた、ホテル赤園占拠事件は、マギ、ヤト、みゃーこ、あと一応りんりのお陰で、        わずか1日でのスピード解決を見たのでした。        まぁ、功労賞は、即座に連絡を入れてくれた丑寅小暮、事前に準備していた畦道肖像にあるのかもしれませんが。 夜兎   : 一日じゃなかったから、逆にいうと、どうしようもなかった状態だったろうけどね        よっぽどの高レベルを複数人用意しないと突入がそもそも無理だったもんね 摩樹   : ホテルにいた冒険者も無力化されてたしな GM   : そうとも言います。        完全に赤園市の管理が掌握されてしまっていたら、どんな惨事になっていたかわかりません。 美亜子  : ……意外と怖いな。SWも。     GM   : 肖像:「というわけで……良くやってくれたな、お前ら」       なんとかホテル赤園の残党……残った植物型の魔物どもの処理も終了し、AZ屋で軽く祝宴を開いている状況です。    摩樹   : 宴会じゃー、と喜ぶわけにもいかないよなぁ GM   : 祝宴といっても、メンバーは少ないですけれどもね。 美亜子  : まぁ、身内だけでしょうしねー。 GM   : アゼ爺、白亜、朔朗、マギ、ヤト、みゃー子だけ。        りんりはお休み中。木暮さんは一応病院へ。     夜兎   : 「……」        むーっと祝宴宙だけどあんまり嬉しい顔してないで。難しい顔しつつもぐもぐ食べてる        おなかへった 摩樹   : 「ま、今回は大事になるまえに止められてよかったが」初花事件とくらべれば、ね 美亜子  : 「…十分大事だった気もするっスけどね。」 GM   : 肖像:「何だ、浮かない顔じゃのう」 夜兎   : 「……イグニス作った?」ド直球で言う。 GM   : 肖像:「ん……?」        怪訝そうに首を傾げます。 夜兎   : 「第二の剣、作ったの?」 GM   : 肖像:「それはどういう意味で言っている?」 夜兎   : 首を傾げて        「プログラム作成したっていう意味で」        「……でよかったっけ?」首かしげて GM   : 朔朗:「ヤト」        朔朗が箸を置きます。 夜兎   : 「なぁに?」 GM   : 朔朗:「流石に……ちょっと失礼すぎる」        肖像:「……」        肖像は、少し難しい顔をして黙ります。 摩樹   : 「ま、部外者からすりゃ筋は通ってるとおもうがな」        そういって煙草に火をつけるぜ 美亜子  : 「…」背景に紛れようと静かに水飲んでる 夜兎   : 「?」首かしげてる GM   : 白亜:「そうよ~、ヤト君。それはちょっと……酷い聞き方じゃないかな~」        イグニスを作ったか。 という質問は、別の言い方をすれば、        衛星を落としたり、世界中の機能を狂わせて、多くの人を殺したというのと        同じことをきいているからです。 夜兎   : 「嘘ならいいの。あいつがそういって、りんり、ショック受けてたから」 GM   : 朔朗:「あいつ……シーズか」 夜兎   : こくり        「だから、違うならそれでいいの。りんり起きたら、違うよっていってあげて」 GM   : 朔朗:「それにしたって……」        肖像:「いい、ザクロ」        朔朗を制して。 夜兎   : 「?」首かしげ 摩樹   : 黙って煙草ふかしてるよ GM   : 肖像:「まぁ……作ったっちゃ作ったっつっても間違いじゃないしなぁ」        ふぅむ、と、肖像は背もたれに体重を預けます。        朔朗:「……」        白亜:「肖像さん……?」        肖像:「同じことを言った奴がいてな。りんりの父親の、元樹君じゃよ」 夜兎   : 「そうなの?」 GM   : 肖像:「ああ」        肖像:「いつくらいだったかの……SWDが動きだして、ラクシアネットが起動して、すぐくらい」        肖像:「イグニスの暴走が発覚してすぐかな」 摩樹   : 「暴走……?」それには眉をひそめるが GM   : 肖像:「初期のころは、SWDって言ったら『ルミエル』しかなかったわけでな」        肖像:「『イグニス』が突然出現したから、1st、2ndって言うようになった」        肖像:「どこから来たのかは不明でな。かと言って、当時じゃこっそり個人開発できる規模のものでもない」        肖像:「ほぼ『ルミエル』起動から間もなくだったしのー。模倣して開発って線も薄い」 夜兎   : 「?」何が言いたいんだろうと首を傾げてる GM   : 肖像:「だが、俺と元樹君は、『イグニス』の起源に心当たりが在った」         肖像:「もちろん、確証はない。今に至ってもな。しかしひょっとして――いやおそらく――といった感じでな」 摩樹   : 「……その起源、ってのは?」 GM   : 肖像:「……」        眉根を寄せながら苦笑いをして。        肖像:「言いだしたのは俺じゃよ。考えてもみろ。SWDは世界を管理する規模のAI集合体だぞ?」        肖像:「どんな挙動をするか、厳密な意味での予測が可能か?」 美亜子  : 「…予想出来る演算力あればそもそもAIが要らないっすね。」 GM   : 肖像:「元樹君は、『YES』と答えた。我々の技術力をもってすれば可能だと。機械なんだから、きちんとプログラムさえしてあれば可能だと」        肖像:「俺は、『NO』だった。何が起こるかわからん。その対策はしてしかるべきだと」 夜兎   : 「……えぇと、だから?」首かしげて GM   : 肖像:「対立の末、俺は一つだけプログラムを指し込むことにした」        肖像:「SWDを常に二つの対峙する判断をさせる、拮抗プログラム。もし暴走したとしても、それを自動的に相殺するように設定したわけだな」        肖像:「要はまぁ、ウィルスを作っちまったら、同時にワクチンも作るように設定した、みたいなもんじゃ」 摩樹   : うわぁ、それは………… 夜兎   : 「そしたら、いいこのルミエルと、悪い子のイグニスになっちゃった?」首かしげ GM   : ヤトの言葉に頷きます。        肖像:「そうかもしれん――というだけだが。そのプログラムが、『イグニス』を産む切っ掛けになった――線が強い」 夜兎   : 「じゃあ、実はイグニスが本当の第一の剣、だったりするの?」首かしげ GM   : 肖像:「わからん」 夜兎   : 「そっかー」        「じゃあ、やっぱりシーズは意地悪だね。嘘じゃないけど本当でもないじゃん」ぷくーしてる        「りんり、それ聞いて気絶しちゃったから、教えてあげてね」 GM   : 肖像:「そもそもの正常な挙動自体を、暴走とみなして、ワクチンプログラムが丸ごと作られ、『イグニス』になっちまったのかもしれない」 摩樹   : 「素人判断だが、結局じいさんの考えが当たっちまった、ってとこだな」ぷかー、と煙を吐きつつ GM   : 肖像:「まぁ……元樹君は、機械は人間が制御してこそって立場だったからの……『イグニス』の出現に酷く動揺した。動揺して、世間も彼を責めた」        肖像:「そして、時に俺を糾弾した――っつーことじゃな」 夜兎   : 「なるほどー」 GM   : 朔朗:「……なんつーか、皮肉な結果っスね」        朔朗:「暴走を防ぐために開発したプログラムが、暴走のきっかけになっちまったかもしれねーってことでしょう?」        肖像:「ああ。まぁ、それがなかったら『ルミエル』が丸ごと『イグニス』になっちまって、人間は対処する暇もなかったかもしれんし、何とも言えんの」        肖像:「元樹君は、俺の入れたプログラムに原因があるって思ってただけで。あと、俺もそっちの方がまだ救いがあると思うだけでな」        白亜:「……あの、失礼な質問かもしれませんが……ということは、落合元樹さんの死因って……」        肖像:「それもわからん。他殺って件で捜査はまだされてるが……」軽くため息をついてから。 夜兎   : 「……?」首かしげ GM   : 肖像:「目撃者もおらんしな。自殺かもしれん」        白亜:「そうですか……」 夜兎   : 困った顔で見守ってる GM   : 肖像:「ところで、お前達、もう御馳走様かの?」 夜兎   : 「うん。美味しかったです」手を合わせて GM   : 朔朗:「ウス」 美亜子  : 「十分食べたっスから。」 摩樹   : 「……っと、そうだ。デザート代わりに一つ聞きたいことがあるんだが」 GM   : 肖像:「なんじゃい、まだあるのか」 摩樹   : 「『She smiles thousand times.』これになんか心当たりあるか?」 GM   : 若干うんざりした顔で。        肖像:「『彼女は千度笑う』……?」        朔朗:「まー、微笑むって感じっすかね。スマイルだから」 摩樹   : 「あの蛇野郎が、落合家できいたのならシーズじゃなくそれだ、って言い残しやがってよ」 夜兎   : そんなこといってたなーと見守ってる GM   : 肖像:「サーバーのとこの、ブラッディペタルか」        肖像:「ふーむ」        白亜:「あら?」        と、ちょっとさえぎるように白亜が言います。        白亜:「何かメッセージが入ってまーす。ぽちり」        と、AZ屋の電話を操作。     ??:「オレだ。なんかそっちで起きてるだろ。つながんねーし」 ??:「ジジイから一件、ザクロから二件、アギトから三件、あとシェイドから四十六件連絡があったみたいだが、全部無視したしな」 ??:「どいつもこいつも鬱陶しいっつーの。あとで赤園市に行こうとは思うが、イラネーっつーんなら教えろ。やめるから」 ??:「あとは……なんだ。ヤトは今夜、型の練習を一から八まで千回やれ」 ??:「以上」    ぶつん。     摩樹   : ざっくりだなぁ(笑) 夜兎   : 「はわ」 GM   : 朔朗:「……龍岬さんっすね。そう言えば電話したけどつながんなかったな、さっき」        肖像:「そーいえば一応一報入れようと思って連絡したのー」        肖像:「このあと、回線やら操作されてつながんなくなったんだったかの。しかしシェイドの奴、46件って……」        白亜:「かけすぎですねぇ」 白亜さん苦笑。 夜兎   : おろおろ。がたっと立ち上がる。        「帰る」 美亜子  : 「…えーと。筋肉痛に注意っスよ?」 GM   : 朔朗:「ヤト、身体壊さないように」 夜兎   : こくりと頷いて、たったったーと走って帰る。 摩樹   : 「俺も一仕事終わったし、帰って今回のまとめでもしとくかねぇ」のっそり立ち上がって GM   : みゃーこ連れて行きますか? 摩樹   : そりゃね。居候だし 美亜子  : 置いて行かれそうになってもついて行くっスよー。        鍵が無いから締め出されちゃうし。 摩樹   : 「それじゃ、今日は帰るが何かあったら魔樹探偵事務所まで、ってね」 GM   : 肖像:「ああ。わかった」 摩樹   : そういってみゃーこ引きずって帰ろう 美亜子  : 引きずられる!? 夜兎   : ずりずーり 美亜子  : ずるずるずる GM   : 白亜:「じゃ、私はりんりちゃんの様子を見てきます~」        と、白亜は片づけを終えて。        がたがたと各自解散な雰囲気です。        肖像:「ふぅむ……千度…………微笑む……」            一人食卓で、肖像が腕を組んで深く座り込んで。シーンカット。     ***      6th chapter:混乱  B:種は撒かれたか   Warld Word:2nd SWD.“解放の剣”イグニス(かいほうのつるぎ)  ソードワールドを作らなくてはならなくなった、元凶とも言うべき暴走SWD。  本来ラクシア・システムを管理するだけだったはずのSWDが、どうしてイグニスを産んだのか。  それは不明とされているが、コア部分を作成した落合チームの手落ちと噂された時期もあった。     ***     GM   : では、夜。        マギにお電話があります。電話というか連絡。        AZ屋から、帰って来た後ですねー。 摩樹   : 「はい、こちら魔樹探偵事務所」 GM   : 肖像:「俺。畦道肖像じゃ」        まぁ、名前出てるからわかるでしょうけれどね。 美亜子  : …何か分かったのかな。 摩樹   : 「さっきの今で連絡とは、なんかあったのか?」 GM   : 肖像:「まーのー」        肖像:「さっきのメッセージの件でな」 摩樹   : 「なんだ?何かわかったのか?」 GM   : 肖像:「おそらく、落合千笑(おちあい ちえみ)のことじゃろ」        肖像:「千の笑みと書いて、『ちえみ』じゃ」        肖像:「She smiles thousand times.……ってことな」 摩樹   : 「まんま名前を指してる、か…………」 GM   : 肖像:「まぁ……いまさらその名前がなんだっつーところだが」 摩樹   : 「落合、ってことは関係者なんだろうが」 GM   : 肖像:「つーか孫じゃな」        情緒の娘じゃ、と言います。 夜兎   : ああ。りんりの……あね? 摩樹   : 「…………、あの家に家族のデータが残ってた、ってだけかもしれないがな」ちえみのことはあえて流すよ GM   : 肖像:「なんじゃ、聞かんのか。まぁ、聞かれんならあえて言うこともないことか」        と、微妙な受け答え。 美亜子  : 「……聞いても碌な事無さそうっスけどね。」会話盗み聞きなう 摩樹   : 「まったく、わかったんだかわかんないんだか、って話だなぁ」 GM   : 肖像:「あーあー」        肖像:「まったく今日は本当、言いづらいことばっか絡んでくるのぅ。なんなんだか」        と、非常に言いづらくしてから。        肖像:「チエミっつーのはの。要は流産した子の名前なんだが」        肖像:「りんりの前の子でな。それを情緒は凄く悲しんでの」        肖像:「ここまでなら別にいいんだが。や、良くはない、悲劇ではあるが、まぁ、普通だわな」        肖像:「……情緒が何を研究してたかは知っとるか?」     夜兎   : あぁ……なるほど……人工AIで……娘を作りなおした……? 摩樹   : うへぇ、そうだったら嫌な話だな 夜兎   : それなら、殺したってのもわかる……けど。どうだろうね     摩樹   : 「あんたの娘、なら同じようなプログラム、とかか?」 GM   : 肖像:「まぁ、間違ってない。主にAI――それも、俺や元樹君のような分野とはちょっと違ってな」        肖像:「『より人間らしい』――いわば、人格や感情を形成するタイプのAIを研究しておった」        肖像:「俺や元樹君のは、色んな状況に『臨機応変に』対応するための……『考える』ためのAIでな。ちょっとタイプが違う」 摩樹   : 「あー…………今ので嫌な想像が働いたんだが…………」 GM   : 肖像:「言うてみ」 摩樹   : 「さすがに、その研究してたAIで亡くなった娘をつくろうとした、なんてないよな?」 GM   : 肖像:「わかっとるじゃないか」        肖像:「その通り。まぁ……実際はもっと悪くてな」        肖像:「シーズみたいなのを見た後じゃ、半信半疑かもしれんが、今のAIで完璧に『人間らしい』もんを作るのはほとんど無理じゃ」 美亜子  : 「……そういうもんっスかねー。」 GM   : 肖像:「それっぽい――あるいはどっか欠けてる。たぶん、シーズの気持ち悪さは、そういうとこにもあるんじゃろ。ましてや当時じゃな」        肖像:「それじゃ、『チエミver2』は一体どうやって作られようとしたか」     摩樹   : ver2って言い方がまた…… 夜兎   : 何かをベースに作ったんだろうけど……     GM   : 肖像:「人間の上書きつったらわかるかな」        肖像:「正確には、人間とAIの合成によって、『人間らしさ』のベース部分は脳の処理に任せ、表出する人格はAI側で調整する……」 美亜子  : 「……」慌てて離れて耳塞ぐ!なんか聞いたらヤバそうっ! 摩樹   : 「………………おい、それって」 GM   : 肖像:「つまり、人間をパーツとして使って、実にそれっぽいAI人格を完成させる、っつー研究じゃ」        AI人格として足りない部分に、人間の機能を使う。        ってことですね。 摩樹   : いくらSFじみた世界だって、そこまでいったら普通にアウトだろ 夜兎   : 機能って、生身の人間なんて使えない……よねぇ? GM   : 生身の人間を使います。 夜兎   : えー(笑) GM   : というか、その研究の一部が        ソードワールドに活かされてます。        人の動きの機微を、即座に読み取って、アカウントに適応する。        ソードワールドで起きたことを、人の身体に刺激として返す。        ソードワールドの場合は人間主体。        でも、落合情緒の研究では、        AIの完成のために、人間を使う。      人間が計算するために計算機を使うように、AIが人間のような人格を計算するために人間を計算機代わりに使う―――ということらしいです。     摩樹   : 「………………狂ってる、としか言い様がないな」 GM   : 肖像:「いくら俺でも、『やめろ』っつったわ」        肖像:「まぁ……言うだけじゃ止まらなかったんでな……運転させる前に、『チエミ』――システム名にしておった――は、俺が止めた」        肖像:「情緒は、その時は荒れたが……やがて落ち着いたみたいで。しばらくして、りんりが生まれたってわけじゃ」 摩樹   : しっかし、皮肉だねぇ。人の道を外れるようなことをやったあとに生まれた子が倫理、ってのも GM   : りんりの字は、凛々ですけれどもね。        情緒、元樹(げんき)、凛々。 夜兎   : 情緒ある風情の~って使う情緒って人がそんな激情家っっぽいほうが皮肉に感じる(笑) GM   : 肖像:「あんまり気持ち良くない話を聞かせたのう……。まぁ、『落合千笑』っつー名前には、それだけの“曰く”があるわけじゃ」 摩樹   : 「その名前を語った、か。あんまりいい予感はしないな…………」 GM   : 肖像:「正直、なんでそれがここで出てきたのかはわからん。わからんが――そう、良い予感はせんな」        肖像:「それだけじゃ。あんまりすっきりしない話しで悪いが、例の英文はそれで間違いないと思う」        肖像:「今日は御苦労さまだったな。よく休んでくれ」 摩樹   : 「あぁ、情報提供感謝する」 GM   : 電話が切れます。 摩樹   : それじゃ受話器をおいて、一言つぶやくよ 摩樹   : 「…………コンピューターに呪われる時代、か。笑い話にもならねぇ」 GM   : はい。では、シーンカット。        マスターシーンを流します。        ――――。    天井。    馴染んだ、匂い。    嫌な――夢……記憶……?    私は……わたしは、誰?   「……あら、りんりちゃん」    覗きこむ顔。  揺れるリンゴ型のイヤリング。   「ん……あ、白亜さん……」 「目が覚めた?」    りんりは、自分の部屋で寝かされていた  白亜さんは傍らで真っ赤な林檎を剥いていた。  不安になりながら口を開く。   「ねぇ、白亜さん……イグニス、お爺ちゃんが作ったって……シーズが……」 「ああ……ヤト君も言ってたね」    優しく、白亜はそれに応える。  リンゴ型のイヤリングが揺れる。   「本当に、そうなのかな……」 「うん……肖像さんは否定しなかったよ」 「……お爺ちゃんは、面白半分で、みんなを弄んでるって……」    不安になる。  だとしたら、私のやっていることは……?  第四の剣――『フォルトナ』が完成するということは――?   「大丈夫。肖像さん、『イグニス』のことは失敗だったって」 「失敗……」   『そう、人間を殺せるほどに暴走しなかったからね。  第四の剣は、今度こそ確実にそれを実行するためのもの――』  ――そんなはずはない。  ――そういう意味じゃない。   「……あ、あの、もう一つ質問なんだけど……」 「うん?」 「私にはお姉ちゃんがいたって……」    お姉ちゃん。  ちえみお姉ちゃん……。  お姉ちゃんを、お爺ちゃんが、殺した……?   「うーん。そう言えば……情緒さんが前に言っていたような気がするけど」 「お、お母さんはなんて?」 「いたけれど、亡くなったって……」   『そう。落合千笑は死んだ。  畦道肖像が弄んで殺したんだ』  ――違う、お爺ちゃんはそんなんじゃない。   「私は……」   『あなたはお姉ちゃんの代わりなのよ、りんり』  ――私は誰かの代わりなんかじゃない。 『ちえみ――チエミの代わりに作られた』  ――私は私、落合りんり。 『貴方はみんなに利用されるために作られた』   「私は……わ、」 「大丈夫? 落ち着いて。今日は大変だったものね。  林檎、剥き終わったから、めしあがれ。ね?」 「……林檎……」    イヤリングが揺れる。   「何か飲む? 飲み物取ってきてあげるね」    白亜さんは、そう言って出て行った。  そっか……私、ちょっと混乱してるのかな。  林檎、食べようっと……。    月居白亜は、そのとき。  ナイフをそこに、忘れて行った。     GM   : シーンカット。 夜兎   : 最後の一行いらないからー!(笑) 摩樹   : うわぁぁぁぁぁ!     ***     6th chapter:混乱  C:報復   Warld Word:月居白亜(つきおり はくあ)  以前は、落合情緒の下でAI研究の助手をやっていた。  情緒の病状が悪化し、初花病院に入院したのを機に、肖像の助手として働き始める。  深く肖像・情緒・元樹に関わっていながら、何か思うところがあるのか、アカウントは持っていない。     ***     GM   : というわけで、ヤト君から。        師匠に言われてけいこ中かな。 夜兎   : 次の日なんだね? GM   : いいえ、その日のうち。 夜兎   : え GM   : 夜。 夜兎   : 夜遅かったのに?小学生は寝る時間だよ!(笑) GM   : 夜遅かろうがなんだろうが        師匠はその日のうちに千セットやれと言いました。(笑 摩樹   : 鬼だな(笑) 夜兎   : あれ、1000だっけ!?        ―――本当だ。1000回だ(笑) 夜兎   : まあ、うん。アホの子だから延々とやるだろうけど……(笑) GM   : 世の理不尽を嘆きながら行うといいよ。      理不尽にもほどがある(笑)     夜兎   : 「……」しゅ、しゅ、と型を機械的に延々と続ける。        (全部ウソじゃなくても、悪意を持って、ああいうこというの、よくない) GM   : 今日は色々なことがありましたね。 夜兎   : 「……」しゅ、しゅ        (りんり、大丈夫かな……明日おじいちゃんとお話できるといいけど……) GM   : 丑寅小暮……シェイドとの会話。        その後の、ホテル赤園の占領事件……。        潜入、そしてシーズとの遭遇。        激戦。そして、スピード解決。しかし残る謎……、肖像の話。 夜兎   : (……けど……結局、誰が……サーバーにウィルス仕込んだんだろう……)        「……」しゅ、しゅ        (……なんで、子供を巻き込むんだろう……りんりは何も悪くないのに……)        (……僕は、まだ子供だけど……それでもりんりよりは年上なんだから……守ってあげなきゃ……)        (……けど、今日何度も倒れちゃったなぁ……ううん。頑丈さが僕の課題かなぁ……)        「……」しゅ、しゅ GM   : ぴぴぴ ぴぴぴ         ぴぴぴ ぴぴぴ 夜兎   : 「……?」 GM   : メッセージが来ているようです。 夜兎   : ふと、型をやるのをとめて音の元を見る。 GM   : 電話ですね。        ラクシアシステムなので、手元でひらけます。 夜兎   : じゃあ、受け取ります。誰からだろう GM   : 落合りんり と、出ています。 夜兎   : む。        じゃあ、すぐにでる       「りんり、起きたの?大丈夫?」 GM   : りんり:「……」 夜兎   : 「……」 GM   : 少しの沈黙。 夜兎   : いきなり話しかけすぎたのかなと、黙って相手の行動を伺う GM   : りんり:「……あは」 夜兎   : 「……?」 GM   : りんり:「あははは、あははははははははっ、あはは……あははははははは」 夜兎   : 「……りんり?」 GM   : りんりがこんな風に笑うのは、珍しい。        というか、ほとんど初めてだ。     夜兎   : 並列で、電話ってかけれる? GM   : 出来ますよ。 夜兎   : じゃあ、電話の回線つないで、お菓子やさんに。お電話。        あと、メールで……いや、まだいいか。わかんないし。 GM   : 繋がりません。      不穏にも程がある。     GM   : りんり:「あははははは、あは」 夜兎   : 「……」        何かまずいことが起きてるなと思って…… GM   : りんり:「あは――ねぇ、あのね」 夜兎   : 「うん」     「ねえねえ、ヤト!」 「私、今、凄く晴れやかな気分!」  りんりは、嬉しそうに言う。   「だって、世界を救ったんだよ!」 「悪者を、やっつけたの!」  りんりは、とても嬉しそうだ。     夜兎   : お爺ちゃん刺されたフラグうううう      ――ビデオ通話に切り替わる。  誰かが向こうで倒れてる。  誰か――小柄な――     「これってすごいことじゃない?」 「私、私……」  りんりは、言う。       「私、誰かの代わりなんかじゃ、ないよね」    りんりは、何だか少し。  少し悲しそうだ。   「ねぇ、そうだよね……」    通信が切れる。     ぷつん。     夜兎   : 「……りんり……」ぎり、と奥歯をかみしめてから        即座に救急車に電話        それと、おじさんと朔郎お兄さんにメール        『AZ屋で何か起きた。りんりが……人を刺したのかもしれない』と。 GM   : ばたばたばた。 夜兎   : メールを送ったら、即座に家を抜け出す準備。        一応師匠と木暮おねーさんたちにもメール。同じ文面で GM   : はい。 夜兎   : で、寝てるようにみせかけて、お布団に僕がいるっぽく偽装して        こっそりと玄関先に移動して……特に、見とがめられないならそのまま出て行くよ GM   : 出来ていいです。 夜兎   : きぃ……とそっと扉を閉めて。       (……行ってきます。男は、無言実行しなきゃ……。りんりは……僕が守る)      ホテル赤園占領事件の起きたその夜――いや、その頃にはもう、日付は代わりかけていた。  にわかに小規模な事件が起きる。  ラクシア・システム。ソードワールド。そしてSWDの功労者、『A to Z』の異名を持つ、敏腕プログラマ  畦道肖像の、傷害事件である。  容疑者として後に有力視されるのは――彼の孫      ――落合りんり だった。         6th chapter:混乱  ―――報酬        経験点1800点