プロローグ02『迫り来る異常』

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  GM : おっと、開始前にちょっと聞きたいんだ明良君。        コードネームは【サイロイド】でいいのかな?
  明良 : ああ。『肝臓』だな。
  GM : ああ、そういう意味なんだ……はい、ありがとうございます。        では、ガープス・フォークロア、明良シナリオ・プロローグを開始します。        宜しくお願いします。
  明良 : ああ、よろしく。
  GM : さて、時期は瑞樹シナリオと同じく、昨年12月某日、まだ1年生だった頃です。
  明良 : 12月か……もうすっかり冬だな。
  GM : そうですね、時間的には瑞樹が柚穂の相談に乗っているころ、        なんでもない日常の学校生活の放課後のことです。        木枯らしの吹く寒い日が続きます。        あるいは天候次第では雪になるかも。
  明良 : やれやれ……
  GM : 明良君は、部活に所属しているということはないようですが、放課後はどうしています?        用も無くまっすぐ帰るというのなら、下駄箱に向かう途中で呼び止められます。        ?「おーい、佐奈川!」
  明良 : 「ん? 誰だよ」
  GM : パタパタとスリッパを鳴らしながら走ってくるのは、        副担任の仲春 桂一(なかはる けいいち)先生です。        春から教師としての第一歩を踏み出した新任教師であり、実は霞染高校の卒業生。        二十代前半で若々しく、生徒には敬われるというより歳の離れた友人のような扱いを受けています。        大変フレンドリーで、親しみやすいという点では誰もが認めている若手の先生ですね。
  明良 : あーはいはい。女生徒に人気ありそうだな。        「センセか。なんだよ」
  GM : 桂一「いや、すまんがちょっと手伝ってくれないか?           資材を運ばなければいけないんだが、男の先生が見当たらないんだよ」
  明良 : 「なんだよ、面倒だな。それで大体なんで俺なんだ」
  GM : 桂一「たまたま其処にいたから、だな。量が多くて困ってるんだ、助けると思って、な?」        言いながら指差す先には、山と詰まれたファイルと箱が床に置いてあります。        ここまで運んだものの、バランスを崩して一時置いた、と言う感じですね。
  瑞樹 : ん? 明良って、相当力弱くなかったっけ?
  明良 : 体力9とか言うんじゃねえ! 俺はチビじゃねえ!
  GM : 桂一「ジュースでも奢るから! この通り!」        ぱん、と手を合わせて拝み始めます。        その様は、情けなくも意外と必死。
  明良 : さて断るか…
  GM : 酷い(笑)
  明良 : おいおい。俺だって仕事があるし、偏執狂で-10CP稼いでる義理があるんでね。
  GM : システマチックな意見だ。        まぁ、先生は拝んだまま捨てられそうな子犬のような表情で見つめています。        うるうる。
  瑞樹 : せんせい が てつだってほしそうなめであなたをみている        てつだいますか?
  明良 : 職員室にお帰り。        「そーゆーことならほれ、あのお節介にでも頼めばいいじゃねえか。女だけどな」
  GM : 桂一「嘉月や浅賀のことか? あー、女子に頼むのもなぁ……仕方ないか」        はぁ、とため息を吐き、先生は諦めた様子です。
  明良 : 「じゃな、センセ」
  GM : 桂一「ああ、引き止めて悪かったな、お詫びに此れをやろう」        スーツのポケットから、紙パックのジュースを取り出して明良に無理やり渡してきます。        桂一「買ったばかりだからまだ冷たい。飲んだら感想を聞かせてくれ」        礼のつもりで買ったんだがなぁ、と苦笑しつつ先生は立ち去ります。
  明良 : 「へいへい」
  GM : ちなみに銘柄は『緑黄色野菜コーヒー 微糖』70円。
  見学者: まずそう
  明良 : 「コーヒーに健康飲料的要素を入れてみたってところか…?」
  瑞樹 : メロンキムチ抹茶オレンジコーヒーと同じにおいがする。
  明良 : ストローをぷすりと刺して、すすってみる。
  GM : 野菜のさわやかな風味が苦いです。        甘苦い……いや、すっぱ苦い?
  見学者: だから、まずいって(笑)
  明良 : 「まっじい……」
  GM : さて、そうして話していた間に、最初の帰宅ラッシュの生徒は周囲から居なくなりました。        部活に行く生徒は当の昔に出て行ってしまった為、喧騒が遠くがらんとしています。
  明良 : じゃ、ジュース啜りながら        そうだな。まあ町に出るか。
  GM : 街――暦市は発展と自然との融合を果たした、ある意味で成功した都市とも言える街です。        未だ開発が続いている部分もありますが、大型ショッピングモールやドーム型球場など、        地域に密着した施設がきちんと建設されており、利用されています。        ちなみに、明良の仕事というと、アレですか? ヤクの売買ですか?
  明良 : そゆことだな。
  GM : ……ヤクの売買って、どうやるんだろう、仕入れとか(笑)
  見学者: まあ、さらに上に取り次ぐんじゃないの?(笑)
  GM : まぁ、上から指示されたコインロッカーに行くとノルマ分が入っている、みたいな感じですかね。        GMとしても、薬の売人に指示を出すのは初めての経験だ(笑)
  瑞樹 : 明良はどれくらいの売人なのよ?        末端なの?
  明良 : ん?
  瑞樹 : 売人にもいろいろあるだろ?
  明良 : ああそうだな……末端よりは少し上だろ。任務的に。
  瑞樹 : そうか。
  明良 : これを売人にばらまくのが俺の仕事。
  瑞樹 : 薬を売人に卸すのか。
  GM : 現場で売るというより、売人にノルマを渡す係りみたいな感じですね。        では、定期的に場所を変えている駅前のコインロッカー、そこが受け取り先になります。        ロッカーの鍵は常備しているということで。
  明良 : おーう。
  GM : で、本日のノルマを取り出そうとロッカーを開けたところ。
  明良 : 「さて今週は何がきてるかね、と…」
  GM : 中には、ノルマの麻薬が入っているバッグと、一枚の紙が同封されていました。        まるで墨汁をそのまま固めたような真っ黒な紙。
  明良 : 「こいつは……」        指令書って奴か?
  GM : そうですね。        手にとってみると、何も書かれていなかった表面に文字が浮き出てきます。          『 20時 暦市中央東公園 噴水広場 COM 』   GM : 【COM】――コミュニティ、世界危機管理委員会の略称。        そして、しばらく持っていると、浮き出た文字は再び消えて、        ただの黒い紙に変化してしまいました。
  明良 : へいへいっと。        とりあえず、鞄にブツを突っ込んで……今何時だ?
  GM : 学校が終わって、ですから19時くらいですね。        中央東公園は、文字通り暦市の中央にあるので、        駅からそう遠くは無いですが近くも無い感じです。
  明良 : それじゃ別のことをしてる暇もなさそうだな。んじゃ……ぶらぶら歩いてくか。
  GM : 冬の日暮れは早く、既に周囲はどっぷりと暗くなっています。        さて、その中央東公園ですが。
  明良 : 中央東公園……よく決闘騒ぎがあるな(笑)
  GM : 他に名前が思いつかなかったんです(笑)        不思議なことに、普段ならばこの時間帯はアベックやチーマーなどがたむろしているのですが、        どういうわけか、シーン、とした空気が漂っています。
  明良 : 「?」        この現象に覚えは?
  GM : この現象自体に覚えはありませんが、いわゆる"人払い"だと感覚で解ります。        ただ、普通ならもうちょっと違和感が出ないようにするんですが、        ちょっとやりすぎ感が漂っている、という感じですね。        一般人でも勘のいい人間なら違和感を覚えるくらい、        裏側の人間なら何かしてると即座にバレそうな雰囲気です。
  明良 : 人払いって普通にあるのか?あるのか?(笑)
  GM : 現代でも、道の真ん中に『工事中』の看板を置くだけで人払いは可能です。
  見学者: 便利だよねー(笑)
  GM : それが能力によるものかどうかは解りませんが、人為的に人が居ない状態にされているようです。
  明良 : やれやれ、用心深いな。        手をポケットに入れて公園の中に。
  GM : 無人の公園は痛いくらい静かで……        ……しかし、目的の場所からは噴水から出る水の音が響いています。        街頭に照らされる噴水広場――見たところ、人は居ません。
  明良 : 噴水前のベンチに腰かける。
  GM : 水の音だけが響く、静かな夜です。        遠くに聞こえる車の音、それすらも別世界のように、この場は世俗から切り取られています。        そうしていると、色々なことが頭に浮かびます。
  明良 : そうだな……
  GM : 幼馴染のこと、システムのこと、そして自分自身について。
  明良 : とりあえず瑞希のことかね。仕事はあいつがしたのかね。
  瑞樹 : スタバ行ったよ(笑)
  GM : 先生の事は誰も助けてくれませんでした(笑)
  瑞樹 : 先生に会わなかったからね!
  GM : さておき。        ――浅賀瑞樹。        貴方の、大切な存在。        大事な幼馴染。
  明良 : 繰り返すなよ?(笑)
  GM : 大事なことなので表現を変えて2回言いました。
  明良 : まー、薬のこと知ったら怒り狂うだろうな…斬りかかってくるかも知れんが。
  GM : だからこそ、裏側のことについて黙っているのでしょうが。
  瑞樹 : 実は誠実入れてないけどね!(笑)
  明良 : かといって、やめたいっていってやめれる仕事でもないからな……        ……やっぱまっとうになるにゃ、システムがあったらあれだよな…
  GM : システムの打倒。        あるいは、幼馴染とあるためだけにこそ、それは必要なことなのかもしれません。        と、思っているところで。           「……早かったな……」   GM : 浪々とした声が、響き渡ります。
  明良 : 「ん……」        とりあえず確認。知ってる顔か?
  GM : ええ、同僚……というと変ですが、顔見知りの委員会のエージェント。        そして、凄く特徴的で一度みたら忘れられない顔です。      滾々と水の湧き出る噴水の中央、オブジェの一部のように直立した一つの影。      月の光を反射させ、それ自体が光を放つように輝く長い銀糸。      闇に溶け込むような黒いロングコートに身を包んだ長躯。      逆光にも関わらずはっきりと解る、射抜くような双眸は紅と蒼。      俯くように明良を見下す容貌は、まるで英雄を模った彫像のように冷ややか。      虚空を見つめるように視線を逸らすと、その影は再び口を開きました。           「―――俺の名は……漆黒の堕天使……」   明良 : 「うおい」
  瑞樹 : お前かよ!(笑)
  明良 : いや、性別が違うぞ?(笑)                   ザアアアアアアアァ――ッ!   GM : 言葉が終わったタイミングで、影の周囲の噴水が吹き上がります。        「フッ……久しいな、サイロイド……」        虚空を見上げながら、漆黒の堕天使が微苦笑のような表情を浮かべます。
  明良 : 「あ、いや、うん……そうだな」
  GM : 「ちなみに、コードネームは、そう……         【ルシファー・オブ・ダークネス】……俺の、罪の名だ……」        どこか遠くを見つめながら言う、その表情は非常に満足げです。
  明良 : 本当に知った顔なのか?(笑)
  GM : ええ、こういう人なんです(笑)        ちなみに、待ち合わせを20時を指定したのは噴水が噴出すタイミングだったからです。
  明良 : いたたまれない気持になるな…(笑)
  GM : こんな彼ですが、これでも凄腕の強化人間です。        テンションの高さがそのまま戦闘能力に繋がるので、        多少の問題発言は放置されている、といわれています。        「委員会からの新しい指令を伝えに来た……心して聞け……」
  明良 : 「へいへい」
  GM : ふ、と。        超然とした雰囲気が静まり、機械のように事務的な口調に成り代わります。           『全構成員は現状の業務を一時凍結。            新たに発生する"リンクス"の確保、または排除に全力を傾けよ』   GM : 「……以上だ」        言い終えると、また虚空を陶然と見上げるポーズに戻ります。
  明良 : 「ん? そりゃ……待機任務って奴じゃねえか?」        暇な時にやっとけ的な。
  GM : 「フッ……預言さ……」
  明良 : 「はい?」
  GM : 「詳しくは知らされていないが、所謂"予知"のような能力を持ったリンクスが発見された……らしい。         今回の件は、その預言によって新たなリンクスが覚醒する、と確信してのことのようだ……」
  明良 : 「へえ、そりゃすごいが……そいつは世界の終りまで見抜いてるってのか?」
  GM : 「委員会からは何も言われていない……俺とて、全能ではないのだ……」        物憂げな表情で、ため息を吐く。
  明良 : しかし予知能力があればシステムなんぞにつかなくても生きられそうなもんだが…        逆か? システムからは逃げられないと予知したから協力してるのか、それとも……
  GM : 「ただ、そのリンクスは"世界の危機"になりえる存在、らしい……         先入観を与えることで覚醒前に接触、影響を与えないよう……情報は制限されている……」
  明良 : 「そりゃ、どうやって見つけるんだ?」
  GM : 「来る聖者の聖誕祭、その日までに行動を起こす……ということらしい……         それらしき兆候を見掛けたら……生死を問わず……デッド・オア・アライブ……         また新たな罪を重ねることになる……」
  明良 : 「えーと、翻訳するとクリスマスに出るらしいから、生死問わず確保しろってことか」
  GM : 「正確には、クリスマスまでに何か事を起こすらしい……         逆に言えば、クリスマスがタイムリミット……フッ、皮肉だな……」
  明良 : 「ま、恋人持ちには辛い任務だな」
  GM : 「話は以上だ……俺もしばらくはこの罪の町に滞在するが……         それに油断せずに変革の兆候を見逃すな……」        ひたと、斜め上を見ながらそう釘を刺します。
  明良 : まあ……        多分、問題のリンクスは他の人間が見つけるんだろうが…        これは……チャンスか?
  GM : 未だ覚醒していない、"世界の危機"になりえるだけの力を持った能力者。        その存在は、ひょっとしたらシステムを崩す切欠に成りえるかもしれない。
  明良 : そういうことだな。だが注目されすぎてるってのは問題だな…
  GM : 「ではな……俺はもう行かねばならん……夜が、呼んでいる……」        パチン、と指を鳴らすと、周囲の街灯が一斉に明かりを消す。        暗転――それは数秒の事で、再び世界に光が戻った時、        漆黒の堕天使の姿は何処にもありませんでした。
  明良 : 「……やれやれ、疲れる奴だな」
  GM : それでも、アレもまたシステム――委員会の戦力の一つ。        単独で覆すことの出来ない、歴然とした力の差がそこにはあります。
  明良 : 「だよなあ、やれやれ。大変だ」        システムを倒す、ってのはよ。
  GM : 見定めなければなりません――なにより、自分の目的の為に。
  GM : ……という辺りで、締め。
  明良 : おう。
  GM : お疲れさまでした。        時間的には瑞樹シナリオと大して代わらないのに、内容の濃さは大分違いましたね(笑)
  明良 : まあダウナー系だからな。
  千里 : おまけですが、        予言と預言は違うわね。
  GM : 予言は予測、預言は神託ですね。
  千里 : うん。        さっきのはどっち?
  GM : 堕天使の聞いた話の又聞きですが、預言です。
  千里 : 預言で予知。
  GM : 予知のような、と言ったのは高位存在から未来を教えてもらった、という感じですかね。
  千里 : 成る程ね。
  GM : まぁ、ここで話していても実際どうなのかは本編で解明……できるかどうかはシナリオ次第。


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